EYの事例

ヘルスケア企業はテクノロジーとデータで第三者リスクにどう取り組むのか

患者情報を保護するため、ヘルスケア企業は、AIと先進的なアプローチを活用し、堅牢なシステムを構築しました。本事例について詳しくご紹介します。


EY Japanの視点

AIとデータで実現する第三者リスク管理の本質

本事例は、分散したデータやサイロ化した業務プロセスを、ServiceNowを活用した業務オーケストレーションとDatabricksによるデータ統合によって一元化し、エンド・ツー・エンドの第三者リスク管理を実現した取り組みです。さらに、AIを活用してリスクの可視化、評価、優先順位付け、意思決定支援を高度化することで、リアルタイムかつ効率的なリスク対応を可能にしています。本事例が示す本質は、AIやテクノロジーの導入そのものではなく、データ、業務プロセス、組織、ガバナンス、人の判断を有機的に統合した運営モデルの構築にあります。EYは、このような統合型第三者リスク管理の実現を通じて、組織全体で継続的かつ先見的にリスクを把握・管理し、患者保護や事業継続を支えるレジリエンスの向上と、データに基づく経営意思決定の高度化を支援しています。
EY Japanの窓口
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The better the question

AIは、第三者リスク管理をいかに効率化しながら、リスクに関するインサイトを深められるのか?

この大手ヘルスケア企業は、包括的かつデータ駆動型のリスク管理を実現するため、分散したデータ、連携されていないシステム、そしてサイロ化された業務プロセスの統合に取り組みました。

2024年初頭、米国で年間150億件の取引を処理する大手医療決済サービス事業者が、ランサムウェア攻撃によって深刻な業務障害に見舞われました。この侵害は米国史上最大規模の事案となり、1億9,000万人を超える患者の個人情報に影響を及ぼしたほか、多くの医療機関の事業継続の基盤を脅かしました1

第三者リスク(英語版のみ)、とりわけ企業の業務を支援したり、事業運営に直接関与したりする第三者に起因するリスクは、組織の事業運営や評判、さらには顧客に重大な影響をもたらしかねません。そして、サイバーセキュリティはそうしたリスク管理・対策の一側面に過ぎません。多くの業界において、第三者リスクは、品質、評判、レジリエンス、プライバシー、業務運営など、さまざまな領域に関わる課題です。特にヘルスケア業界では、膨大な量の機微な個人情報を保護すると同時に、規制要件へ対応することが、ますます難しくなっています。

多くの大規模かつ成長を続ける企業と同様に、このFortune 50のグローバルヘルスケア企業も、第三者リスク管理における課題に直面していました。急速に変化する事業環境の中、分散したデータやシステム、そしてサイロ化された業務プロセスが、第三者リスク態勢の強化を阻んでいました。

同社の経営層は、テクノロジー基盤や人工知能(AI)を活用した、エンド・ツー・エンドかつデータ駆動型の先進的なソリューションを求めていました。この狙いは、同社の第三者リスク態勢の整備とレジリエンスの向上にありました。全体の目標は、第三者に関するリスクの可視性を高め、それらをリスクレベルに応じて分類し、必要に応じて先手を打って対応できる体制を整えることでした。これをシンプルかつ効果的、そして効率的に実現することを目指していたのです。

 

患者を守るという強い使命感のもと、同社はこの目標の実現に向けてEYのチームを起用し、企業全体で包括的かつデータ駆動型のリスク管理に取り組みました。

ある女性看護師が医師に報告書を見せている様子
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The better the answer

第三者リスク管理をよりシンプルかつスマートに

実践的でテクノロジーを活用したアプローチにより、経営層はリスクをより的確に把握し、管理できるようになります。

この大手ヘルスケア企業では、第三者リスクは主に2つの経路から顕在化する可能性がありました。1つは同社と関係のある医療提供者のネットワーク、もう1つはコールセンター、アウトソーサー、テクノロジーパートナーなどの従来型のサプライヤーです。経営層は、第三者リスク管理にエンド・ツー・エンドで対応できる、同社固有の課題に応じたソリューションを求めていました。

EY Americas Integrated Risk Management LeaderのDaniel Priorは、次のように述べています。「リスク管理上の課題に対応するため、テクノロジーとデータを活用した戦略を採用し、全社的にシステムとプロセスの連携を進めるクライアントが増えています。このアプローチは第三者リスク管理において特に広く採用されていますが、他の領域にも広がりつつあります」

オーケストレーションによるエンド・ツー・エンドの連携プロセスの構築

同社にとって、第三者リスク管理は新しい取り組みではありませんでした。しかし、サイロを解消し、第三者リスクを包括的に可視化するには、従来のアプローチを進化させる必要がありました。事業部門の業務プロセスを見直し、より迅速かつ的確な意思決定につなげることが求められていたのです。その解決策の一環として、同社はServiceNowを活用し、統合的なデジタル窓口とワークフローを構築しました。これにより、マトリックス型の組織構造のもと、部門や関係者を横断して、調達プロセスと第三者リスク管理プロセスをより適切に連携させることを目指しました。

ServiceNowは、業務全体を支えるデジタル基盤として機能し、エンド・ツー・エンドのプロセスの効率化、第三者リスク管理の強化、エンドユーザー体験の向上、そしてサイロ化されていた業務の連携によるさらなる効率化をもたらします。例えば、ユーザーは物品やサービスの購入に関するリクエストを1つの窓口から開始し、その後のプロセスに必要な情報をまとめて提供します。これにより、従来は目的が明確でないまま複数のシステムへのログインや入力が必要だった手続きを、よりスムーズに進められるようになりました。また、ユーザーはプラットフォーム上で、対象となる第三者を検索・確認し、その第三者や提供サービスに関連する潜在的なリスクを事前に把握できるようになりました。さらに、プロセス全体を通じて発生するさまざまな対応を、単一のダッシュボードから開始・実行することも可能です。

これは、従来は複雑になりがちだったプロセスの見直しや自動化に有効でした。これにより、適切なタイミングで適切なリスクに注力できるようになり、事業部門の業務体験が向上するとともに、より柔軟でデータ駆動型のリスク管理アプローチを取ることが可能になりました。また従業員は、複数のシステムから届く大量のメールに対応するのではなく、合理化された新しいプロセスに沿って業務を進めることで、業務がより円滑に進むことをすぐに実感しました。

内部・外部情報を活用したデータ駆動型アプローチの適用

企業は、機微なデータの管理状況を評価するため、第三者による自己申告型の調査に依存することが少なくありません。一方で、組織には、品質、パフォーマンス、レジリエンス、プライバシー、規制遵守、サイバーセキュリティなど、リスク評価や優先順位付けの高度化につながる幅広い価値あるデータを活用する余地もあります。課題は、こうしたデータが複数の分断されたシステムに散在していることです。こうした中、リスクをより効果的かつリアルタイムに評価するため、内部・外部のデータソースの双方を活用する組織が増えています。

同社は、Databricks上に「データプロダクト」を構築し、第三者リスク管理に関連するデータを一元化し、明確で信頼できる情報源を確立しました。このデータプロダクトは、同社の新たな第三者リスク管理アプローチを支えるもう1つの重要な基盤となり、データサイエンスと分析にも活用されています。リスクモデルは、多くのリアルタイムデータを含む内部・外部のデータを活用し、リスクの特定、評価、優先順位付けを可能にします。こうした基盤は、AIを活用したインサイトの創出を支え、同社とそのパートナーがデータを通じてリスクを管理する方法を変革しています。

リスク判断とエスカレーションプロセスの確立

第三者リスク管理では、どこにリスクがあるかを把握するだけでなく、それらのリスクについて効率的かつ効果的に意思決定できることが求められます。同社は、必要に応じてリスクを組織内の適切な階層へエスカレーションすることも含め、リスク判断を行うための明確なプロセスと基準の定義に取り組みました。

新たなツールにより、同社はデータに基づく基準に沿って、レビューや意思決定の対象となるリスクを適切な意思決定者にエスカレーションできるようになりました。さらに、意思決定者はAIを活用してリスクを分析し、検討すべき次のアクション候補を特定することもできます。その際も、人による判断を介在させる仕組みである「Human in the Loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」を維持しています。

可視化とAIは、複雑なデータを統合・整理し、リスク分析を加速させることで、より迅速で十分な情報に基づく判断を支援します。例えば、AIは提示された基準に基づいて第三者を分析し、検討すべき次のアクション候補を特定できます。これにより、大幅な時間削減につながり、より戦略的な活動に注力できるようになります。

AIを活用し、効率的なセルフサービス型のリスク分析を実現

リスクダッシュボードは有用ですが、生成AIを活用することで、より対話的なセルフサービス機能を提供できます。同社は、AIを活用したチャットボットを開発しました。このチャットボットを通じて、ユーザーは分析条件を入力し、必要な情報を生成して、リスク判断に活用できます。また、その基となる関連データについても、他の対話型生成AIサービスのインターフェースと同様に、自然言語で対話しながら確認・探索できます。

EY US Health Data and Analytics LeaderのGail Babesは、「チャットボットは質問に対する回答とともに、内容を分かりやすく補足する図表を提示できます」と語ります。「また、X軸とY軸、色、散布図などの条件を指定して、図表の作成を依頼することもできます。非常に使いやすく、カスタマイズしやすい仕組みです」

 

この新たなアプローチのもと、同社はAI活用の取り組みをさらに推進しています。AIは、静的なレポートやダッシュボードにとどまらず、ユーザー自身が第三者リスク管理に関するインサイトを取得できるよう支援するものとして位置付けられています。

病院で、少女とハイタッチをする医師
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The better the world works

リスクが変化する中でも、経営層がより確信を持って意思決定できるように

新たなツールは、同社の継続的な進化を支えています。AIを活用して第三者のモニタリングと管理を強化することで、最終的には患者をより適切に守ることにつながっています。

急速に変化するヘルスケア業界では、患者を守るという課題がこれまで以上に重要になっています。同社は、リスク管理の基本原則と最新テクノロジーを取り入れ、企業全体の第三者リスクを管理するため、完全にデジタル化されたAI活用型ソリューションの整備を進めていきます。第三者ベンダーとの連携を進め、効率化とコスト削減を図る取り組みは、それ自体に価値があります。さらに、同社の経営層は、第三者エコシステムをより効果的かつ柔軟に把握・精査し、より迅速かつ的確な意思決定を行えるようになります。

同社は今後も、契約業務をはじめとするさまざまな分野で、AIのさらなる活用可能性を探っていきます。例えばAIを活用することで、戦略上重要な第三者や高リスクの第三者に対し、継続的なモニタリングと管理をより手厚く行う対象範囲を大幅に広げられるのではないかと、同社は見込んでいます。

同社のServiceNowプラットフォームも、今後さらに進化していく見込みです。EYのチームは現在、異なるユーザーグループとの接点を改善するため、ペルソナを活用しながら検討を進めています。これには、サイバー領域やコンプライアンス領域のリスクを管理する担当者、物品やサービスの購入を希望する事業部門の担当者、各機能を統括する担当者などが含まれます。こうしたユーザーはそれぞれ異なるニーズを持ち、プラットフォームへの向き合い方も異なります。このような計画の一環として、第三者が利用・連携できるポータルの整備も進められています。

 

EY US Health and Life Sciences LeaderのJim Welchは、「ヘルスケア業界は、サイバーセキュリティをはじめとするさまざまな領域で、計り知れない第三者リスクに直面しています」と語ります。「しかし、同社とEYは、より良い未来の実現に向けて取り組んでいます。データとAIを大規模に活用することで、従業員の業務を支援し、患者を守ることにつなげています」



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