EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
このページは2024年7月29日に公開したレポートを記事として掲載したものです。
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オーバーツーリズムとは、観光客が観光地に過度に集中することで、地域社会や環境に悪影響を及ぼすことを言い、地域住民が日常生活を送る上で支障をきたしている状態を指します。観光客数の増加は、地域経済の活性化というプラスの面がある一方で、観光客の急増による交通渋滞や公共施設の混雑、地域住民の生活環境の悪化など、マイナスの影響をも与えるため、「量」と「質」のバランスを取った持続可能な観光の実現に向けて、オーバーツーリズムへの対策が求められています。
2024年1~3月期の訪日外国人消費額は年換算で名目7.2兆円となり、主要品目の輸出額と比べると自動車に次ぐ第2位の規模に到達し文字通りツーリズムが日本の産業にとって重要な位置を占める産業に成長しつつあります1。政府が掲げる2030年までに訪日客の消費額15兆円の目標が達成されれば、文字通り、日本の輸出をけん引する自動車と肩を並べる巨大な輸出産業となります。
訪日外国人消費額の成長を裏付ける要素は、消費単価の増加だけでなく、訪日外国人数もあり、日本政府観光局の発表によると、2024年3月に初めて単月として300万人を超えてから4カ月連続で300万人を上回る好調を維持しており、今後、訪日外国人数、消費額共に成長が期待されています。
一方で、ツーリズムの盛り上がりは負の側面も新たに浮き彫りにしています。観光客が観光地に殺到し、住民をはじめとした観光地の日常生活に負の影響を与える、いわゆるオーバーツーリズムです。オーバーツーリズムは今に始まった課題ではなく、世界的な観光地では、常に議論されてきた問題であり、ツーリズムによる成長を促進する上で、しっかりと対策を図っていかなければならない重要な課題となっています。つい先日、バルセロナでは、観光客の増加に反対する住民がデモを起こし、観光客に対し、水をかける等の行動が報じられたことも記憶に新しく、いかに観光地にとって重要な課題かを示しています2。
本レポートでは、世界のオーバーツーリズム対策の現状を取り上げるとともに、日本国内の観光地がこのオーバーツーリズムをどう捉えているのか、住民向けのアンケート調査を基にその実態を明らかにしていきたいと思います。
その上で、日本がツーリズムを経済成長の重要基盤として今後も成長を推し進めていくために必要な方向性を考察します。
本レポートは、各公開情報や報道資料、またEYが2024年6月に以下10都市に在住の男女、各都市200名を対象に実施したオンラインサーベイを基に構成しています。
オンラインサーベイ概要
実施期間:2024年6月下旬
方法:調査会社によるWebアンケート
対象:以下10都市在住の男女 各都市200名(ただし、岐阜県郡上市、島根県浜田市は200名を下回る)
北海道旭川市、栃木県那須塩原市、東京都台東区、静岡県静岡市、岐阜県郡上市、京都府京都市、奈良県奈良市、島根県浜田市、島根県出雲市、広島県廿日市市
オーバーツーリズムを取り巻く議論は、観光地のキャパシティを上回る観光客の訪問により盛り上がりを見せています。
世界的に有名な観光地であるイタリアのベネチアは、2024年4月25日からホテルに滞在しないベネチアを訪問する旅行者に対し、5ユーロの入場料の支払いを求める制度を開始しました。現状は、4月~7月までの選択された29日間のみに適用される制度ですが、来年にはさらに10ユーロ、最大100日に適用する等も検討していると言われています。ここで一つの疑問が生じます。本当に「入場料5ユーロの支払い」を求められる程度で、外国人観光客は、ベネチア訪問を諦めるか?という疑問です。当局は、今回の制度の目的は、イタリア近隣からの日帰り旅行者をターゲットにし、混雑を避けるよう訪問地の分散を促していると語っています3。実際に、この期間の日帰り旅行者は485,000人を超えたが、2023年の日帰り客のピークを越えることはなかったようです4。
日本と同じアジア圏内のタイでは、数年にわたる議論の末、空路で到着する海外からの観光客に300バーツ(約8.20米ドル)の観光料金を課すという物議を醸していた提案を撤回することを決定しています。当初、質の高い市場への注力を目指し、入国に際しての料金徴収はツーリズム産業に影響はないとしていましたが、影響を懸念する民間事業者の反発もあり、結果的に本構想は白紙撤回となっています5。
日本でも同様に、宿泊税の徴収が観光地で議論になっていますが、宿泊税と異なり、訪日外国人向けに異なる料金を設定する、いわゆる「二重価格」設定も議論となっています。最近、大きな注目を集めたのが兵庫県にある世界遺産、姫路城の入場料金です。現在1,000円(約6米ドル)の一般入場料ですが、市長は外国人の入場料を30米ドル程度に値上げし、地元民は5米ドルにすることを同市で開かれた国際会議の場で提案しています。世界的に見ても、インドのタージ・マハルやカンボジアのアンコールワットなどは、いずれも外国人が地元の人よりも高い料金を払う場所となっており、決して珍しいケースではありません6。
観光客の数の制限を直接的な目的とした対策として、オランダのアムステルダムは、2024年6月26日に今後数年間で主要港湾ターミナルに寄港できる船舶の数を削減する計画を発表し、クルーズ船によるマスツーリズムの回避を目指そうとしています7。また、4月には原則、新規のホテル建設許可を発行しないと発表し、観光客による年間合計宿泊日数を2,000万泊以下に抑えるということを目標としています(2023年は2,066万5,000泊)8。
同じ宿泊施設の制限という観点では、スペインのバルセロナが2024年6月21日に高騰する家賃に対処し、地元住民の住宅供給を増やすため、観光客向けのShort Term Rentals(いわゆる民泊)を全面的に禁止する計画を発表しました。同市はShort Term Rentalsの新規ライセンスの発行を停止し、2028年11月までに、現在登録されている10,101戸のアパートについては、ライセンスが廃止されることになります9。
米国の国立公園では、近年記録的な訪問者数を誇り、過密状態であることが問題となっていることから、入場に際し事前予約制度を導入し、入場者数の制限を設ける取り組みをしています。1年中このような対応をしているわけではなく、訪問者のピークシーズンに適用していることが多くなっています10。ヨセミテ国立公園も1度地元事業者等の反発により廃止した事前予約制度11を2024年には復活させています。
これまで見てきたように、オーバーツーリズムに向けた対策は「数をコントロール」するために、大きく3つの方向性が試行されていると言えます。
1つ目は、ベネチアでの入場料の徴収や日本での二重価格の設定のように金銭的な上乗せを設定することで、観光客の行動を抑止しようとする動きが挙げられます。2つ目は、アムステルダムやバルセロナ等での宿泊施設数の上限設定や廃止、港への寄港を制限する等、物理的に滞在することを制限するための措置です。3つ目が、スペインのバルセロナにおけるサグラダ・ファミリアや米国の国立公園における事前予約制度導入による入場者制限を実施することで、過密状態を避ける措置になります。
これら3つの方向性については、観光地において議論が続いています。タイのように1度決定した方針が撤回されるケースも珍しくありません。ヨセミテ国立公園でも地元事業者が繁忙期に機会損失が出ることから、事前予約システムへの反対を訴え、1度廃止になっているケースもあります。ホテルの新規建設制限は、結果的に需給バランスが崩れることによる宿泊価格の高騰を招き、Short Term Rentals(民泊)の廃止や制限も同様に、需給バランスが崩れることによる宿泊価格の高騰につながり、結果的に意図しない数の観光客の減少を招く可能性も否定できません。
重要なことは、きちんと地域事業者と地域、住民が対話し、しっかりと合意形成を図るコミュニケーションの場を設けることであり、それがなければ、いくら施策を実行しても、観光客はもちろん、地域の事業者や住民も幸せとはならず、コンフリクトを抱えた状態が続いてしまいます。
日本国内において、オーバーツーリズムはどう捉えられ、どうしたら、ツーリズムによる経済成長と住民の生活のコンフリクトを緩和できるのでしょうか。
本レポートでは、オーバーツーリズムが起きていそうな地域を特定するために、コロナ禍前の2019年と比べて、観光客の増加という観点で、①宿泊者数の増加率、より観光客が住民の生活に影響を及ぼす可能性を考慮して、②人口1人当たりに占める宿泊者数の増加率、働き手の逼迫(ひっぱく)状況という観点で、③宿泊・飲食サービス業従事者1人当たりに占める宿泊者数の増加率の3つの観点で、国内上位20の地域を抽出しました。
この上位20地域のうち、3つのカテゴリーすべてに該当する地域を優先としつつ、調査会社が各地域で200人以上のサンプルを回収できる都市、東京の一部都市を除く等の条件により、以下の10地域を抽出(黄色のハイライト地域)し、ランダムにアンケート調査を実施しました。
以降、アンケート調査結果を中心に、日本におけるオーバーツーリズムの状況を簡単に見ていきます。
一定の条件で抽出した観光客の増加を認識すると考えられる10地域に対するアンケート結果を見てみると、自分の居住する地域に多くの観光客が来ることについて、ポジティブに捉えている人が約4割、特に気にならないという意見を含めると約7割が特にネガティブに捉えているわけではないという状況になっています。また、観光・ツーリズムが自分の住んでいる地域の住民が豊かな生活を送るために重要な役割を果たしているかを聞いてみると、6割弱がポジティブな意見を持っており、ネガティブな意見は15%程度と低い状況が確認できました。
そして、観光客が多く地域に来ることで、オーバーツーリズムと感じるかという問いに関しては、オーバーツーリズムと「とても強く感じる」と「一部の地域で強く感じる」が約2割、「やや感じる」と「一部の地域でやや感じる」が約3割という結果になりました。また、オーバーツーリズムを感じている5割の住民の地域別の割合は、京都市が最も高く、次いで浅草が代表的な台東区、奈良市、宮島のある広島県廿日市市の順となっており、一定程度観光客が急激に増加している地域の中でもこれら地域は、より多くの住民がオーバーツーリズムを感じていることがわかります。
オーバーツーリズムを感じる理由としては、外国人観光客の増加が1番の理由で全体の6割弱、日本人・外国人の双方の増加によると回答した割合は24%となっており、外国人の増加がオーバーツーリズムを感じる大きなきっかけとなっていることが確認できます。
先ほど、観光・ツーリズムが豊かな生活に影響を与えるというポジティブな回答が6割近くありましたが、そもそも観光客が多いことで身の回りでどのようなプラスの影響があると感じているのでしょうか。「明確な理由はないが、なんとなくうれしい」、「その他」を除き、最も回答が多かったのは「地域全体の景気が良くなった、お金が流れるようになった」という経済的な実感で、次いで観光客の増加に伴い、「新しいお店が増え、選択肢が広がった」となっています。3番目に「地域の自然、歴史、文化、食など、地域の魅力に関心を持つようになった、または関心が強まった」と、地域の再発見につながるような意識の変化が生まれている状況も確認でき、自分の地域への誇りを持つきっかけとなっている様子もうかがえます。
オーバーツーリズムと感じている人に限定して、プラスの影響を見てみると、特に傾向に大きな違いは見られないものの、「地域全体の景気が良くなった、お金が流れるようになった」という経済的な恩恵を感じている割合が、若干ではあるものの全体よりも高いことは面白い結果となりました。
では、マイナスの影響はどうでしょうか?やはりと言うべきか1番の影響は「マナー違反」となっています。次いで、「バスや電車などの公共交通や、道路が混雑して使いづらくなった」という交通の問題、「観光地・施設やその周辺が混雑しており、住民が使いづらい」等アクセス環境の悪化が大きな要因として挙げられています。また、マイナスの影響の第1位が圧倒的に交通の問題である点は、注目に値します。
交通や混雑による日常生活への支障のほか、地域の物価の上昇や地域外の事業者の進出による地元事業者へのマイナスの影響や観光客向けのビジネスを提供していない事業者との観光・ツーリズムによる恩恵の二極化もマイナスの影響として捉えられています。
特にオーバーツーリズムと感じている住民の間では、「マナー違反」よりも「バスや電車などの公共交通や、道路が混雑して使いづらくなった」という交通の問題を1番に挙げており、また3番目として「市民向けのサービスが後回しになるなど、公共サービスが劣化した」 ことが問題であると感じていることは非常に示唆に富む結果となりました。
観光客が多い現状がもたらす上記のような不満や課題を解消するために、住民はどのような施策を求めているのでしょうか。1番は、観光客の「マナー改善」を求めています。SNS等への投稿を目的とした写真撮影時の私有地への侵入や撮影場所の占拠、道路への侵入等が大きな理由となっています。次いで「交通インフラへの改善」となっており、住民の生活への影響が大きいことを物語っていると言えます。また、「観光税等の徴収」や「経済的な恩恵の実感」も上位に挙がっていることが特徴的と言えます。さらに、「物価上昇等に伴う補填(ほてん)等の住民への金銭的補償」を挙げている点も、観光・ツーリズムによる経済活性化の負の側面が見えてきます。
観光客のマナー違反により、富士山の景色が見えないように目隠しする事態にまで発展した事例が話題になりました12。地域としては、とても看過できない状況にまで観光客のマナー違反が及んだ末の決断だったと推察されます。一方で、マナー啓発や観光客の行動変容を促す上で、「ナッジ13」を活用することが有効と考えられます。ナッジを活用することで、観光客に選択の自由を与えながら、反発を生まずに行動変容を促すことができるためです。
迷惑となってしまう撮影スポットで、「撮影しないでください」と案内するのではなく、新たに撮影スポットを設置する(新スポットからの撮影を初期設定にする)ナッジが考えられます。これによって、新スポットからの撮影がベストであり、これまで撮影していた旧スポットからの撮影価値を低下させることで(新スポットの撮影台が邪魔になるという副次効果もあり)、行動変容を促すことが可能となります。
注意を引きやすいギャップを演出することを狙った、投票箱型の吸い殻入れを設置するナッジが考えられます。これによって、楽しさを醸成することで、ポイ捨ての抑制を促すことができます。なお、英国の環境保全団体は、投票形式の吸い殻を入れ設置することで、最大73%の吸い殻ごみの削減に成功しています14。
「マナー違反者を全世界に配信中」というラベルを貼ったカメラを設置することで、景観を壊すことなくマナー違反者の規範意識を顕在化することを狙ったナッジが考えられます。これによって、混雑状況をリアルタイムに把握できる情報としても活用可能となると考えられます。
このように、マナー違反者の「考え方」を変えずに、「ついつい」「できそうだ」と思わせることで、行動変容を促すことができる「ナッジ」は、有効なマナー違反対策になると考えられます。
アンケート調査により、オーバーツーリズムと感じていても、豊かな生活を送るために観光・ツーリズムが重要な役割を担っているとポジティブに感じている住民が約6割で、ネガティブに捉えている住民は15%程度であることが確認されました。また、観光・ツーリズムの成長により、「景気が良くなったという経済的実感」のほか、「自分の地域の魅力を新たに再発見」するような影響を感じていることも大きなポイントと言えます。つまり、現時点では、観光・ツーリズムは住民にとっては豊かな生活を送る上で、まだポジティブに捉えていると言えます。
一方で、さまざまな課題がありますが、特にオーバーツーリズムと感じている人が「マナー違反」よりも、自らの日常生活に影響する「公共交通へのアクセスの悪化」を1番の課題に挙げていること、そして観光客への対応に注力するあまり、「市民向けのサービスが後回しになるなど、公共サービスが劣化した」という問題を強く感じていることが確認されました。つまり、オーバーツーリズムとして、観光・ツーリズムをネガティブに捉え始めるきっかけは、こうした「日常生活」へのサービス低下がそのきっかけになると考えられます。
ツーリズムが日本経済の成長エンジンとなっていくことは、一方で、地域住民との共生という課題も浮き彫りになってきます。オーバーツーリズムによる住民の不満の解消に向けては、観光客の「マナー改善」や「交通インフラの改善」のほか、「観光税等の徴収」、経済的恩恵の実感」、物価上昇等に伴う「住民への金銭的補償」の声が多くなっていました。
観光税等の徴収は、本来はオーバーツーリズムによる不満解消につながるものではないと思います。確かに税の徴収により、観光地への訪問をちゅうちょ、断念することはあるかもしれませんが、本来この議論は、観光地が抱える課題解決やマーケティング等の財源確保の観点から議論されるべきだと思います。この税の徴収があるからこそ、マナー改善や交通インフラの改善といった住民向けのサービスの維持・向上につなげることが可能となるわけです。また、物価上昇による住環境の悪化も各地域を訪問するとよく耳にします。ツーリズムが活発になることで投資を呼び込むことは歓迎される話ですが、結果、物価上昇、地元住民の生活を脅かすようでは、ツーリズムに対する嫌悪感は増してくるでしょう。それが、「経済的恩恵の実感」を得たいという声につながっているのだと思います。
ここまで見てみると、ツーリズムによる経済成長は、観光地のマネジメントがきちんとなされない限り、もろ刃の剣であるということになります。単に一部の事業者がもうかるような構造では、住民が経済的恩恵を実感することはないでしょう。地域に経済的恩恵が還元されるような仕組みづくりが、必要不可欠ということになります。そして、この観光地のマネジメントこそ、DMO(Destination Management Organization:観光地域づくり法人)に今求められている役割であり、世界の観光地でもDMOが主導的な役割を果たしています。
ツーリズムを通じた地域経済の活性化、その経済的恩恵をきちんと地域住民にも届け、かつ、きちんと透明性を持って説明責任を果たしていくことこそが、重要と言えます。
過去のレポートで、あまりに早い地球環境・社会システムの破壊・崩壊のスピードを考えると、サステナブル=維持するだけでは不十分で、マイナスをゼロに戻すための行動をするのではなく、さらにプラスに転換するアクションを起こしていく動き、「リ・ジェネレーション(改新)」の必要性を訴えました15。これまでサステナブルと言っても、なかなか遠い意識のベクトルで、「自分ごと」として捉えることができなかったことから、どこか行動に移せない傾向が強かったと思います。しかしながら、自分たちが住む地域、コミュニティがツーリズムにより成長する一方で、生活基盤が揺らぐような負の側面に直面した時、もしくは直面しようとする時、DMOをはじめ地域のあらゆるステークホルダーは、その問題を「自分ごと」として捉え、コミュニティの健全な成長、発展に向け議論していくことが求められます。その時に、DMO等が中心となって、地域のステークホルダーをまとめ、観光地をマネジメントすることができれば、オーバーツーリズムによる諸課題を乗り越え、ツーリズムによる経済成長と、地域・コミュニティの健全な発展という両立が実現すると言えます。
調査から地域住民は、豊かな生活を送る上で観光客の増加をポジティブに捉える傾向がある一方、オーバーツーリズムとしてネガティブに捉えられるきっかけは「日常生活」のサービス低下によることが分かりました。ツーリズムによる経済成長の実現に向けては、地域に経済的恩恵が還元されるような仕組みづくりが、必要不可欠です。この観光地のマネジメントこそ、DMO(Destination Management Organization)に求められている役割です。オーバーツーリズム解消に向けては、DMOを中心としつつ、観光客を含めたあらゆるステークホルダーが問題を「自分ごと」として捉え、取り組んでいく観光地マネジメントが重要です。
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コロナ禍により、あらゆる地域において、地域の再定義が課題となっています。EYでは、「デ―タ」を軸として、ビジネスの戦略立案・エコシステム形成をミッションに掲げ、地方創生・観光を中心に、データ収集・データ利活用の仕組みを構築し、観光DXの推進や、政策提言、企業戦略の策定支援などを行っています。
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