2025年IPOの振り返り(前編)

2025年IPOの振り返りと2026年以降のIPOの動向

2025年IPOの振り返り(前編)


トランプ関税ショックで世界経済が激動の中にあった2025年。円安傾向が続く中で日経平均株価は終値の史上最高値を次々と更新しました。こうした日本の株式市場の変化をどう捉え、今後はどのように成長していくのか。

EY新日本のパートナーであり、企業成長サポートセンターでスタートアップ支援に従事する藤原選が、東京証券取引所上場推進部長である荒井啓祐氏をお招きして、2025年のIPOの振り返りと2026年以降の動向について探ります。


要点

  • 2025年IPOは社数減も大型化が鮮明化。投資家の選別傾向により、市場は「量より質」へシフトしている。
  • グロース市場では「5年100億円」の上場維持基準見直しが実施されるなど、改革が進む。高成長企業の育成を推進すべく、東証は成長戦略やエクイティ・ストーリーの開示を促す“見える化”を強化している。
  • 2026年のIPOは一般市場・TOKYO PRO Marketともに、社数は前年並みと予測される。投資家の選別志向の背景には、企業の上場目的やその後の成長性への評価と期待が込められている。

株式会社東京証券取引所 執行役員 林 謙太郎 氏(写真右)、 EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター IPOグループ統括 公認会計士 藤原 選(写真左)

プロフィール

ゲスト:荒井 啓祐(あらい けいすけ)氏(写真右)
株式会社東京証券取引所 上場推進部長。1994年立教大学経済学部卒業、東京証券取引所入所。2009年、ロンドン証取と共同でプロ投資家向け市場TOKYO AIM(現在のTOKYO PRO Market)を開設。2013年から東証の欧州代表(ロンドン駐在)を務めた後、2019年からは情報サービス部長として指数開発やデータビジネスを担当。その後2023年4月から現職。国内外のスタートアップ、有力企業の上場誘致に注力。

モデレーター: EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター IPOグループ統括 公認会計士 藤原 選(写真左)
オーナー系企業やスタートアップを中心に30年以上にわたり多数のIPO業務を経験するとともにスタートアップの支援に注力。日本医療ベンチャー協会理事(現任)、経済産業省「Healthcare Innovation Hub」アドバイザー(現任)。経済産業省や厚生労働省の調査研究事業委員を務めた他、経済産業省などが主催するビジネスコンテストでの審査員経験も多数。 主な著書(共著)に、『金庫株の資本戦略』(ぎょうせい、2003年)『外食産業のしくみと会計実務Q&A(第2版)』(中央経済社、2025年)がある。


Ⅰ. 日経平均株価最高値更新の裏で2025年IPO市場に何が起きたか

藤原選(以下、藤原):まずは2025年のIPOを振り返り、その状況、傾向、特徴を振り返りたいと思います。2025年10月31日に日経平均株価の終値が5万2,411円と史上最高値を更新。2025年末の終値は5万339円と年末の終値としては2年連続で最高値となりました。2026年1月に入っても史上最高値をさらに更新して活況を呈している状況にあります。

一方、東証グロース市場250指数は、2024年末比4.8%の微増であり、日経平均株価の最高値更新を横目に株価の回復には時間がかかっている状況ではあるものの、上昇に転じている状況ではあります。

上場維持基準に関する経過措置の終了や成長に向けた資本構成の見直しを理由とした、MBO等による非上場化などにより、上場廃止する企業数が過去最多の125社。新規上場会社数を2年連続で上回り、東証上場会社数は60社減少しています。

こうした状況を踏まえ、2025年は上場やIPO活用の意義が問われ、「量から質」への転換を感じさせられる1年でした。

荒井さんは2025年のマーケットをどのようにご覧になっていましたか?

荒井啓祐氏(以下、荒井氏):日経平均株価が4万円台からスタートした2025年の株式市場は、4月にトランプ関税の懸念により一時3万円台まで下落しました。しかしその後、わが国の新政権への期待から5万2,000円台の史上最高値を付けるなど、高いボラティリティの中で極めて活況を呈した1年でありました。

IPO業界で注目されるのは、東証グロース市場250指数の方かもしれません。2025年は640ポイント台で始まり、その後8月頃まで総じて堅調に推移しましたが、やがて金利上昇が嫌気されて670ポイント台で終わるいわゆる「行って来い」の展開となりました。

荒井 啓祐氏

量から質という意味では、私たち東証は、2022年の市場区分見直し後も、新しい市場区分を設けて終わりということではなく、有識者会議による継続的なフォローアップをはじめとする市場の質の追求を続けています。たとえば2023年は「プライム市場」、2025年は「グロース市場」について議論を重ねてきました。特にグロース市場の上場維持基準の見直し、いわゆる「5年100億円ルール」に多くのご関心をお寄せいただいております。東証では、「高い成長を目指す企業」が集う市場というコンセプトを掲げるグロース市場の上場企業の方々に、できるだけ早く機関投資家の投資対象となり得る規模へと成長していただけるよう、制度の面から動機付けることを目的に、上場維持基準の見直しを行っております。当該水準は通過点と捉え、上場企業にはさらなる成長を目指していただきたいと考えています。

Ⅱ. IPO社数減少の要因分析から見えるグロース市場の見直しの行方

藤原:IPO社数を調べてみますと国内の「一般市場」ベースのIPOは2025年では66社と、前年の86社から20社減少で12年ぶりに70社を下回っています。また、グロース市場ベースでは2025年は41社にとどまり、24年の64社から23社の大幅減少になっています。

荒井さんはこうしたIPO、特にグロース市場への上場の状況をどのように見ていますか?

荒井氏:ご指摘の通り2025年は前年比20社減となり、その内訳はプライム市場が+3社、スタンダード市場が-1社、グロース市場が-23社でした。これを受けて一部メディアでは、グロース市場の上場維持基準見直しが2025年のIPO減少につながっていると報じられました。しかし、2024年と2025年のグロース市場の四半期別IPO社数を比較すると、第4四半期は同等で、第1~3四半期が大幅に減少しています。これは「トランプ関税ショック」など相場の不透明感が主因でしょう。申請から上場までは約3カ月かかるため、上場維持基準の見直し案の影響があるなら第3四半期以降に表れるはずですが、第4四半期は昨年並みに回復しており、そのことからも上場維持基準見直しが直接の要因ではないと考えます。

藤原:2025年IPOの業種別の傾向や特徴についての解説をお願いします。

荒井氏:業種構成には大きな変化はなく、情報・通信業が21社(前年比-6社)、次いでサービス業が18社(前年比-9社)とこの2業種だけで全体の約6割を占めています。

近年の特徴を探ってみると、やはり目に付くのはDX(デジタルトランスフォーメーション)により企業の業務を支援する事業でしょう。また小売・ヘルスケア・金融関連や半導体関連の上場があったことも例年通りです。

藤原:そういえば久しぶりに繊維業種の上場も複数社ありましたね。

では次に新規上場会社の本店所在地についてですが、2025年は前年に続き、東京以外の地域に本店を置く企業も見られました。

一般市場のIPO では66社中のうち、東京以外の本店所在地の企業数が20社と全体の3割を占めています。

こうしたIPOの全国的な広がりの現況や背景についてご教示いただけますか。

荒井氏:おっしゃる通り、近年は東京以外に本店を置く企業の上場が全体の3割程度で推移しており、2025年も同様でした。

私たちは、東京以外の地域からのIPOは地域企業の基盤強化や地域発スタートアップによる成長資金の調達に資するものであり、ひいては日本経済全体の活性化にもつながるものと考えています。

東証は、地域金融機関や自治体などと協力し、全国で新規上場誘致に取り組んでおり、今まさにその成果が出始めていると捉えています。また、こうした成功事例の蓄積を通じて、地域関係者の資本市場への意識変化も期待しています。

Ⅲ. オファリングサイズの動向が語る「サイズアップ」「選別化」の時代

藤原:2025年のオファリングサイズについて見ていきましょう。東証一般市場のIPO でのファイナンス総額は公募・売出し・OA(オーバーアロットメント)含めて、約1兆3,000億円と、前年の約9,700億円から約3割増加しています。中央値ベースのオファリングサイズで言うと、東証一般市場ベースで、プライムで980億円、スタンダードで25億円、グロースで31億円。プライムとスタンダードで24年比減少、グロースで約2倍の増加となっています。

ファイナンス額100億円以上では、前年と同数の12件、ファイナンス額50億円未満では東証一般市場ベースの社数の割合で、全体の7割弱と24年と同水準となりました。一方、10億円未満も全体の2割程度で24年と同水準となっています。 

荒井氏:2025年の東証一般市場への新規上場会社のファイナンス額は、過去5年で最大となりました。これはJX金属やSBI新生銀行などの大型上場が複数あったためです。ファイナンス額の分布を見ると、20億円未満の比率が40%未満となり、例年よりオファリングサイズが大型化しています。

藤原:続いて時価総額を見ていきましょう。

一般市場ベースでは公開価格ベースの時価総額の中央値は、2025年で91億円と24年の64億円と比較して、約4割増加しました。

特に、グロース市場ベースの時価総額の中央値では、2025年は102億円で24年の58億円から約8割の大幅増加となっています。公開価格ベースの時価総額で、50億円未満は20社で3割を占め、30億円未満も13社で2割となっています。

グロース市場ではユニコーン等の大型銘柄の上場は見送られたと理解しています。しかし数年前から証券会社の小型銘柄回避傾向や将来的なグロース市場の見直しも見据えた影響からか、時価総額とオファリングサイズがいずれも大型化しています。

荒井さんはこうした「サイズアップ」についてどのように見ていますか?

荒井氏:確かに2025年は時価総額の中央値が前年より上昇し、約半数が時価総額100億円以上となるなどIPOのサイズアップが見られました。主幹事証券会社などの市場関係者の話を聞くと、これは投資家と企業双方の変化によるものと考えられます。投資家はグロース銘柄が低迷する中、成長性だけでなく業績も重視する選別傾向を強めています。企業側も非上場段階における資金調達環境の拡充やM&Aの活発化を背景に、十分な評価が得られるタイミングで上場時期を見極める傾向を強めていると考えられます。

藤原:なるほど。「サイズアップ」と「選別化」は今後のIPOを考える際の重要なキーワードとなりそうですね。

Ⅳ. 大型案件とグローバル・オファリングそして「赤字上場」に対する考え方

藤原:時価総額・オファリングサイズの「大型案件」も見ていきたいと思います。

2025年、初値ベースの時価総額1,000億円超の大型案件は4件で前年の6件から微減しています。公開価格ベースの時価総額でも、300億円を超える新規上場会社が11社(ソニーフィナンシャルグループ除く)となり、24年の14社と比較してやはり微減となりました。

グロース市場では公開価格ベースの時価総額で300億円を超える案件は5社で、前年から3社減でした。

大型のオファリング案件については、プライム市場でJX金属、SBI新生銀行、テクセンドフォトマスクといった1,000億円超えのサイズが前年同様3社ありました。なおJX金属の4,386億円のオファリングサイズは2024年上場の東京地下鉄の3,486億円を大きく超えました。

一方、グロース市場では500億円を超えるオファリング案件が24年には1社でしたが、2025年は0件。

パートナー 藤原 選

大型案件で行われるグローバル・オファリングに関しては、2025年は前年から3社減少し4社となり、グロース市場銘柄はありませんでした。また、国内規制に基づいて、海外投資家へ販売する旧臨報方式も16社と、24年の21社と比較して、2年連続の5社減少となっております。グローバル・オファリングはファイナンス額が300億円を超える案件で、その金額以下の場合は旧臨報方式でのファイナンスになっています。

こうした大型IPO案件についてはどう捉えていますか?

荒井氏:大型銘柄の上場は、個別的な事情による部分が大きいものの、特に下半期については株式相場が総じて堅調に推移したことから、比較的上場しやすい環境にあったのではないかと考えています。

上場前の資金調達環境の改善によって、大型スタートアップの育成が進むと想定されます。既存の上場会社の事業ポートフォリオの見直しなどを背景に、PEファンドの投資先となった企業の上場やスピンオフ・カーブアウトによる上場も活発化する可能性があり、大型上場の案件は今後も継続的に生まれていくことでしょう。

東証としても資本市場の信頼性、公正性、安定性の確保などを通じて、大型IPOが円滑に実施されるような環境の維持に努めていきたいと考えています。

藤原:では続いて「赤字上場」についてですが、申請期の予想ベースの経常損益で赤字の社数は、一般市場で、2025年は4社と前年の12社から大幅に減少しています。赤字案件に対する機関投資家のバリュエーションの目線の厳しさや今後のグロース市場の見直しを見据えて、2025年は成長性が明確な企業に赤字上場は限定された印象を持ちました。

荒井氏:投資家は成長性だけでなく業績面でも成果を出している企業を重視する傾向が強まっています。それに対して企業側も十分な評価が得られるタイミングで上場しようとする動きをみせたことから、2025年は赤字上場の件数が減少したと推察しています。

東証グロース市場の新規上場基準は利益や純資産の額の要件がなく、成長を目指す企業が上場しやすい制度です。足元で上場維持基準を見直しましたが、高い成長を目指す企業がチャレンジできる環境を維持したいという思いから新規上場基準の⾒直しは⾏なっていません。

ご承知の通り、2020年に東証はグロース市場における「赤字上場」に関する審査上のポイントを明確化し、2024年11月に公表した「上場審査に関するFAQ集」においても、「“主幹事証券会社が高い成長可能性を有する”と評価し、“投資家に受け入れられると判断”した結果」として、赤字上場を行った事例が多数存在する旨を周知しています。

藤原:特に将来の収益性が見えているのであれば、赤字上場は十分許容されるということですね。

荒井氏:おっしゃる通りです。私たち東証は、制度の趣旨を十分ご理解いただいた上で、企業、投資家の方々に市場を積極的にご利用いただきたいと思っています。

藤原:2025年の株価パフォーマンスについて見てみますと、公開価格割れが10社と一般市場のIPO社数ベースで15%と前年より微減となっています。初値の公開価格に対する平均上昇率は2024年は約3割の上昇でしたが、2025年で約4割の上昇と1割弱上がっています。

荒井氏:個別の公開価格や初値について、私たち取引所はコメントする立場にはありません。それぞれの価格は市況や個別の需給等の複合的な要因により決まると考えられます。

数年前、公開価格の適正性確保の問題というものがありました。この問題については内閣府令や日証協の規則の改正が行われた他、東証でも新規上場日の成行注文の制限などの対応を実施しました。

また、機関投資家向けのインフォメーションミーティングの実施などにより、投資家の目線を反映した公開価格の設定が広がっていると聞いています。

藤原さんが紹介された2025年の公開価格割れの状況などは、こうした一連の取組みの効果の現れなのではないかと思われます。

Ⅴ. 選択肢が広がる上場ルート活気あるマーケットを目指して

藤原:TOKYO PRO Market(以下、TPM)の動向はいかがでしょうか。2025年、TPMへの新規上場会社数は46社で、24年は50社だったので微減となりましたが、グロース市場への新規上場会社数(41社)をTPMが初めて超えた年でした。

荒井氏:TPMへの新規上場会社数は近年増加傾向で、関係者の話も踏まえますと、その要因は大きく2点あると思います。

まず1点目は、活用事例の蓄積により市場としての認知度が高まったことが挙げられるでしょう。TPMへの上場によって知名度や信用度が向上し、その後の事業成長を経て、東証スタンダード市場やグロース市場、地方取引所に市場変更する事例などが出てきています。

そして2点目は、近年、TPMを支える重要なプレーヤーであるJ-Adviserのすそ野が広がっていることです。2025年5月にはタナベコンサルティング、9月にはブリッジコンサルティングがJ-Adviserとなりました。これにより従来リーチできていなかった未上場企業に対してTPMの活用を積極的にご提案いただいていることが要因だと考えます。

特に、ここ数年では、まずTPMに上場してから一般市場への上場を目指そうとする会社が増加傾向にあるようで、グロース市場の見直しを受けて、今後はそうした動きがさらに顕著になるでしょう。

藤原:上場承認の取消企業についてもふれておきましょう。2025年は3社と前年の1社から微増しました。そのうちソニーフィナンシャルグループについては、パーシャルスピンオフを活用して、1999年の杏林製薬以来の26年ぶりとなる公募・売出しを行わないダイレクトリスティングによる上場となりました。

荒井氏:パーシャルスピンオフには複数の意義やメリットがありますが、その1つとして企業のコングロマリット・ディスカウントの解消や資本効率の見直しにつながることが挙げられます。

2023年3月に東証が公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」には、企業グループにおける事業ポートフォリオの見直しを求めるといった内容も含めています。税制面も2023年度の改正において、一定の条件を満たすパーシャルスピンオフについては課税の繰延べができるようになったことから、企業が柔軟に組織再編を行いやすくなったと認識しています。そのためソニーフィナンシャルグループに次ぐ事例が今後も出てくるのではないでしょうか。

藤原:その他に2025年度のIPOの特徴はありますか?

荒井氏:上場関連トピックとして、スタンダード市場への市場区分の変更数の増加が挙げられるでしょう。2025年は、プライム市場からスタンダード市場が前年の0件から13件に、グロース市場からスタンダード市場が前年2件から13件と大きく増えています。

プライム市場については、2022年の市場区分の見直しに当たって上場維持基準も変更した際に見直し前から旧東証一部などに上場していた企業に対する経過措置が、2025年3月に終了しました。グロース市場については、いわゆる5年100億円の上場維持基準の見直しが2025年12月に実施されました。いずれも新たな上場維持基準の適用を見据えて、スタンダード市場に市場区分を変更する企業が増えたと考えています。

関連動画

  • YouTubeで動画配信中
    2025年IPOの振り返り〜「量から質」へとシフトする市場をひもとく〜
    www.youtube.com/watch?v=zLdOZ2Te3eg

サマリー

2025年のIPO市場を振り返り、IPO社数が66社に減少した要因や、ファイナンス額・時価総額の大型化、投資家の選別志向を分析。グロース市場の見直しやTOKYO PRO Market拡大の背景を読み解きます。

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