EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本稿の執筆者
EY韓英会計法人 税務本部 ITTS 韓国公認会計士・税理士 パートナー 朴 基亨
2005年1月にEY韓国・監査本部の日本事業部に入社して2年間監査業務を行った後、2007年から税務本部に勤務し、日系企業に移転価格を含んだ国際租税、税務調整、税務診断、税務調査対応業務など、多様な税務サービスを提供している。2017年7月からの1年2カ月間はEY税理士法人に派遣勤務。
要点
韓国政府は、グローバル技術覇権競争に備えるため、2022年から国の経済、外交、安保に関する戦略的に重要な技術を「国家戦略技術」として選定し、研究・開発(以下、R&D)活動と施設投資に対して税制面での支援をしています。
最近、人工知能(以下、AI)が産業全般の革新動力に浮上したことを受けて、韓国政府は従来の7分野の国家戦略技術に「AI」分野を追加することで、AI分野の産業全般のデジタル転換を図り、投資を促進させる計画です。
国家戦略技術は、国家安全保障及び経済に重大な影響を及ぼす技術であり、R&D及び施設投資に対して一般技術より高い税額控除率が適用されます。2025年の改正案では、国家戦略技術に「AI」が新しく追加され、計8分野・78の細部技術に拡大されました。これにより、先端産業に対する韓国の税制支援システムは「半導体→AI・自動運転→サービス産業」に拡張される構造に進化しています。国家戦略技術の範囲の拡大を時系列的にまとめると、以下のようになります。
沿革 | 国家戦略技術分野 |
2025年8月 | 8分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段、バイオ医薬品、AI) |
2023年8月 | 7分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段、バイオ医薬品) |
2023年6月 | 6分野(半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、未来型移動手段) |
国家戦略技術に指定された技術に関する税制インセンティブは、大きくR&D費に関する税額控除と事業化施設への投資に関する税額控除に分けられます。2025年の改正案では、「AI」分野が新たに含まれ、AI技術研究とサービス提供施設に対しても同じ税額控除の特典が適用されます。
R&D費に関する税額控除率は法人の規模に応じて差をつけて適用されています。大企業よりは中堅企業に、中堅企業よりは中小企業にさらに多くの特典を与えています。また、国家戦略技術に該当するものは、一般技術のR&D費よりも、高いインセンティブを付与しています。
大企業の場合、国家戦略技術に関するR&D費に適用される税額控除と一般R&D費を比較してみると、下表のようになります。
法人 | 国家戦略技術 | 一般 |
大企業 | R&D費×{30%+MIN(10%、売上高に対する支出の比率×3)} | R&D費×MIN(2%、売上高に対する支出の比率×0.5) |
上記1.と同様に、事業化施設投資に関する税額控除率も法人の規模に応じて差をつけて適用されています。また、大企業における国家戦略技術と一般技術の投資税額控除率の差は下表のとおりです。
区分 | 国家戦略技術 | 一般 | |
大企業 | 2025年以降に投資し、2029年12月31日までに投資する場合 | 事業用固定資産投資額×15%+追加控除10% | 事業用固定資産投資額×1% |
2025年の改正では、「AI」分野の国家戦略技術の事業化施設に関する事後管理要件が明確に規定されました。事後管理期間中に管理基準を満たさないと判明した場合は、享受した控除税額相当額と利子相当額の納付が求められます。
区分 | 管理基準 | 管理期間 |
生産施設型(従来) | 総生産量のうち、国家戦略技術製品の割合が50%超過 | 投資完了年度の次の3つの課税年度の終了日まで |
AIなどサービス型 (新設) | 総使用時間のうち、国家戦略技術サービス比率が50%超過 |
上記の税制インセンティブの適用を受けるためには、企業が行う研究開発課題が「租税特例制限法施行令」別表7の2に規定された国家戦略技術(8分野78技術)のいずれかに該当することを事前に認められなければなりません。
国家戦略技術に該当するか否かは、韓国産業技術振興院(KIAT)の審査によって判定されます。企業は国家戦略技術関連のR&D費、一般R&D費、及びその他の費用を、内部会計システムを通じて明確に区分経理できる社内管理体制の整備を求められます。
2025年の改正では、AIサービス型事業化施設に関する別途の事後管理基準が設けられました。物理的な生産ではなくサービス提供を中心とする施設の場合、総使用時間の50%以上がAI関連サービスの提供に使用されないと税額控除が維持されません。これを充足できない場合は控除税額を還収されます。今回の改正はAI産業の特性を反映させた税制現実化措置と言えます。
韓国政府は、2021年まで企業のR&Dと施設投資に関して「一般技術」と「新成長・源泉技術」に区分し差をつけて税額控除を適用してきました。しかし、グローバル技術覇権の競争が激しくなるにつれ、2022年「国家戦略技術」が新設され、その後半導体・二次電池・ワクチンを皮切りに2025年現在は「AI」分野を含む8つの戦略産業に拡大させました。これにより、R&D及び事業化施設への投資に関する税額控除の体系は3段階の構造(国家戦略技術→新成長・源泉技術→一般技術)で運営されており、控除率もやはり段階別に差等的に適用されます。特に「AI」分野の場合、R&DだけでなくAIサービスの提供施設まで税額控除の対象に含まれ、産業全般のデジタル転換及び先端産業への投資促進効果が期待されます。
韓国の企画財政部は2025年の税制改編案の後続措置として国家戦略技術のR&D及び施設投資に対する税制支援を拡大し、人工知能(AI)分野を国家戦略技術に新たに含めました。
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