EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
2022年上半期(1⽉〜6⽉)の特別買収⽬的会社(Special Purpose Acquisition Company: SPAC)⾃体の上場件数は、地政学的リスクや⽶国の⾦融引き締め等による世界的なIPOの市況悪化の影響を受け、2021年上半期から75%減少の98件となりました。調達⾦額も145億米ドルと87%減少しました。
地域別にみても、Americasは71件(80%減少)、121億⽶ドル(88%減少)、欧州は、15件(25%減少)、 18億⽶ドル(67%減少)、アジア太平洋は、12件(前期同)、6億⽶ドル(279%増加)とこれまでSPACが活況であったAmericas、特に⽶国での件数・調達額の減少が⼤きく影響しました。
<エリア別SPAC IPO>
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
2022年の公表ベースでのDeSPAC(IPOを行ったSPACが買収対象会社と合併し、⼀連の買収取引を完了すること)は75件であり、2021年上半期の157件と⽐較して52%減少しました。また、IPOによる調達額は125億米ドルであり、 2021年上半期の471億米ドルと⽐較して73%減少しました。買収額は625億米ドルであり、2021年上半期の3,715億米ドルと⽐較して83%減少しました。
<DeSPAC 2期比較>
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
2022年上半期におけるDeSPACの買収金額上位5件は、以下の通りです。
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
2021年度の⽶国のSPAC上場件数は、613件、調達⾦額1,625億米ドルを記録しましたが、2022年度上半期は、69件、118億米ドルと⼤幅に減少しました。
<米国SPAC上場企業数推移>
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
2022年度第2四半期ベースで公表された米国のDeSPACの件数は、39件と第1四半期の31件を超えたものの、昨年に比べるとその勢いが落ちています。
<公表済みのDeSPAC‐米国>
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
完了したDeSPAC取引についても、2021年度は199件、買収⾦額4,649億米ドルを記録しましたが、2022年上半期ケースでは、47件、買収⾦額1,116億米ドルと昨年より大幅に減少しています。
<完了したDeSPAC-米国>
Sources: EY analysis, Dealogic, SPACInsider
上記のように2022年上半期では、⽶国を中⼼としてSPACに関する取引は⼤きく減少しました。⼀⽅で、欧州やアジアなどでのSPAC上場やDeSPACが少しずつみられるようになってきました。また、東京証券取引所においても⽇本でのSPACに関する議論がされています。
今後のSPACに関する量的な盛り上がりは不明ですが、クロスボーダー上場を含めた上場のひとつの形態として定着する可能性があることを考えると、その動向には引き続き留意する必要があると思われます。
【お問い合わせ】
EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター シニアマネージャー
山本 竜大
ここ1年で経済記事やニュースにおいてSPACという言葉をよく目にするようになりました。SPACとは、自身では事業を営まず、主に未公開企業や他社の事業を買収することを目的とした会社です。本稿では、日本企業の目線でSPACの留意点を説明します。(情報センサー2021年10月号 FAAS)
EY新日本有限責任監査法人が毎月発行している定期刊行物です。国内外の企業会計、税務、各種アドバイザリーに関する専門的情報を掲載しています。
ニュースリリース
EY新日本、クロスボーダー上場対応を強化するため「クロスボーダー上場支援オフィス」を設置
【EY Japan】EY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区、理事長:片倉 正美)は、日本企業による米国を含む海外市場での上場支援およびグローバルオファリング支援、外国企業による日本市場での上場支援を強化するため「クロスボーダー上場支援オフィス」を企業成長サポートセンター内に設置しました。
地政学的リスクや米国の金融引き締め等による世界的なIPOの市況悪化の影響を受け、世界的に見て2022年上半期のSPAC、DeSPACはともに大幅に減少。特に米国での減少が顕著です。
一方で、IPOの一形態としては定着する可能性はあり、その動向については引き続き注目すべきです。
EYの最新の見解
米国SPAC・DeSPACの最新動向と監査・会計・税務上の留意点とは
SPAC(特別買収目的会社)の2021年度における米国上場件数は、既に300件超に増加しており、またSPACによる買収(DeSPAC)は、数千億円超の案件も発生し活発な状況です(2021年8月時点)。このような環境の中、今般、証券会社、弁護士、税理士、会計士といったさまざまな分野の専門家が、SPACの仕組みやそのライフサイクルを解説します。