令和7年度税制改正 所得税の基礎控除等の引上げ

情報センサー2025年7月 Tax update

令和7年度税制改正 所得税の基礎控除等の引上げ


令和7年度税制改正のうち、所得税の基礎控除等の引上げについて解説します。


本稿の執筆者

EY税理士法人 エクゼクティブ・マネジメント 公認会計士・税理士 南波 洋

1993年から、太田昭和アーンストアンドヤング(現EY税理士法人)にて、日本企業・外資系多国籍企業に対する国内および国際税務アドバイザリー業務に従事。国際税務、税制改正、組織再編税制などに係る講演、寄稿、執筆多数。



要点

  • 令和7年度税制改正では、いわゆる「103万円の壁」問題が国民の注目を集めた。
  • 2024年末に公表された与党税制改正大綱に記載された改正案では、103万円から123万円に「壁」を引き上げる方針が示された。
  • その後与野党間の協議が行われ、最終的には「壁」を160万円に引き上げる改正がなされた。


Ⅰ はじめに

令和7年度税制改正に係る法案が2025年3月31日に参議院で可決・成立し、政省令を含めて同日公布されました。改正法は原則として、25年4月1日に施行されています。

今回の改正項目の中で特に注目を集めていた「103万円の壁」(給与収入の課税最低限)問題に関しては、24年12月に公表された与党税制改正大綱における記載とは異なる改正内容で施行されました。本稿においては、所得税の基礎控除等の引上げに関する令和7年度改正について解説します。


Ⅱ 所得税の基礎控除等の引上げ

1. 与党税制改正大綱

24年12月11日、自民、公明、国民民主の3党幹事長会談において、「103万円の壁」については国民民主が主張する「178万円」を目指して令和7年から引き上げること、具体的な実施方法等については引き続き関係者間で誠実に協議を進めること、を盛り込んだ合意書が交わされました。その後も協議は続けられましたが、最終的に24年12月20日に公表された与党税制改正大綱においては、基礎控除は48万円から10万円引き上げて58万円に、給与所得控除の最低保障額は55万円から10万円引き上げて65万円に改正することとされました。その結果、給与収入の課税最低限は103万円から123万円になりました(「壁」が103万円から123万円に)。
 

2. 国会審議

25年2月4日、政府与党は上記大綱に基づいて、課税最低限を123万円とする改正法案を国会に提出しました。その間も、政府与党と国民民主党との間で上記合意書を受けた協議が行われました。最終合意には至りませんでしたが、以下に記載の「基礎控除の上乗せ特例」を追加した修正案が国会に提出されました。この修正案が2025年3月31日に国会で可決・成立しました。
 

3. 最終的な改正内容

基礎控除は物価動向を勘案し48万円から10万円引き上げて58万円になりました※1。加えて、低~中所得者の税負担に配慮し、所得階層ごとに最高37万円(年間合計所得132万円以下)から5万円の基礎控除額の「上乗せ」が行われました(基礎控除の上乗せ特例)(<図1>参照)。なお、給与所得控除の最低保障額は55万円から10万円引き上げられて65万円になりました※2。以上の改正により、給与収入の課税最低限は103万円から160万円になりました(「壁」が103万円から160万円に)。

図1 基礎控除の引上げ

図1 基礎控除の引上げ

出所:財務省「『令和7年度税制改正』(令和7年3月)」www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei25.html(2025年7月3日アクセス)を基にEY作成

※1 給与収入2,545万円超の場合には、10万円の引上げはない。

※2 給与収入190万円以下の場合に適用される。


Ⅲ 留意事項

この改正は令和7年分以後の所得税について適用されます。給与所得者については、令和7年分の年末調整から適用されます。

なお、基礎控除の上乗せ特例は2年間(令和7年分と令和8年分)の時限措置として行われます。令和9年分以後は、合計所得金額132万円以下の場合に限り、上乗せ(37万円の上乗せ)が維持されます。合計所得金額132万円超の場合は、基礎控除の上乗せはなくなります。

個人住民税については、基礎控除の引上げは行われず、現行の43万円が維持されています。



サマリー 

令和7年度改正において、所得税の基礎控除等の引上げが行われました。基礎控除は、上乗せ特例を含めると最高95万円で、給与所得控除の最低保障額は65万円となりました。この改正により、給与収入の課税最低限は103万円から160万円へと引き上げられました。


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