最近の法人税調査の動向:国際課税の調査状況

情報センサー2026年7月 Tax update

最近の法人税調査の動向:国際課税の調査状況

国税庁は「法人税等の調査事績の概要」を毎年報道発表しています。その計数の推移を分析しながら、国際課税を中心とする最近の法人税調査の動向等について解説します。

本稿の執筆者

EY税理士法人 顧問 税理士 水上 勝弘

国税庁および東京国税局において国際監理官など国際課税分野の要職を歴任。多国籍企業に対する税務調査の現場で長年にわたり国際課税事案の指揮・監督を担ってきた。現在、当法人審理戦略室で指導・助言を行っている。

※所属・役職は記事公開時のものです


要点

  • 法人税の実地調査件数は減少しているが、海外取引法人への対応は重点課題とされており、国際課税の非違件数はあまり減少していない。
  • 外国子会社合算税制に係る非違件数はここ数年100件を上回っており、特に「経済活動基準」に着目した調査が行われているのではないかと推測される。
  • 税務調査で国際課税に関する指摘を受けないためには、トップマネジメントの関与の下、事業部と連携し、主要な海外子会社の状況を把握して必要な対策を講じておくことが重要。

Ⅰ はじめに

国税庁は、税務調査に関するさまざまな情報を公表しています。その公表されたデータや資料を読み解くことにより、税務調査の動向等をうかがい知ることができます。本稿では、法人税の税務調査の最近の動向等について、国際課税の調査状況を中心に解説します。

Ⅱ 法人税等の調査事績の概要

国税庁は、毎年11月又は12月に前事務年度の「法人税等の調査事績の概要」(以下、調査事績の概要)を報道発表しています。その調査事績の概要に掲載された計数の推移を、統計的に比較可能な平成20事務年度から分析すること等により、法人税調査の動向等を探ってみたいと思います。

1. 実地調査件数の減少

調査事績の概要の中の「Ⅲ 参考計表(1 法人税・法人消費税等の調査事績)別表1:法人税の実地調査の状況」によると、令和6事務年度における実地調査件数は54千件、申告漏れ所得金額は8,198億円であり、対前年比はそれぞれ92.6%、84.2%といずれも減少しています。その一方で、実地調査の結果である、追徴税額は2,187億円、調査1件当たりの追徴税額は4,023千円となっており、対前年比はそれぞれ104.0%、112.3%といずれも増加しています(<表1>参照)。

このことから、国税庁は、リソースが限られる中で「調査必要度の高い法人」に対して深度ある実地調査を実施し、申告漏れ所得金額よりも追徴税額を意識した調査事務運営を行っていると推察します。

表1 法人税の実地調査の状況(抄)

表1 法人税の実地調査の状況(抄)

出所:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和7年12月)」
www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/index.htm(2026年6月24日アクセス)

また、実地調査件数の推移を少し長い期間で見てみると、平成20事務年度に146千件であった件数が、令和6事務年度には54千件と、対平成20事務年度比で37.0%と6割以上も減少しています。平成24事務年度の減少は税務調査手続の法定化、令和1~3事務年度の減少は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響と考えられますが、COVID-19の収束後も法人税の実地調査件数は回復していません(<図1>参照)。

これらのことから、国税庁は、過去には実地調査の割合(接触率)を一定程度維持しようとしていたが、最近は実地調査の件数を絞り込んで比較的多額の追徴税額が見込まれる法人に対して深度ある実地調査を実施しようとしていると推察します。

図1 法人税の実地調査の状況の推移

図1 法人税の実地調査の状況の推移
出所:国税庁「法人税等の調査事績の概要」より筆者作成

2. 主要な取組み(重点課題:海外取引法人等への対応)

令和6事務年度の調査事績の概要では、主要な取組みとして、「AI・データ分析の活用(税務署所管法人)」「重点課題」「簡易な接触」の3つの項目が挙げられています。

本稿では「重点課題」のうち「海外取引法人等への対応」について解説します。

令和6事務年度の調査事績の概要において「重点課題」として位置付けられているのは、「消費税還付申告法人、海外取引法人等及び無申告法人への対応」ですが、このうち海外取引法人等への対応に係る計数を見てみます。

① 海外取引法人等に係る実地調査の状況

「Ⅲ 参考計表(1 法人税・法人消費税等の調査事績)別表5:海外取引等に係る調査等の状況(法人税)」の中の「(1)海外取引法人等に係る実地調査の状況」を見てみると、令和6事務年度における実地調査件数は10,195件、申告漏れ所得金額は2,096億円であり、対前年比はそれぞれ97.6%、73.0%となっています(<表2>参照)。

いずれも減少はしていますが、海外取引法人等に対する実地調査については、件数の減少割合は、全体(対前年比92.6%)より低くなっています。また、申告漏れ所得金額の全体に占める割合は、件数の全体に占める割合が20%未満であるにもかかわらず、25.6%(2,096億円/8,198億円)となっています。

表2 海外取引法人等に係る実地調査の状況(抄)

表2 海外取引法人等に係る実地調査の状況(抄)

出所:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和7年12月)」
www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/index.htm(2026年6月24日アクセス)

また、海外取引等に係る非違があった件数の推移を見てみると、平成20事務年度の3,297件が令和6事務年度に2,375件と平成20事務年度比で72.0%に減少していますが、法人税全体の実地調査件数が平成20事務年度比で37.0%に減少している状況で、その減少割合は半分以下にとどまっています(<図2>参照)。

これらの計数を見ても、海外取引法人等に対する実地調査は、重点課題として取り組まれており、その結果も出ているものと考えます。

なお、国税当局は重点課題への取組みとして、複雑困難な調査への積極的な取組みや有効な調査手法の開発に力を入れていることが示唆されます。企業側も国境をまたがる複雑な経済取引を行う場合には、課税上の問題を惹起するような点がないか前広な検討が必要と考えます。

図2 海外取引法人等に係る実地調査の状況の推移

図2 海外取引法人等に係る実地調査の状況の推移
出所:国税庁「法人税等の調査事績の概要」より筆者作成

② 外国子会社合算税制に係る実地調査の状況

「別表5:海外取引法人等に係る調査等の状況(法人税)」には、「外国子会社合算税制に係る実地調査の状況」と「移転価格税制に係る実地調査の状況」も掲載されています。

「(2)外国子会社合算税制に係る実地調査の状況」を見てみると、令和6事務年度における非違があった件数は115件、申告漏れ所得金額は527億円となっています。対前年比はそれぞれ108.5%、254.7%であり、いずれも増加しています(<表3参照>)。

表3 外国子会社合算税制に係る実地調査の状況

表3 外国子会社合算税制に係る実地調査の状況

出所:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和7年12月)」
www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/index.htm(2026年6月24日アクセス)

非違があった件数の推移を見てみると(実地調査件数ではない点に留意する必要がありますが)、令和4事務年度以降100件を上回る件数となっており、海外取引法人の実地調査において、ここ数年、国税庁が外国子会社合算税制に係る実地調査に力を入れていることがうかがえます(<図3参照>)。

なお、海外取引法人等に対する事例では、外国子会社合算税制の適用事例として、2年連続で「経済活動基準を満たさない外国子会社」の利益を合算した事例が挙げられており、外国子会社合算税制に関しては、特に「経済活動基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準)」に着目した調査が行われているのではないかと推察します。

図3 海外子会社合算税制に係る実地調査の状況の推移

図3 海外子会社合算税制に係る実地調査の状況の推移
出所:国税庁「法人税等の調査事績の概要」より筆者作成

③ 移転価格税制に係る実地調査の状況

次に「(3)移転価格税制に係る実地調査の状況」を見てみると、令和6事務年度における非違があった件数は107件、申告漏れ所得金額は399億円となっています。対前年比はそれぞれ85.6%、77.9%と、いずれも減少しています(<表4>参照)。

表4 移転価格税制に係る実地調査の状況

表4 移転価格税制に係る実地調査の状況

出所:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要(令和7年12月)」
www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/hojin_chosa/index.htm(2026年6月24日アクセス)

非違があった件数の推移を見てみると、ここ数年は減少傾向にあります。減少傾向とはいっても、依然として100件を上回る件数で非違が把握されています(<図4>参照)。

税務調査で移転価格に係る指摘を受けないよう、国外関連取引における価格が独立企業間価格と乖離(かいり)していないかどうかを常に留意しておく必要があります。

図4 移転価格税制に係る実地調査の状況の推移

図4 移転価格税制に係る実地調査の状況の推移
出典:国税庁報道発表「法人税等の調査事績の概要」

なお、移転価格税制に係る実地調査の非違件数が100件を上回るといっても、役務提供取引等の比較的簡易な事案の非違件数も含まれているため、本格的な移転価格税制に係る実地調査の非違件数は非常に少ないのではないかと推測します。

しかしながら、国税庁は、国外関連者に係る情報収集や分析を進め、依然として移転価格税制に係る実地調査にも力を入れています。そのためローカルファイルの作成等を通じて国外関連者の利益率等には常に留意し、本格的な移転価格税制に係る実地調査の対象とならないよう、必要に応じて国外関連者との取引価格を見直していく必要があります。
 

Ⅲ 税務に関するコーポレートガバナンス

ここまで最近の法人税調査の動向等について、国際課税の調査状況を中心に解説してきましたが、国税庁では、税務調査以外にもさまざまな取組みを実施しています。

例えば、自発的な適正申告が期待できる大企業に対しては、「税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)の充実に向けた取組」が行われています。税務CGとは、税務について経営責任者等が自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部体制を整備することです。

税務CGの現状の取組みとしては、調査部の特別国税調査官所掌法人(特官所掌法人)に対する税務調査の機会に企業の税務CGの状況の確認・判定が行われ、国税局の調査部長等と企業の経営責任者等との面談において、評価結果の伝達や要改善事項等に関する意見交換が行われています。このような国税当局による税務CGの取組みは、特官所掌法人に限らず、対象をより幅広い法人へと広げつつ企業の内部体制の充実を促す方向であると理解しています。

また、東京国税局では、税務CGの充実に向けた取組みの一環として、東京国税局の調査部特官所掌法人を対象に、新規性の高い形態の取引について、税務上の取扱いを早期に回答し、税務リスクを低減させていく取組み(J-CAP〈Compliance Assurance Program of Japan〉)を試行しています。

特官所掌法人などの大企業には、こういった施策も利用するなどして、国税当局とのコミュニケーションを図りながら、自発的に税務コンプライアンスを向上させていくことが望まれています。

※ 国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組について(調査課所管法人の皆様へ)」www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/hojin/sanko/cg.htm(2026年6月24日アクセス)


Ⅳ おわりに

国税庁は、海外取引法人等への対応を重点課題としており、法人税の実地調査件数が減少傾向にある中でも、外国子会社合算税制や移転価格税制に係る実地調査等は引き続き積極的に実施してくるものと考えます。

国際課税の問題の発生を未然に防止し、税務調査で指摘を受けないようにするためには、海外子会社等の状況をしっかりと把握しておくことが重要です。大企業においては、海外子会社等の管理は、各事業部が行っていることが多く、経理担当部署による対応のみでは限界があるため、企業全体で認識を持って取り組んでいく必要があります。

経理担当部署と事業部、本社と現地法人との間で、情報や課題に対しての理解が十分共有されず、税務調査において国際課税に係る指摘を受けた場合には、その原因を分析し、企業グループ全体を統括するトップマネジメントの関与の下で体制を整備するなど、必要な対策を講じていくことが重要です。

また、国境をまたがる複雑な経済取引を行う場合には、経理担当部署が積極的に関与し、課税上の問題を惹起するような点がないか前広に検討するとともに、新規性の高い形態の取引については、税務リスクを低減させるためにJ-CAPの利用を検討することも有益と考えます。



サマリー

国税庁は実地調査件数を減らしていますが、海外取引法人への実地調査は重点的に行っています。大企業が国際課税の問題を未然に防止するためには、経営責任者の関与の下、企業全体で取り組んでいく必要があります。





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