若手の管理職志向を高めるには?  ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ

若手の管理職志向を高めるには?  ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ

EYは、昨今、管理職になることを「罰ゲーム(※)」と感じがちと言われる若手が管理職を志向するようになる主要ドライバーを新たに特定しました。

(※)パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児 氏が提唱された表現です。


要点

  • 若手の管理職志向を向上させるには、若手本人が今の仕事に面白さを感じ、管理職の仕事をよく理解してこれを魅力的に思い、将来を見据えた自己投資ができることが重要。
  • 会社が若手の管理職志向を引き上げるには、管理職のロールを可視化した上で管理職に対して職責に見合うプレミアム感のある処遇をし、業務負荷を軽減するための措置を取ることが有効。
  • 管理職(若手の上司)においては、自らのメリハリある働き方を周囲に示すことや若手に仕事の意義を伝えて、視座を高めること、組織の心理的安全性を担保し、オープンな議論ができるようにすることが重要。

EYは、立教大学経営学部 田中聡准教授との共同調査研究において、次世代のビジネスをけん引することが期待される若手が管理職を志向するようになる主要ドライバーを新たに特定しました。本調査は、日本の企業に所属する20代前半から30代半ばまでのビジネスパーソンを若手と定義し、当該層9名に対するインタビューによる定性調査と、2,071名に対するインターネットアンケート形式の定量調査を通じて実施しました。

管理職のなり手不足が深刻化しているとされている昨今、本調査においても、管理職志向が高い若手は4人に1人にとどまり、これを表す傾向が見て取れました。また、「会社から高い人事評価を得ている」と回答した若手のうち、3人に2人は管理職志向が低いなど、優秀であっても管理職を目指さない若手が増えてきていることがうかがえ、企業における管理職難の問題の深刻さが浮き彫りになりました。また、性別ごとにみると、女性の方が男性よりも管理職になることをネガティブに捉える割合が高く、ジェンダーに応じたアプローチが求められることがうかがえます。

一方で、若手全体の4分の3は管理職を「罰ゲームである」とまでは認識しておらず、また、高い人事評価を得ているものの管理職志向が低い若手の約7割は、「組織の後押しがあり、自身に実力が備わりさえすれば、管理職にチャレンジしたい」と考えていることから、組織や上司の働きかけによって本人の志向を変容させ、管理職を目指したいと思わせられることが示唆されました。


イントロダクション

管理職志向が高い若手は多いとは言えないが、管理職が 「罰ゲーム」 と感じる割合は限定的で、実力が備われば管理職にチャレンジしたいという意向も相応にある

図1:異動/転職後1年程度が経過した際の会社 または上司からの人事評価結果(5点満点)
管理職に“なりたい”若手の比率 – 性別

管理職になることについて、男性の方がポジティブに、女性の方がネガティブに捉える割合が高い。また、女性においては、過半数がネガティブに捉えている

図2:トランジションに直面したマネージャーが、短期間で成果を上げるための、3つのマネジメント行動とその組織カルチャー

また、「管理職」を若手が目指したいと思えるようにするには、会社・管理職(若手の上司)・若手本人それぞれに求められるアプローチがあることが示唆されました。以下、個別に説明します。

分析結果サマリー

「管理職」を若手が目指したいと思えるようにするには、会社、管理職(若手の上司)および若手本人それぞれに求められるアプローチがあることが示唆された


若手が管理職を目指したいと思えるようにするには、まずもって若手自身が「①今の仕事に面白さややりがいを感じ、会社に対する高い貢献意欲と愛着を持つこと」、「②管理職の仕事をよく理解し、現実的な管理職像を描けること」、そして「③目先のことよりも将来を見据えたキャリアへの自己投資ができること」が重要であることが明らかになりました。

若手の管理職志向を高める上で重要な “本人の志向”

何よりもまず、本人が今の仕事に面白さを感じ会社に愛着を持つことが重要。これにより若手は管理職の理解を深め、魅力を感じ、管理職になるべく自己投資を図る


また、若手の志向を上記のように変容させ、管理職を目指したいと思わせるようにする上で有効な組織の在り方として、「①管理職のロールを明確に示し、人事制度を適切に設計・運用すること」、「②会社が管理職に対して職責に見合うよう手厚く処遇すること(管理職のプレミアム感を損なわないこと)」、「③管理職同士が助け合える環境づくりや管理職の業務負荷の軽減に努めること」が求められることが示唆されました。

若手の管理職志向を高める上で重要な “組織の在り方”

会社は若手の管理職志向を高めるべく、人事制度を適切に機能させ、管理職へのプレミアム感のある手厚い処遇をし、管理職の業務負荷を軽減することが求められる


さらに、管理職(若手の上司)としては、「①仕事にまい進するばかりでなく、適度にリフレッシュし、メリハリある働き方ができている姿を周囲にみせること」、「②部下に仕事の意義を伝えて将来に向けた目的志向を持たせ、視座を高めること」、「③部下をおもんばかるばかりでなく、組織における心理的安全性を担保し、オープンな議論ができる場を形成すること」が求められることが確認されました。

若手の管理職志向を高める上で重要な “上司の在り方”

上司には、自らの働き方に関するセルフマネジメントと個人の内発的動機付けを図るメンバーマネジメント、心理的安全性を持たせる組織マネジメントが求められる


サマリー

昨今、「罰ゲーム」とも揶揄される「管理職」を若手が目指したいと思えるようにするには、会社が管理職の職責に見合うプレミアム感のある処遇を提供するとともに管理職の負担をケアし、管理職(若手の上司)は視座を引き上げるためのマネジメントをすることが重要です。また、若手本人が今の仕事に面白さを感じることも必要な要素です。


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若手の管理職志向を高めるには? ~ドライバーは、報酬のプレミアム感と管理職同士の仲の良さ


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管理職への憧憬・志向性を高めるマネジメントに関する調査 要約版(PDF:1.16MB)

EYは、立教大学経営学部 田中聡准教授との共同調査研究において、次世代のビジネスをけん引することが期待される若手が管理職を志向するようになる主要ドライバーを新たに特定しました。

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