2021年12月1日
有望な投資先として注目を集めるポーランド

有望な投資先として注目を集めるポーランド

執筆者 EY 新日本有限責任監査法人

グローバルな経済社会の円滑な発展に貢献する監査法人

Ernst & Young ShinNihon LLC.

2021年12月1日

「ポーランド」と聞いて、その国の経済や人々の様子を想像できる日本の方は少ないことと思います。旧共産圏の国でありながら、資本主義の導入、EU加盟を経て、順調な成長を続けるポーランドの魅力について紹介します。

本稿の執筆者

EY新日本有限責任監査法人 ワルシャワ駐在員 公認会計士 松元 泰

2007年入所後、広告業・製造業など国内上場企業や複数の新規上場企業の会計監査に従事。20年12月よりEYポーランド ワルシャワ事務所に現地日系企業担当として駐在し、ポーランド、チェコおよびハンガリーを担当。会計、税務、コンプライアンス支援・新規投資サポートなど、幅広いサービスで日系企業の事業展開を支援している。

要点
  • ポーランドは親日国であることや、2004年のEU加盟後の順調な経済成長などを背景に、投資対象として熱い視線が注がれています。
  • 元来の地理的な魅力に加えて、EUの補助金を活用したインフラ整備や、魅力的な投資優遇策などにより、投資先としての魅力が高まっています。
  • ポーランドの人口は約3,820万人とEU加盟国中で第5位であり、近年、購買力を備えた中間層が大きく増加し、国内市場の魅力も増しています。

Ⅰ はじめに

ポーランドと聞いて、読者の皆さまは何を思い浮かべるでしょうか。「ドイツの隣国」、「歴史的な教会や街並み」と連想される方が多いのではないでしょうか。どちらも正解なのですが、それだけではありません。ポーランドは欧州の中でもとても親日的であることや、2004年のEU加盟後の順調な経済成長などを背景に、投資対象としても熱い視線が注がれています。

ポーランドが親日国であることを不思議に感じる方が多いかもしれません。シベリア・ポーランド孤児救出に日本の外交官が大きく貢献したエピソードをご存知でしょうか。このエピソードは1920年頃の出来事であるにもかかわらず、多くのポーランド人に知られています。歴史的な出来事にとどまらず、ポーランド人が初めて手に入れたカラーテレビが日本製であったこと、日本車が大変人気であることなども相まって、「日本人は真面目で、優しく、良い製品を作る」という印象を多くのポーランド人が持っています。1980年代に民主化運動を主導し、後に大統領となったレフ・ワレサ氏が「ポーランドを第2の日本にする」というスローガンを掲げたことも象徴的です。

Ⅱ 順調な経済成長

欧州と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは、英国、フランス、ドイツといった西欧諸国かと思います。中欧諸国の一つであるポーランドは、旧共産圏ということもあり、20世紀後半には経済的に西欧の後塵(こうじん)を拝していましたが、特に2004年のEU加盟以降は順調に経済成長を遂げています。ドイツの隣国であるという恵まれた立地を活かし、多くの製造業がその拠点を構えており、リーマンショックにより多くの国がマイナス成長となった2009年においても、プラスのGDP成長を維持したことは印象的です(<図1>参照)。近年ではコロナ禍によるマイナス影響を受けているものの、観光業よりも製造業を軸足とする当地の経済は強い耐性を見せています。

図1 実質GDP成長率推移(%)

Ⅲ 投資先としての魅力

順調な経済成長の背景として、次のようなポーランドの投資先としての魅力が挙げられます。

1. EU加盟国への良好なアクセス

ポーランドは、中欧という言葉の通り、地理的に欧州の中心部に位置しています。特に経済大国ドイツの東隣という立地から、自動車関連製品を中心とした産業が発展しています。

近年では、アジアとヨーロッパとを鉄道などの陸路で結ぶ際の物流の玄関口としての役割でも注目を集めています。

2. EUからの補助金を活用した流通インフラ整備

旧共産圏であったポーランドは、EU加盟時においては、高速道路、鉄道および空港などの流通インフラ整備の面で西欧諸国に後れを取っていました。EU加盟後はEUより割り当てを受けた多額の補助金を活用してその整備が急ピッチで進められ、現在も進行中です(<図2>参照)。ポーランドを10年ぶりに訪れた方々は、口を揃えて「見違えるように変わった」とおっしゃいます。

これらのインフラ整備は、インフラ投資そのものが経済成長を押し上げるだけでなく、各産業の流通効率化をもたらし、投資先としての魅力を高めています。

図2 ポーランドと隣国の主要交通網

3. 相対的に低い賃金水準と良質な労働力

ポーランドの平均月収は、経済成長に伴って年々上昇しているものの、製造業の平均賃金は約5,000ズロチ(約14万円)程度であり、未だに日本や西欧諸国と比較すると相対的に低い水準に留まっています。

また、ポーランドの大学・短大進学率は70%超と国連加盟国の中でも上位の進学率となっています。地域差はあるものの、英語での意思疎通が抵抗なく行える労働者の比率が高いことは、進出する日系企業にとって大きなアドバンテージとなっています。

このように質の高い労働力が相対的に安価に活用できる環境がポーランドには存在しています。

4. 魅力的な国内市場

ポーランドの人口は約3,820万人(2021年)と中欧諸国の中で最も多く、EU加盟国中、ドイツ、フランス、イタリア、スペインに次ぐ、第5位の人口となっています。

2020年時点の1人あたりGDPは約16千ドルとなっており、近年において購買力を備えた中間層が大きく増加しています。大手スーパーやコンビニエンスストアには大手海外ブランドの製品が多く陳列されるなど、今後も経済成長により消費市場としての魅力も増していくことが期待されます。

Ⅳ 魅力的な投資誘致政策

2018年6月にポーランドの経済特区(SEZ)に関する法案が議会に提出された(可決された)ことで、投資誘致政策が大きく改善されました。ポーランド全土が優遇を受けられる経済特区となり、立地をより柔軟に決められるようになったこと、投資補助及び税制面での優遇措置も大幅に拡大したことにより、多くの投資家を引きつける充実した誘致政策が整備されています。

すでに自動車産業を中心とする多くの日系企業が進出していますが、今後はより幅広い分野において企業進出が進むことが期待されています。

Ⅴ 注目を集める脱炭素社会の実現に向けた投資誘致

近年、大きな注目を集めているのは、いわゆる脱炭素社会の実現に向けた投資です。

ポーランドは石炭産出国であることからエネルギー供給源として大きく石炭に依存している現状と脱炭素社会の実現を目指す将来像との間に大きなギャップが存在しています。この解消策として期待されるのが水素および、風力をはじめとした再生可能エネルギーです。これらの分野には、EUファンドからの補助金、ポーランド政府による各種補助金の投入が見込まれています。特に、水深の浅い沿岸部面積が広いバルト海に面しているという立地を活かした、洋上風力の開発が期待されています。

Ⅵ おわりに

日本では比較的馴染みの薄いポーランドですが、ビジネス面ではすでに356社の日系企業が進出しており(2020年時点)、日系企業が安心して事業を行う基盤が整っています。

EYでは10年以上前から常駐の駐在員を日本から派遣し、日系企業の進出支援、在ポーランド日系企業が直面する課題解決のサポートを行っています。会計、税務はもちろんのこと、法務、新規進出支援など、総合的なご相談に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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サマリー

「ポーランド」と聞いて、その国の経済や人々の様子を想像できる日本の方は少ないことと思います。旧共産圏の国でありながら、資本主義の導入、EU加盟を経て、順調な成長を続けるポーランドの魅力について紹介します。

情報センサー2021年12月号

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