データの保護や情報漏えいなどを防ぐことが主眼に置かれた「データセキュリティ」や「データストレージとオペレーション」という、「守り」の対策では、比較的高い成熟度であることが分かりました。一方、データ利活用のための基盤となる「データガバナンス」、「データアーキテクチャ」などの平均成熟度は低い結果となりました。これらの項目は、企業の収益を増加させる目的や、ESGなどのサステナビリティ関連の活動状況を非財務情報として開示する目的など、いわゆる「攻め」のデータ利活用で重要となる領域です。複数の異なる情報源からデータを入手し、加工・変換など行った上で蓄積・利用することが求められる活動であり、多くの日本企業において、組織横断的にデータを利活用するための態勢整備がまだ不十分な状況であると考えられます。
EY Japanからの提言:
ステークホルダー資本主義に対応した、データガバナンス態勢構築を
近年、多くの組織は、株主を意識した短期的な収益性に重点を置いた経営姿勢から脱却し、株主のみならず顧客、従業員、社会に対して長期的価値を生み出す「ステークホルダー資本主義」にシフトを進めています*3。EY Japanは、日本におけるデータガバナンスの状況、および、世界のステークホルダー資本主義に移行する流れを鑑み、「ステークホルダー資本主義に対応したデータガバナンス態勢構築」を提言します。本体制の構築により、企業は競争優位性を確立する道筋を築くことが可能になります。
企業が、サステナビリティの観点でのパフォーマンスや「ステークホルダー資本主義指標」*4 に基づき、活動状況を対外的に開示するには、温室効果ガス排出量削減対策や人権に配慮した活動状況など、財務報告には表れない非財務領域の情報が必要です。しかし、これまでのERPシステムなど多くのITシステムは、財務情報を生成することを前提に設計されています。非財務情報を入手するには別の用途で生成されたデータを収集し、適切な状態に加工して蓄積・利用する必要があります。データ提供元は複数組織にまたがることもあれば、企業外部の第三者からデータを入手することもあり、さまざまな関与者を通じたプロセス整備が必要です。
こうしたデータは、経営戦略策定時の基礎情報、日々の管理・取り組み状況の進捗確認や実績評価に利用され、さらにサステナビリティレポートや統合報告書などの開示情報として利用されることも想定されます。開示情報には信頼性が求められ、企業はデータ発生から利用までのライフサイクルの透明性と一貫性を確保する必要があります。
本サーベイにおいては、いわゆる「攻め」のデータ利活用の平均成熟度が相対的に低く、非財務情報の利活用に向けて環境整備が必要となる企業が少なくない状況が明らかになりました。EY Japanは、下記に示したステップなどを参考とした対応を推奨します。
EY Japanの推奨する対応ステップ
EY Japanは、企業のデータ管理レベルに応じ、下記のステップでのデータガバナンス対応を支援します。