我が国の会計基準は、2001年のASBJ設立前は、会計基準については企業会計審議会が、実務上の取扱い等を示す企業会計に関する実務指針(Q&Aを含む。以下「実務指針等」という。)については日本公認会計士協会がそれぞれ公表していましたが、ASBJ設立後は、新しい会計基準、適用指針及び実務対応報告についてはいずれもASBJが公表しています。日本公認会計士協会(以下、「JICPA」という。)が公表した実務指針等については包括的にASBJに引き継ぐことはせず、引き継げるものから引き継ぐ形をとっていますが、多くの実務指針等はまだJICPAに残されていました。
こうした状況を受けて、ASBJ及びJICPAは、JICPAが公表した実務指針等をASBJに移管するプロジェクト(以下「移管プロジェクト」という。)についての考え方を示し、関係者からの意見を募集することを目的として2023年6月に「日本公認会計士協会が公表した実務指針等の移管に関する意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表しました。また、2023年11月開催の公益財団法人財務会計基準機構の理事会では「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」が改正され、企業会計基準等に新たに移管指針の区分が設けられました。
これを受けASBJでは、意見募集文書に対して寄せられた意見を踏まえ、会計に関する指針のみを扱う実務指針等の移管について検討を重ねた結果、本移管指針が公表されました。
本移管指針の概要
1. 移管指針の体系及び内容
移管にあたっては、移管対象のJICPAが公表した実務指針等の所管をASBJに移すことを主たる目的とし、当該移管により実務を変更しないことを意図しています。このため、本移管指針では、実務への影響を最小限とするように、以下の方針に基づいて移管することとしています。
(1) 基本的には文書単位でそのままの形で移管することを原則とする。
(2) 実務指針等の「委員会名」及び「連番」は変更する一方、「実務指針等の名称」は変更しない。
(3) 各実務指針等における項番号を変更しない。
(4) 実務指針等に関して、字句等の誤りが含まれている可能性があるが、移管にあたって識別された字句等の誤りについて訂正しない。これらは、当委員会に移管した後、年次改善の一環として一括して訂正する。
ここで、実務指針等を移管指針として取り込むにあたっては、移管に関する経緯等について修正又は追加することが考えられるものの、すべての移管指針において同一の内容を記載することは冗長と考えられ、このため、本移管指針では、「移管指針の適用」においてこれらの内容を全般的に定め、当該移管指針に個別の移管指針が紐付く体系としています。
また、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)は、会計方針の開示、会計上の変更及び過去の誤謬の訂正に関する会計上の取扱い(開示を含む。)を定めています。ここで、移管指針の設定は、形式的には新たな会計基準等の設定に該当することから、移管指針を初めて適用する場合には原則としては会計方針の変更に該当すると考えられますが(企業会計基準第24号第5項)、本移管指針では実務指針等の名称を移管指針の体系に合わせるよう変更することを除き、移管前の実務指針等の内容を変更していないため、移管指針の適用は会計方針の変更に関する注記を要しないこととしています。
なお、本移管指針において、移管となる実務指針等は下記のとおりです(本移管指針別紙)。