ASBJから公表された補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」のポイント

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 松葉 純一

<企業会計基準委員会が2025年2月20日に公表>

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2025年2月20日に、補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(以下「本補足文書」という。)を公表しました。

「令和7年度税制改正の大綱」が2024年12月27日に閣議決定され、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置の一環として防衛特別法人税(仮称)の創設が掲げられました。防衛特別法人税に係る規定を含む「所得税法等の一部を改正する法律」(以下「改正税法」という。)の法案が、2025年2月4日に国会に提出され、国会で審議中となっています。

改正税法の法案によれば、防衛特別法人税が法人税額から500万円を控除した額を課税標準とする税率4%の新たな付加税として創設され、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課される予定とされています。

2025年3月31日に終了する事業年度の決算にあっては、当期税金に係る影響はないと考えられる一方で、税効果会計の適用については、改正税法の法案が2025年3月31日までに国会において成立した場合、改正税法の影響を反映する必要があると考えられます。

改正税法が2025年3月31日までに成立した場合を想定し、主として2025年3月31日に決算日を迎える企業における税効果会計の適用にあたっての防衛特別法人税の取扱いを明らかにすることで、実務に資するための情報を提供することを目的として本補足文書が公表されました。


Ⅰ. 本補足文書の概要

本補足文書は、改正税法が2025年3月31日までに成立した場合を想定し、主として2025年3月31日に決算日を迎える企業における防衛特別法人税の取扱いを明らかにすることで、実務に資するための情報を提供することを目的としており、企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針(以下「企業会計基準等」という。)を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書であるとされています(本補足文書第2項及び第3項)。

本補足文書では、防衛特別法人税については、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)第46項に掲げる税金には明示されていないものの、法人税に対する付加税として課されるものであるため、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金である法人税等(税効果適用指針第4項(2))に該当すると考えられるとされています。したがって、改正税法が2025年3月31日までに成立した場合には、同日に決算日を迎える企業にあっては、税効果会計の適用における2026年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に際して、防衛特別法人税を法人税、地方法人税及び特別法人事業税(基準法人所得割)と同様に取り扱い、以下の算式により法定実効税率を算定することが税効果適用指針の趣旨に適うこととなると考えられるとされています(本補足文書第11項及び第13項)。

防衛特別法人税の課税標準の計算において法人税額から基礎控除額として500万円を控除することが予定されていますが、上述の算式においては考慮していないとされています(本補足文書第13項(注))。

なお、ASBJは、改正税法の成立後、「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」に従い、防衛特別法人税の創設に対応した企業会計基準等の改正を行う予定であるとしています(本補足文書第4項)。


本稿は本補足文書の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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