【速報】予想信用損失モデルを含む改正金融商品会計基準案の公表!

企業会計基準委員会(ASBJ)から2025年10月29日に、予想信用損失モデルを取り入れることを提案する企業会計基準公開草案第89号(企業会計基準第10号の改正案)「金融商品に関する会計基準」、企業会計基準適用指針公開草案第88号「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いに関する適用指針(案)」を含む公開草案(以下、合わせて「本公開草案」という。)が公表されましたので、その概略をご紹介いたします。

仮に本公開草案の内容が適用された場合、特に金融機関において原則的な算定方法を適用したときに大きな影響があると考えられる一方、一般事業会社においては、営業債権やリース債権についての単純化したアプローチなどにより影響は限定的と考えられます。

なお、詳細な解説につきましては後日ウェブページで公開いたしますので、併せてご参照ください。

Ⅰ. 本公開草案の概要

(1) 本公開草案が公表された背景

我が国の金融商品に関する会計基準を国際的な会計基準と整合的なものとする取組みが検討されましたが、特に「金融資産の減損」については、国際的な会計基準では、合理的で裏付け可能な将来予測情報を反映し、予想信用損失をより適時に認識することを意図して予想信用損失モデルが導入されており、会計基準開発の意義が高いと考えられたため、ASBJにおいて検討が重ねられ、今般、公開草案の公表に至りました。なお、本公開草案に対するコメントが募集されていますが(コメント期限:2026年2月6日)、寄せられたコメントを踏まえた検討を経て、最終化された会計基準等の公表が予定されています。

(2) 一般事業会社における取扱い

一般事業会社については、通常の営業取引から生じる受取手形、売掛金等及びリースにより生じた債権について単純化されたモデルの適用が提案されています。これは、IFRS第9号の単純化したアプローチと同様の内容ですが、信用リスクの著しい増大の判定を行わずに、全期間の予想信用損失に等しい金額により算定することになります。

また、敷金、将来返還される差入預託保証金(建設協力金及び敷金を除く。)及びゴルフ会員権(預託保証金)については、現行の取扱いが踏襲されます。

(3) 金融機関における取扱い

金融機関については、原則的な予想信用損失の算定方法のほか、簡素化された算定方法が提案されています。

①原則的な算定方法

原則的な算定方法は、次のとおりです。

ECLモデル(原則的な算定方法*1)の特徴

*1  上記は原則的な算定方法であり、簡素化された算定方法は、信用リスクの著しい増大に関する判定等において簡素化されている。
*2  信用減損金融資産とは、将来キャッシュ・フローに不利な影響を与える1つまたは複数の事象が発生している債権及び満期保有目的の債券をいう。

② 簡素化された算定方法
具体的には、次の項目について簡素化が図られています。

  • 信用リスクの著しい増大に関する判定
  • 債権等*3の予想存続期間
  • 将来予測シナリオ
  • 時間価値の考慮

*3 債権、満期保有目的の債券、金融保証契約及び貸出コミットメント等

Ⅱ. 適用時期

以下の適用時期が提案されています。

区分

適用時期

3月決算会社の想定時期(※)

原則適用

20XX年4月1日(公表から3年程度経過した日を想定している。)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用

2031年3月期

早期適用

20XX年4月1日(公表後最初に到来する4月1日を想定している。)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用可

2028年3月期

※2027年3月に最終基準公表の場合

なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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