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サステナビリティ基準委員会(以下「SSBJ」という。)は、2026年1月22日、温室効果ガス排出の開示に関する以下のサステナビリティ開示実務対応基準の公開草案を公表しました。
SSBJは2025年3月に我が国初のサステナビリティ開示基準を公表し、その後のIFRS S2号修正(2025年12月)への対応を2026年3月末の確定を目途に進めています。
また、法定開示に関しては、金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等により、プライム上場企業のうち平均時価総額基準を満たす企業から段階的にSSBJ基準の適用を開始する方針が示され、任意適用を含め準備が進んでいます。
このような移行期において関係者の対応が進む中、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「温対法」という。)における「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(以下「SHK制度」という。)の定める方法により測定・報告した排出量を、SSBJ「気候基準」にどのように位置付けるかについて実務上の解釈が分かれるという懸念がSSBJに寄せられていました。企業間の対応の多様化は「気候基準」の趣旨や比較可能性を損なうおそれがあるため、SSBJは実務対応基準として明確化を図るとしています。
本公開草案は、気候基準第49項ただし書きに基づき、企業の全部または一部について、温対法のSHK制度の方法で測定・報告する温室効果ガス排出を用いて、気候基準に従う測定及び開示を行う場合に適用することを提案しています。
SHK制度の算定期間とサステナビリティ関連財務開示の報告期間が異なる場合には、報告期間に合わせて調整をすることを含め適用できると提案しています(本公開草案第2項)。
なお、GHGプロトコル(2004年)に従って温室効果ガス排出を測定するに当たり、SHK制度で報告する値を基礎として調整計算し、GHGプロトコルに準拠した値を算定するケースは本基準の適用範囲に含めないと提案しています(本公開草案第3項)。
本公開草案の用語の定義において、「基礎排出量」「調整後排出量」「温対法におけるSHK制度に基づく直接排出」及び「温対法におけるSHK制度に基づく間接排出」を定義し、SHK制度(2024年度改正)に基づき基礎排出量を直接排出と間接排出に区分した上で、GHGプロトコル(2004年)のスコープ1及びマーケット基準によるスコープ2に整合させる考え方を明確化することを提案しています(本公開草案第4項、BC8項)。
【図表1】用語の定義
測定・開示に関して、以下の基本的な考え方が提案されています。
温対法におけるSHK制度の定める方法により温室効果ガス排出を測定する場合には、「調整後排出量」ではなく、「基礎排出量」を温室効果ガス排出の測定及び開示の基礎として用いる。
任意の参考情報として、「基礎排出量」の開示とあわせて、「調整後排出量」及び調整項目を開示することができる(本公開草案BC14項)。
温対法におけるSHK制度に基づく直接排出をもって、スコープ1温室効果ガス排出を測定し開示する。
温対法におけるSHK制度に基づく間接排出をもって、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出を測定し開示する。
温対法におけるSHK制度に基づく間接排出に係る活動量に、環境大臣及び経済産業大臣が公表する平均的な排出係数を乗じる方法により算定した温室効果ガス排出をもって、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出を測定し開示する(本公開草案第7項)。
ただし、明示的に報告が要求されている、温対法におけるSHK制度に基づく間接排出をもって測定するマーケット基準を開示せずに、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出のみを開示することは認めない(本公開草案BC22項)。
上記のロケーション基準の測定値に関して、温対法におけるSHK制度ではロケーション基準に相当する報告は要求されていないが、測定に使用する要素はいずれも温対法におけるSHK制度の枠組みに含まれるものであることから、その測定値も当該枠組みに含まれるものである(本公開草案BC16項)。
【図表2】本公開草案の適用範囲および測定・開示の考え方
本公開草案は、2027年3月31日以後に終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用することが提案されています(本公開草案第10項本文)。
また、改正をより早く適用する企業のニーズがあると考えられることから、早期適用も可能であり、その場合は、その旨の開示が必要です(本公開草案第10項ただし書き)。
前報告期間に温対法におけるSHK制度の定める方法により測定し報告する温室効果ガス排出を用いて開示していた場合には、実務上不可能である場合を除き、比較情報の更新を求める経過措置の追加が提案されています(本公開草案第11項)。
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