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サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2026年3月13日に、温室効果ガス排出の開示に関する以下のSSBJ基準の改正(以下、あわせて「本基準」という。)を公表しました。
本基準は、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」という。)が2025年12月11日に公表したIFRS S2号「気候関連開示」(以下「IFRS S2号」という。)の修正に対応するもので、2025年3月に公表されたSSBJ基準の初めての改正となります。
SSBJは、SSBJ基準がISSB基準と機能的に整合していることを維持するため、ISSBによる基準改訂が行われた場合、可及的速やかに検討を開始する方針を示していました。今回のIFRS S2号の修正は、2023年6月に公表されたIFRS S1号・S2号の適用を支援するための活動を通じて識別された課題に対応するものです。
SSBJは原則としてISSB基準の要求事項をすべて取り入れる方針のもと、2025年12月公表のIFRS S2号に対する修正への対応として、本基準を策定しました。また、初めての改正であることを踏まえ、基準の円滑な適用及び解釈の明確化を図る観点から、必要な文言の修正についても併せて行われています。
2025年3月に公表されたSSBJ基準(以下「2025年基準」という。)では、スコープ3の温室効果ガス排出について、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示することが要求されています。
この点、ISSB基準の適用上の課題として、スコープ3カテゴリー15に含めるべき排出が明確ではなく、特にデリバティブ等の排出がスコープ3カテゴリー15として開示する範囲に含まれるかが不明瞭であるとの課題が識別されました。
この課題への対応として、本基準では、以下の改正が行われました。
① ファイナンスド・エミッションは、スコープ3カテゴリー15の全部又は一部を構成するものであることを明確化する(改正気候基準第6項(14)、第57項)。
② スコープ3カテゴリー15の温室効果ガス排出を測定し開示するにあたり、以下を認める(改正気候基準第56-2項)。
③ ②の取扱いを適用する場合、以下の開示が求められる (改正気候基準第56-3項) 。
④ スコープ3カテゴリー15の開示に含めたファイナンスド・エミッションの合計を小計として開示することが求められる(改正気候基準第56-4項)。
2025年基準では、ファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーを産業別に分解する際には、世界産業分類基準(以下「GICS」という。)の使用が求められていました。しかし、GICSは民間企業が管理する分類システムであり、使用にあたってライセンス料が発生する可能性があることから、特定の民間企業への支払いを義務付けることは適切ではないとの指摘がありました。
この課題への対応として、本基準ではGICSの使用要件を削除し、以下の改正が行われました。
① ファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーを産業別に分解するにあたっては、気候関連の移行リスクに対するエクスポージャーを理解する上で有用な情報をもたらす方法で産業別に分類することができる産業分類システムを用いなければならない。産業分類システムの選択にあたっては、他のすべての条件が同じであれば、一般的に用いられている産業分類システムを選択することを優先しなければならない(改正気候基準C5項)。
② 使用した産業分類システムについては、以下の開示を求める(改正気候基準C5項(6))。
なお、2025年基準では当面の間、GICSの使用により産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示を免除する取扱いが設けられていましたが、今回の改正により、この当面の取扱いは削除されました。
2025年基準では、温室効果ガス排出の測定は、原則として「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下「GHGプロトコル」という。)に従って行うことが求められていますが、法域の当局や企業が上場する取引所が異なる測定方法の使用を要求している場合には、当該方法を用いることができるという救済措置が設けられています。わが国においては、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「温対法」という。)に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(以下「SHK制度」という。)における温室効果ガス排出量の報告がこの救済措置に該当すると考えられます。
本基準では、この救済措置が報告企業全体だけでなく、グループ内の一部企業等にも適用可能であることが明確化されました(改正気候基準第49項ただし書き)。
2025年基準では、温室効果ガスをCO2相当量に変換する際には、原則として気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新の評価における100年の時間軸に基づく地球温暖化係数を使用することが求められています。
本基準では、法域の当局や企業が上場する取引所が異なる地球温暖化係数の使用を要求している場合、当該係数を使用できるとする救済措置が新たに追加されました(改正気候基準第66項ただし書き、第68項ただし書き)。
わが国においては、温対法におけるSHK制度に基づく温室効果ガス排出量の報告における地球温暖化係数が該当すると考えられ、この救済措置により、当該係数を使用することが可能になると考えられます(改正気候基準BC172-3項)。
本基準では、温室効果ガス排出の開示に関連する要求事項の改正のほか、IFRS S2号の修正に伴うSASBスタンダードの結果的修正を受け、適用基準において参照するSASBスタンダードが最新のもの(2025年12月最終改訂)に更新されました(改正適用基準第4項(11)等)。
なお、金融庁が2026年2月20日に公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等において定められたSSBJ基準の適用時期と本基準の適用時期との関係は、次のように整理されます。12月決算企業は、本基準の原則適用の時期が3月決算企業よりも早く到来する点に留意が必要です。
<株式時価総額3兆円以上の企業の場合>
決算期 | SSBJ基準適用開始 | 本基準の原則適用 | 本基準の早期適用可 |
3月期 | 2027年3月期 | 2028年3月期 | 2026年3月期以降 |
12月期 | 2027年12月期 | 2027年12月期 | 2025年12月期以降 |
本基準を適用する最初の年次報告期間においては、実務上不可能な場合を除き、以下の項目について、比較情報の更新を求める経過措置が定められています(改正気候基準第104-2項、第105-2項)。
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