EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 加藤 裕一
2026年6月2日に、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)より、改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等(以下「本会計基準等」という。)が公表されています。
【公表された本会計基準等】
基準番号等 | 基準名 |
改正企業会計基準第10号 | 金融商品に関する会計基準(以下「金融商品会計基準」という。) |
改正移管指針第9号 | 金融商品会計に関する実務指針(以下「金融商品実務指針」という。また、金融商品会計基準及び金融商品実務指針を合わせて「金融商品会計基準等」という。) |
改正企業会計基準第22号 | 連結財務諸表に関する会計基準(以下「連結会計基準」という。) |
我が国においては、金融資産の譲渡において、その譲受人が金融商品会計基準(注4)の要件を充たす特別目的会社である場合、改正前の金融商品会計基準では、当該特別目的会社が発行する「証券」の保有者を当該金融資産の譲受人とみなして「譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること」(金融商品会計基準第9項(2))の金融資産の消滅の認識要件を適用するとされていました。
この点、2024年12月に開催された第537回企業会計基準委員会において譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化について検討することが企業会計基準諮問会議よりASBJに提言されました。これを受けて、ASBJでは、2025年12月より審議を開始し、検討を進めてきました。
今般、2026年5月28日開催の第577回企業会計基準委員会において、本会計基準等の公表が承認され、2026年6月2日に公表されました。
金融資産の譲渡において、その譲受人が金融商品会計基準(注4)の要件を充たす特別目的会社である場合、改正前の金融商品会計基準では、当該特別目的会社が発行する「証券」の保有者を当該金融資産の譲受人とみなして「譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること」(金融商品会計基準第9項(2))の金融資産の消滅の認識要件を適用するとされていました。
この点、特別目的会社が発行する証券を保有している投資者と、特別目的会社に対して貸付けを行っている融資者とで異なる取扱いを設ける特段の理由はないと考えられることから、特別目的会社に対する融資者についても、特別目的会社に対する投資者と同様に取り扱うこととされました(金融商品会計基準(注4)、第58-3項、金融商品実務指針第40項、第254-2項)。
【金融商品会計基準の主な改正内容】
項目 | 改正前 | 改正後 |
金融資産の消滅の認識要件の適用上、当該金融資産の譲受人とみなす対象 | 特別目的会社が発行する証券の保有者 | 特別目的会社に対する投資者又は融資者 |
金融資産の譲受人とみなす取扱いに係る設立目的要件 | 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を特別目的会社が発行する証券の保有者に享受させることを目的として設立されていること | 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を当該特別目的会社に対する投資者等に享受させることを目的として設立されていること |
金融商品会計基準等は、原則として2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用することとされています(金融商品会計基準第41項(7)、第120-3項)。
また、早期適用については、できる限り速やかに適用可能とすることに対するニーズが存在することを考慮して、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用できることとされています(金融商品会計基準第41項(8))。
適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています(金融商品会計基準第44-3項)。しかしながら、特別目的会社を譲受人とする金融資産の譲渡を行う企業は、通常、会計上の取扱いを十分に検討した上でスキームを構築していると考えられるため、スキーム実行時に想定していなかった会計処理となるように遡って見直すことは、原則として求めるべきではないと考えられるとされています。このため、改正後の金融商品会計基準の適用前に実施された金融資産の譲渡の会計処理については、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされています(金融商品会計基準第44-3項、第120-4項)。
これまで特別目的会社については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業から独立しているものと認め、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定するとされていました(連結会計基準第7-2項)。
改正後の連結会計基準では、特別目的会社について、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当するかどうかの評価においても、特別目的会社に対する投資者と特別目的会社に対する融資者とで異なる取扱いを設ける特段の理由はないと考えられることから、改正後の連結会計基準における「特別目的会社が発行する証券の所有者」に、資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者を含む旨が追加されています(連結会計基準第7-2項、第49-8項)。
なお、特別目的会社が子会社に該当するか否かの判定に関しては、財務諸表等規則第8条第7項では、特別目的会社が発行する証券の所有者に、資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者を含むと定められており、監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」Q3においても、同様の趣旨が示されています。このため、実務上も従来から当該定めを踏まえて特別目的会社が子会社に該当するか否かの判定が行われてきた可能性があり、今回の改正による影響は限定的である可能性があると考えられます。ただし、連結会計基準上はこれまでその旨が明示されていなかったことから、関連する法令上の取扱いとの整合性を図る観点から、会計基準において明確化されたとされています。
【連結会計基準の主な改正内容】
項目 | 改正前 | 改正後 |
子会社非該当の推定に係る要件 | 特別目的会社が適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されていること | 特別目的会社が適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者(資産流動化法第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者を含む。)に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されていること |
連結会計基準は、金融商品会計基準等の適用時期と整合的に、原則として2027年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から将来にわたって適用することとされています(連結会計基準第44-7項(1)、第78-6項)。
また、早期適用については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から将来にわたって適用できるとされています(連結会計基準第44-7項(2)、第78-6項)。
公開草案からの主な取扱いに実質的な変更はありません。主な修正としては、連結会計基準第49-8項において、特別目的会社が発行する証券の所有者に特定借入れに係る債権者を含める趣旨が明確化されています。
なお、本稿は本会計基準等の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
ASBJウェブサイトへ
会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。