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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大竹 勇輝
2026年7月7日に、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)より、改正企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」を含め、以下の会計基準等(以下、合わせて「本会計基準等」という。)及び補足文書「我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて」(以下「補足文書」という。)が公表されています。
【公表された本会計基準等及び補足文書】
改正企業会計基準第27号 | 法人税等に関する会計基準(以下「改正法人税等会計基準」という。) |
改正企業会計基準適用指針第28号 | 税効果会計に係る会計基準の適用指針(以下「改正税効果適用指針」という。) |
改正実務対応報告第42号 | グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(以下「改正実務対応報告第42号」という。) |
改正移管指針第6号 | 連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針(以下「改正キャッシュ・フロー実務指針」という。) |
企業会計基準第43号 | 「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(その3)(以下「税効果会計基準一部改正」という。) |
企業会計基準第44号 | 「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の一部改正(その4) |
補足文書 | 我が国における課税対象利益を基礎とする税金及び税効果会計における税率に関する取扱いについて |
改正前の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めていることから、個別の税金の創設を受けて都度改正が行われていました。しかしながら、新たな税金の創設に対応した会計基準等の改正を行う場合、改正前の法人税等会計基準の適用対象となる税金の定め方に従えば、法人税等会計基準に個別の定めを追加することとなり、現行の税制改正のスケジュールに鑑みると、税制改正から税効果会計を含む会計基準の適用までの短期間で会計基準等の改正を行う必要があると考えられます。
この点、ASBJは、2025年5月より、法人税等会計基準の適用対象となる税金に関する原則的な定めを置くことに関して審議を開始し、検討を進めてきました。
今般、2026年6月29日開催の第580回企業会計基準委員会において、本会計基準等の公表が承認され、2026年7月7日に公表されました。
改正法人税等会計基準では、法人税、地方法人税、住民税、事業税及び特別法人事業税の基準法人所得割額(地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による。))によって課すものについて、基本的には、所得を対象として課される税金という性質を有するものであることを考慮し、かつ、国際的な会計基準における法人所得税の定義等を参考にして、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金に関する会計処理及び開示を定めることとされています(改正法人税等会計基準第1項、第2項、第27-2項)。
また、在外支店等の財務諸表は親会社又は国内子会社の個別財務諸表に取り込まれ、在外支店等の利益は親会社又は国内子会社の個別財務諸表に計上されることから、親会社又は国内子会社の在外支店等が所在地国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当するものは、改正法人税等会計基準を適用することになると考えられるとされています(改正法人税等会計基準第27-6項)。
さらに、課税対象利益を基礎とする税金に該当しない次のものについても、適用範囲に含め別途定めを置くこととしたとされています(改正法人税等会計基準第2-2項、第27-3項、第27-4項、第27-7項)。
改正法人税等会計基準では、国際的な会計基準における定義を参考に、それぞれ<図表1>のとおり用語の定義を置くこととしたとされています(改正法人税等会計基準第4項(1)、(2)、第28-2項から第28-4項)。
<図表1>課税対象利益及び課税対象利益を基礎とする税金の定義
用語 | 定義 |
課税対象利益 | 課税当局の定めに従って算定された特定の事業年度の利益であり、当該利益を対象として税金が課されるものをいう。 |
課税対象利益を基礎とする税金 | 課税対象利益を基礎として、課税当局の定めに従って算定された税金及びその付加税をいう。 |
法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金に該当するものとそうでないものを一括して会計処理を定めていますが、改正法人税等会計基準では、まず課税対象利益を基礎とする税金について定めを置き、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)については、別途定めを置くこととしたとされています。この際、課税対象利益を基礎とする税金の会計処理については、法人税等会計基準の考え方を踏襲した上で、文言の見直しを行うこととしたとされています(改正法人税等会計基準第5項から第8-2項、第29-13項)。
改正法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものについて、<図表2>のとおり、会計処理が定められています(改正法人税等会計基準第8-3項から第8-5項、第29-14項から第29-16項)。
<図表2>課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの会計処理
項目 | 会計処理 |
住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割) | 法人税等会計基準の考え方を踏襲し、法令を適用して算定した額を損益に計上する |
受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税等 | 後述するように、「法人税等」に表示又は「法人税等」に含めずその内容に応じた適切な表示区分に表示することになると考えられることから、損益に計上する |
親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもの | 後述するように、「法人税等」に表示又は「法人税等」に含めずにその内容に応じた適切な表示区分に表示することとなると考えられることから、損益に計上する |
改正法人税等会計基準では、法人税等会計基準の考え方を踏襲した上で、表示科目の例についての記述を見直し、損益に計上する課税対象利益を基礎とする税金の額は、損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税等」などの適切な科目(以下「法人税等」という。)をもって表示することとされています(改正法人税等会計基準第9項、第40-4項、第40-5項)。
改正法人税等会計基準では、課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものについて、<図表3>のとおり、表示することとされています(改正法人税等会計基準第18-2項から18-5項、第18-7項から第18-9項、第40-6項から第40-24項)。
<図表3>課税対象利益を基礎とする税金に該当しないものの表示
項目 | 改正前の取扱い | 改正法人税等会計基準における取扱い | |
住民税(均等割) | 損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示する | 課税対象利益を基礎とする税金に該当しないため、「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する | |
事業税(付加価値割)及び事業税(資本割) | 原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する | 「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する | |
受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税等 | 税額控除の対象となる税額 | 法人税等に基づき税額控除の適用を受けない税額は、損益計算書の営業外費用として表示する | ① 税額控除を選択した場合 源泉所得税等を法人税の前払いとして清算を行うことが税額控除の趣旨とされていることを考慮し、「法人税等」に含めて表示する ② 税額控除を選択しない場合 受取利息及び受取配当金等を獲得するための費用とみることができると考えられるため、「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する |
税額控除の対象とならない税額 | 受取利息及び受取配当金等を獲得するための費用とみることができると考えられるため、「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する | ||
親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金で課税対象利益を基礎とする税金に該当しないもの | 税額控除の対象となる税額 |
| ① 税額控除を選択する場合 外国税額控除により国際的な二重課税が排除されることに着目し、「法人税等」に含めて表示する ② 税額控除を選択しない場合 「法人税等」に含めず、その内容に応じた適切な表示区分に表示する |
税額控除の対象とならない税額 |
| ||
改正法人税等会計基準において課税対象利益を基礎とする税金を定義したことを受け、これと整合するように税効果会計基準一部改正において、法人税その他の課税対象利益を基礎とする税金を「税効果会計に係る会計基準」における「法人税等」と定義したとされています(税効果会計基準一部改正第2項、BC2項)。
なお、改正税効果適用指針において、税効果会計基準一部改正にあわせて法人税等の定義を見直されていますが、法人税等に該当する税金は従来と同様であり、税効果会計の対象となる税金に関して変更を意図するものではないとされています(改正税効果適用指針案第4項(2)、第91項)。
改正税効果適用指針では、法定実効税率の定義に関して具体的な税金の名称を使用した算式を削除し、代わりに「課税対象利益に対する法令上規定された税率に基づく税負担の比率」とすることとし、具体的な税金の名称を使用した法定実効税率の算式については、補足文書にて示すこととされています(改正税効果適用指針第4項(11)から(13)、第46項、第47項、第74-3項、第150-3項)。
改正実務対応報告第42号では、改正法人税等会計基準と整合するよう、グループ通算制度の対象とされている税金に関する記述について見直されています(改正実務対応報告第42案第2項、第36-2項)。
また、グループ通算制度を適用している場合における繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する設例を削除し、補足文書において示すこととされています。
改正キャッシュ・フロー実務指針では、改正法人税等会計基準において住民税(均等割)の損益計算書における表示に関して事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と整合的に取り扱うこととされているため、キャッシュ・フロー計算書においても、住民税(均等割)は「営業活動によるキャッシュ・フロー」に含まれるキャッシュ・フローではありますが、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)と同様に「法人税等の支払額」に含めてはならないこととされています(改正キャッシュ・フロー実務指針第10項、第35-2項)。
改正法人税等会計基準は、2028年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされており、改正法人税等会計基準以外のその他の本会計基準等についても同じ時期に適用することとされています。
また、これらの本会計基準等については、公表日である2026年7月7日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができることとされています(改正法人税等会計基準第20-7項等)。
本会計基準等を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができるとされています(改正法人税等会計基準第20-8項、第48項)。
また、本会計基準等の適用初年度においては、表示方法を変更した場合に、原則として、比較情報についても新たな表示方法に従い財務諸表の組替えを行うとする企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しないとされています(法人税等会計基準案第20-9項、第48項、改正キャッシュ・フロー実務指針第26-10項、第51項)。
実務において参考となるように、次の内容を示した補足文書が公表されています。
補足文書は、企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告及び移管指針(以下「企業会計基準等」という。)を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書であるとされています。
公開草案からの主な変更点としては、本会計基準等を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合の経過措置が追加され、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができるとされています(上記Ⅱ.9.(2)参照)。
なお、本稿は本会計基準等及び補足文書の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
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