EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ナレッジセンター 公認会計士 井澤依子
<ポイント>
提案モデルにおいては、企業が顧客に約束した財又はサービスを移転することによって、顧客が財又はサービスを支配したときに、識別された履行義務を充足し、収益を認識するという考え方をとっている。これは工事契約等についても同様であり、顧客が資産の製造に応じて当該資産を支配する場合にのみ、連続的な収益認識となる。これは、アウトプットやインプットの割合、時の経過に基づいて収益を認識するものであり、進行基準的な会計処理と考えられる。
【顧客が財又はサービスの支配を獲得している指標】
① 顧客が無条件の支払義務を負っている
② 顧客が法的所有権を有している
③ 顧客が物理的に占有している
④ 財又はサービスのデザイン又は機能が顧客に固有のものである
【連続的な移転における収益認識方法】
アウトプット法 |
生産もしくは引き渡しの単位数、契約上のマイルストーン、又は、これまでに移転した財もしくはサービスの量の、移転される財もしくはサービスの総量に対する割合の調査に基づく収益認識 |
---|---|
インプット法 |
これまでに投入した労力(例えば、費消した資源のコスト、労働時間、機械時間)の、投入される予定の総労力に対する割合に基づく収益認識 |
時の経過に基づく方法 |
契約の予想残存期間にわたる定額法による収益認識 |
製造サービスか製造された機器か(本論点整理 設例17より)
シナリオ1 - 製造サービス
(前提条件)
(結論)
支配が連続的に移転すると判定される(以下、【検討過程】参照)。
シナリオ2 - 製造された機器
(前提条件)
(結論)
支配が一時点で移転すると判定される(以下、【検討過程】参照)。
【検討過程】
支配の移転の指標 |
シナリオ1 |
シナリオ2 |
---|---|---|
①無条件の支払義務 |
有。四半期ごとの返金不能の出来高払い(解約の場合にはその時点までの出来高払い) |
四半期ごとの定額払い(ただし、顧客が機器を受け取れなかった場合には全額回収可能) |
②法的所有権の移転 |
無 |
無 |
③物理的占有 |
無 |
無 |
④デザイン・機能が顧客固有のものである |
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|
<ポイント>
収益の認識単位は、契約における履行義務であり、「財又はサービスが区別できる場合」には別個の履行義務として会計処理しなければならない。
【財又はサービスが区別できる場合】
① 企業(又はその他の企業)が、同一の、又は類似する財又はサービスを別個に 販売している。
② 財又はサービスが次の条件の双方を満たしていることにより、企業が財又はサービスを別個に販売し得る。
据え付けを伴う特別仕様の機器(ED 設例9より)
(前提条件)
(結論)
財・サービスが区別できるため、企業は機器と据え付けについて別個の履行義務を識別する。しかし、据付後でないと顧客が当該機器に対する支配を獲得しない場合には、企業はそれらを別個に会計処理する必要はない。
<ポイント>
履行義務を充足した時に、企業は顧客の信用リスクを反映させ、受け取ると見込まれる対価を確率で加重平均した金額で収益を認識する。
顧客の信用リスク(本論点整理 設例5より)
(前提条件)
(会計処理)
① 商品の移転時
受け取ると見込まれる対価を確率で加重平均した金額900千円で、収益を認識する。
② 債権の再評価時
いったん受取債権を計上した後の、信用リスクの評価の変動による影響は、収益以外の損益(貸倒引当金繰入)として認識する。
<ポイント>
顧客が固定額の対価を支払うことを約束した場合、取引価格は約束された固定額となるが、対価の金額が変動する場合には、取引価格は企業が顧客から受け取ると見込まれる対価を確率で加重平均した金額を反映したものとなる。
出来高ボーナスとペナルティー付きのコンサルティング・サービス(本論点整理 設例4より)
(前提条件)
(会計処理)
① X1年4月~9月
1カ月当たりの収益126,000千円÷6=21,000千円
毎月、21,000千円で収益認識を行う。
② X1年9月の追加仕訳
取引価格が130,000千円で確定したため、既計上額126,000千円との差額4,000千円について、追加の収益認識を行う。
「顧客との契約から生じる収益に関する論点の整理」及び「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」について