EU、デジタル時代のVAT(ViDA)提案に関して最終的に合意


  • 当初の提案に対する妥協と修正を経て、経済・財務理事会(ECOFIN)はViDAイニシアティブを採択した。
  • 措置は2027年~35年に掛けて段階的に採択される見込みだが、正確な日付はまだ確定していない。
  • 欧州連合で事業を展開する企業は、ViDAパッケージが自社の取引、請求書発行、報告プロセスに与える影響を評価する必要がある。

2024年11月5日、欧州連合(EU)の経済・財務理事会(ECOFIN)は会合を開き、デジタル時代のVATイニシアティブ(ViDA)の一環として、EU付加価値税(VAT)規則の変更について議論を行いました。27カ国の全加盟国が満足できるよう、当初の提案への妥協を採択した後、ECOFINは提案の3つの柱のすべてを採択しました。

背景

ViDAイニシアティブは、EU全域にわたる共通のVAT規則を抜本的に変更するパッケージであり、3つの柱と段階的な実施日が含まれます。このイニシアティブは、VATコンプライアンスの徹底、脱税の防止、デジタル時代のニーズに適合したVAT規制のレベルの高度化を目的としたものです。EU加盟国の財務相が政治的合意に達したことで、このパッケージを実施するためのさらなる立法措置が可能になります。

ViDAの3つの柱は、以下のように要約できます:

  1. デジタル報告要件(DRR) — 域内取引(すなわち加盟国間)に共通の標準化されたデジタル報告要件と電子インボイスを導入する。
  2. プラットフォーム経済 — VAT徴集におけるデジタルプラットフォームの役割の強化により、宿泊施設の短期賃貸および旅客輸送サービスにおけるプラットフォーム経済の課題に対応する。
  3. 単一VAT登録 — 輸入品に関するワンストップショップ(OSS)および企業間取引(B2B)のリバースチャージの範囲拡大により、EUにおけるVAT登録要件を軽減する。

当初、この新たな規則は2025年に全般的に実施され、DRR規則は2028年から適用される予定でした。一部の例外を除いて実施日は延期されましたが、措置は2027年~35年の間に段階的に採択される見込みです。全ての日程は、個々の加盟国における現行の電子インボイス発行システムに関する経過措置も含めて、まだ確定していません。

今やEUで事業を行う企業は、ViDAパッケージが自社の取引、インボイス発行、報告プロセスに与える影響を評価し、将来のVAT報告要件を確実に満たすために自社のシステムをどのように設定すべきかを検討する必要があります。

さらに、EUのDRR規則の延期にもかかわらず、多くの加盟国および他の世界各国では、国内の電子インボイス発行および電子報告規則をすでに導入しているか、2030年以前に導入を行う途上にあります。したがって、企業では、これらの規則を順守する自社の能力の評価をまだ実施していない場合には、その準備態勢の評価を行うことも検討する必要があります。

今後のステップ

2022年12月8日、EU委員会は「デジタル時代のVAT」パッケージを提示しました。これは以下の3つの提案から構成されています:

  1. デジタル時代のVAT規則に関連して、指令2006/112/ECを修正する理事会指令の提案。
  2. デジタル時代に必要とされるVAT管理の協力取り決めに関連して、規則(EU)No 904/2010を修正する理事会規則の提案。
  3. 特定のVATスキームに関する情報要件に関する、施行規則(EU)No 282/2011を修正する理事会施行規則の提案。

これらの指令と規則には、特別立法手続が適用されます。理事会では、これら3つの法令全てについて全会一致が必要とされます。欧州議会は諮問を受けたあと、2023年11月22日に意見を表明しました。しかし、理事会が指令に対して大幅な修正を加えたため、欧州議会は合意されたテキストについて再度諮問を受けることになります。

その後、このテキストは理事会により正式に採択される必要があり、その後EU官報で公布され発効することになります。

修正後の条項の詳細は、以下の補足文書に記載されています

お問い合わせ先

EY税理士法人

岡田 力 パートナー
古市 泰之 ディレクター

※所属・役職は記事公開当時のものです



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