EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
前年の年間グローバル連結収入が10億豪ドル以上であり、オーストラリア源泉の所得が1,000万豪ドル超である日本企業グループにおかれましては、2024年7月1日以降に始まる会計報告期間について、PCbCRの開示義務が課されます。これらの日本企業グループにおいて、EU加盟国に中規模以上の拠点がある場合には、オーストラリアおよびEUのPCbCRの対象となるため、両制度に適応した開示の整備が求められます。
2024年11月28日、オーストラリアの国別報告の開示PCbCR制度が、無修正で議会において可決され、国王の裁可を得ています1。同制度は2024年7月1日以降に始まる会計報告期間に適用されます。
現在、オーストラリアのPCbCR制度下での国別の報告を求められる特定の国・地域リストが最終的な委任立法として公表されています。
特定の国・地域リストは、2024年2月の草案リストからリヒテンシュタインが除去されたのみで追加はありません。特に、香港、シンガポール、スイスは引き続きリストに残っています。
特定の国・地域リスト
アンドラ |
アンギラ |
アンティグア・バブーダ |
アルバ |
---|---|---|---|
バルバドス |
バハマ |
バーレーン |
ベリーズ |
バーミューダ |
英領ヴァージン諸島 |
ケイマン諸島 |
クック諸島 |
キュラソー |
ドミニカ |
ジブラルタル |
グレナダ |
ガーンジー |
香港 |
マン島 |
ジャージー |
リベリア |
モーリシャス |
モナコ |
モンステラット |
ナウル |
ニウー |
パナマ |
マーシャル諸島 |
セイント・キッツアンドネイビス |
セイント・ルシア |
セイント・マーテン |
セイント・ビンセント・グレナダス |
サモア |
サンマリノ |
セーシェル |
シンガポール |
スイス |
タークスアンドカイコス |
米領ヴァージン諸島 |
バヌアツ |
オーストラリアのPCbCR制度では、特定の大規模な多国籍企業(国別報告義務のある親会社)と純オーストラリア国内グループで前年度の年間グローバル連結収入が10億豪ドル以上のもの(オーストラリア源泉の所得が1,000万豪ドル超というデミニミス除外が適用される)に対し、オーストラリアと特定の国・地域については国別、それ以外の国・地域については国別または集計ベースで特定の税務情報を公表することが義務付けられます。10億豪ドル(約6億5,000万米ドル、6億2,000万ユーロ)という適用基準は、欧州連合(EU)、米国をはじめ多くの国のCbCR基準額を大きく下回ります。
オーストラリアのPCbCR制度は世界的に最も包括的であり、2024年7月1日以降に始まる会計報告期間に適用され当該期間終了後12カ月以内での報告義務があります。適用初年度のPCbCRの提出期限は、12月決算企業の場合2026年12月31日、3月決算企業の場合、2027年3月31日となります。PCbCRは、オーストラリア政府のウェブサイトで公表され、公表手続は国税局長官が管轄します。PCbCR情報の一部またはすべてに関する公表義務の免除は、特定の区分または企業ごとに認められることがあります。報告遅延や報告不履行、そして重大なエラーが28日以内に修正されない場合には重大な罰則(現行為替レートで最大82万5,000豪ドル)が適用されます。PCbCR規則に関するさらなる情報は、2024年8月5日付EY Global Tax Alert「Australian public country-by-country reporting Bill progress update」(英語のみ)をご参照ください。
オーストラリア国税庁(ATO)は同規則に関する最初のウェブガイダンスを公表しており、更新される予定です:
上記に関連して、EY AustraliaはATOとの協議プロセスに参加しています。
企業グループが、オーストラリアだけでなく、特定の国・地域においても事業を展開している場合、国別の報告が求められるため、特定の国・地域リストは重要になります。それ以外の国・地域での報告は、集計ベースで実施されます。
現在は委任立法が適用されていますが、元に戻す場合は議会で審議されなければなりません(次回の議会は2025年2月4日に開始され、委任立法は却下の対象)。担当大臣は管轄区域を追加または削除して委任立法を修正できます。
オーストラリアのPCbCR制度の対象となる企業グループは、PCbCRの広範囲な規則に基づいた開示範囲を特定しなければなりません。これらの新たな報告義務を遵守するためのシステムを整備しておく必要があります。EUのCbCR指令など他のPCbCR制度も含め、網羅的に対応するために世界的なアプローチを構築する必要があります。
また、このPCbCRの対象となる企業では、取締役会の理解促進を図り、この報告と現在の環境・社会・ガバナンス(ESG)方針との整合性を確保するとともに、税の透明性が税務当局、企業規制当局(オーストラリア国内外)、投資家、短期売買目的の投資家、ジャーナリスト、非政府組織など幅広いステークホルダーに及ぼし得る影響に備える必要があります。
巻末注
EY税理士法人
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
味田 貴志 パートナー
大堀 秀樹 ディレクター
工藤 保浩 ディレクター
EY Australia, Japan Business Services
Patrick Giles-Jones JBS Oceania Tax Leader パートナー
井上 恵章 アソシエートパートナー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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