米国と中国が貿易協定に合意、米国商務省が航空機とジェットエンジンに関する調査を開始

  • 米国と中国は2025年5月12日に、双方の輸入貨物に対する追加関税措置の内容を見直し、同日より90日間にわたって、10%の追加関税は継続しつつも残りの部分の適用を停止することで合意しました。
  • この変更により、米国の中国から輸入される貨物の関税は30%の水準1に引き下げられます。
  • またこの発表とは別に、米国商務省は、通商拡大法232条に基づいて、商用航空機およびジェットエンジンの輸入に関する国家安全保障上の調査に対するパブリックコメントを募集することを発表しました。

2025年5月12日、米国と中国は共同声明をリリースし、直近の貿易交渉の結果として、2025年5月14日までに以下の措置を実施することについて発表しました。


<ジュネーブにおける米中経済貿易会議に関する共同声明>

共同声明によれば、米国は、2025年4月2日付の大統領令14257に基づく、香港とマカオを含む中国から輸入される貨物に対する相互関税の内容を改訂することに合意しました。この改訂により、90日間は10%の相互関税を維持し、それを超える税率の適用は一時的に停止します(背景については、2025年4月3日付EY Global Tax Alert「US imposes President's Reciprocal Tariff Policy against trading partners and ends duty-free treatment for low-value shipments from China」と2025年4月11日付EY Global Tax Alert「US suspends President Trump's Reciprocal Tariff Policy for 90 days, except for China」および2025年4月16日付 EY Japan税務ニュース「トランプ大統領、世界各国からの輸入品を対象とする相互関税の導入を発表―大部分につき90日間停止」を参照)。

米国は、301条関税、232条関税、およびフェンタニル危機の対応として国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課された20%の関税を含む、2025年4月2日以前に中国に対して課した全ての関税は維持する意向を示しています。これらの変更により、米国の中国からの輸入品に対する関税は90日間、30%の水準1に引き下げられます。

上記を受けて、中国では、2025年の国務院関税税則委員会の公告第4号に記載されている米国貨物に対する報復関税の料率を調整します。この調整により、90日間は10%の報復関税は維持し、さらに、2025年4月2日以降に米国の関税政策に対する報復として実施した非関税措置を停止または廃止します。

米国税関・国境保護局(CBP)は、Cargo Systems Messaging Service(CSMS)を通じて、中国貨物に適用される関税の一時的な調整に関する情報とガイダンスを近々提供する予定です。さらに、米国と中国は、経済および貿易に関する継続的な協議を行う公式なメカニズムを立ち上げる見込みです。


<商業航空機とジェットエンジン、および商業航空機とジェットエンジンの部品>

2025年5月13日発行の連邦官報通知において、米国商務省は、2025年5月1日に開始した調査に対するパブリックコメントの募集を発表しました。この調査は、通商拡大法232条に基づいて、商用航空機およびジェットエンジン、これらの部分品の輸入が米国の国家安全保障に与える影響を調査するために実施されます。なお、すでに232条による課税が行われている自動車・自動車部品、鉄鋼・アルミ製品の他に、銅、木材、半導体、医薬品、重要鉱物に対しても、同様に調査が実施されています。


巻末注

  1. 相互関税(10%)に加えて、IEEPAに基づくフェンタニルの流入防止を目的とした追加関税(20%)が課せられる。この他に、通商法301条に基づく中国原産品への関税、通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ製品、自動車・自動車部品に対する関税が課せられる。
  2. 同上


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