EU、米国関税に対する対抗措置を発表するも実施を一時停止

欧州連合(EU)は、2025年4月14日、鉄鋼およびアルミニウム製品に対する米国関税への対抗措置を発表しましたが、米国当局と欧州委員会が交渉を続けるために、対抗措置の実施を90日間(2025年7月14日まで)一時停止することを決定しました。EUが2025年4月15日および2025年5月16日に適用予定だった追加関税の実施は、2025年7月15日に延期されました。企業は、これらの関税措置によって影響を受ける可能性のある貿易取引を継続的に監視する必要があります。


背景

2025年4月9日、米国のトランプ大統領は、2025年4月2日に発表した相互関税政策のほとんどについて90日間の停止を発表しました。2025年4月5日から適用されている全ての米国への輸入品に対する10%の追加課税は維持されますが、中国に対する関税を除き、国別の追加課税は90日間停止されます1。さらに、半導体および関連貨物、医薬品はトランプ大統領の相互関税政策から免除されています2。これらの一時停止は、EUを含む全ての貿易相手国からの鉄鋼、アルミニウム、自動車製品の輸入に対する米国の関税には影響しません。


EUの対抗措置

EUは、米国による鉄鋼およびアルミニウム製品に対する追加関税に対抗措置を発表しましたが、米国当局と欧州委員会が交渉を続けるために、対抗措置の実施を90日間(2025年7月14日まで)停止することを決定しました。

EUの対抗措置は、以下の通り段階的に実施される予定でした。

  • 2025年4月15日から、法律に記載されたさまざまな製品に対して10%および25%の追加関税を課す。これには、2018年の対抗措置で対象とされていたバイク、ボート、特定の繊維製品などが含まれる一方で、2018年と比較してバーボンやその他のアルコール飲料はリストから除外する3
  • 2025年5月16日から、1,300以上のCombined Nomenclature(以下、CN)コード(鶏肉、肉、卵、農産物、油、プラスチック、革製品を含む)を対象とし、2018年の対抗措置でカバーされていなかった製品に対する25%の追加関税を課す。
  • 2025年12月1日から、5つのCNコード(例:アーモンドおよび特定の大豆)に対して25%の追加関税を課す。

EUが対抗措置の適用を一時停止する決定を下したため、2025年4月15日および2025年5月16日の追加関税の実施は、2025年7月15日へ延期されました。さらに、2025年7月15日には、米国のライター、家具の金具、トランプカードに対して2020年に採用された追加関税の一時停止が終了します。

EUは、並行して、米国の関税に対するさらなる対抗措置の準備を続けます。

企業に求められる対応

企業は、米国、EU、またはサプライチェーンに関係する可能性のある国が採用した関税措置によって影響を受ける貿易取引があるかどうかを、継続的に監視する必要があります。

その影響評価を契機に、影響を受ける取引に対して、移転価格、価格設定、契約条項、サプライチェーンルート、特別な関税手続きの利用などの具体的なアクションの検討が可能になります。

企業は、関税分類、関税評価、原産地に関する法律を正しく適用しているかを評価するために、国際貿易の実績を見直し、戦略的かつ積極的に関税の動向を追う必要があります。また同時に、税務ポジションや商流および物流面での利益を考慮して最適化の可能性を模索することが求められます。


巻末注

  1. 詳細については、2025年4月11日付EY Global Tax Alert「US suspends President Trump's Reciprocal Tariff Policy for 90 days, except for China」および2025年4月16日付EY Japan税務ニュース「トランプ大統領、世界各国からの輸入品を対象とする相互関税の導入を発表―大部分につき90日間停止」を参照。
  2. 詳細については、2025年4月14日付EY Global Tax Alert「US exempts certain electronic products from tariffs under President Trump's Reciprocal Tariff Policy」を参照。
  3. 背景については、2018年6月1日付 EY Global Tax Alert「US suspends tariff exemptions on steel and aluminum for EU and NAFTA countries; EU, Canada and Mexico to impose retaliatory duties on a wide range of products」を参照。


お問い合わせ先

EY税理士法人

大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです