中国における増値税法実施条例(意見募集稿)の主な変更点に関する検討

2024年12月25日、「中華人民共和国増値税法」(以下「増値税法」)は第14期全国人民代表大会常務委員会で可決の上、正式に公布され、施行は2026年1月1日からとされています。2025年8月11日、財政部・国家税務総局は「中華人民共和国増値税法実施条例(意見募集稿)」(以下「意見募集稿」)を公表し、広く社会に向け意見を募集しました。これは増値税法の円滑な実施を確保し、租税法律主義をより着実に実現しようとするものです。

「意見募集稿」は、総則、税率、納付税額、税収優遇、徴収管理、附則の6章に分かれ、合計57条で構成されています。主に増値税法に関する規定をさらに細分化・明確化し、国務院に委ねられた事項を具体的に規定するとともに、現行の増値税法規との整合が図られています。「意見募集稿」の主な変更点及び注目すべき点は下記の通りです。


目次

課税範囲と定義の全面的な法定化
越境サービスに関する規定と国際的な付加価値税の取り扱いとの整合
売上税額に関する制度のシステム整備
仕入税額控除政策の厳格化
その他の重要制度の改善
納税者の身元管理
租税回避防止条項
結語


課税範囲と定義の全面的な法定化

「意見募集稿」第2条では、貨物、サービス、無形資産、不動産の法的な定義を明確にし、サービスを交通運輸、郵便、電気通信、建築、金融、生産生活サービスに細分化しています。そのうち、「生産生活サービス」には、財税[2016]36号文における現代サービス業と生活サービス業の内容が含まれます。具体的には下記の通りです。

サービス種類

36号文

「意見募集稿」における規定

現代サービス

研究開発及び技術サービス、情報技術サービス、文化クリエイティブサービス、物流付帯サービス、リースサービス、鑑定・証明コンサルティングサービス、ラジオ・映画・テレビサービス、ビジネスサポートサービス及びその他の現代サービスを含む。

「生産生活サービス」に統合されている。

生活サービス

文化・スポーツサービス、教育・医療サービス、旅行・娯楽サービス、飲食・宿泊サービス、住民向け生活サービス及びその他の生活サービスを含む。


越境サービスに関する規定と国際的な付加価値税の取り扱いとの整合

「意見募集稿」第4条では、サービス、無形資産が中国国内で消費される場合について下記の通り規定されています。
(一)国外の組織または個人が、国内の組織または個人にサービスや無形資産を販売する場合。国外の現地で消費されるサービスを除く。
(二)国外の組織または個人が販売するサービスや無形資産が、中国国内の貨物、不動産、自然資源と直接関連している場合。
(三)国務院の財政、税務主管部門が規定するその他の状況。

「意見募集稿」では、増値税の消費地原則をさらに強化し、中国国内の組織及び個人が「国外の現地で消費する」場合の増値税の取り扱いが明確にされています。また、「国内の貨物、不動産、自然資源」などとの関連を参照することにより、中国国内消費に該当するか否かが判定されます。これは国際的な付加価値税の実務と整合し、中国の実務慣行とも合致しています。

「意見募集稿」第9条では、中国国内の組織及び個人による、一定のサービスや無形資産の越境での提供につき、税率をゼロとする範囲が明確にされています。
(一)国外組織向けに販売され、完全に国外で消費される研究開発サービス、契約エネルギー管理サービス、設計サービス、放送・映画テレビ番組(作品)制作及び発行サービス、ソフトウェアサービス、電気回路設計及び試験サービス、情報システムサービス、業務プロセス管理サービス、オフショアサービスアウトソーシング業務。
(二)国外組織に譲渡され、完全に国外で消費される技術。
(三)国際輸送サービス、航空宇宙輸送サービス、対外加工修理サービス。

上記の規定は、基本的に36号文の付属文書4及び「営業税を増値税に代えて徴収する越境課税行為の増値税免税管理弁法(試行)」(国家税務総局公告2016年第29号)の規定と合致していますが、譲渡された技術が完全に国外で消費される条件を満たす場合にのみゼロ税率が適用されることが強調されています。しかしながら、「意見募集稿」では「完全に国外で消費される」条件に関して詳述していないことから、新たな関連規定等が公布されるまでは、既存の規定に従って引き続き実施することが考えられます。越境サービスを展開する企業には、契約条項・履行場所・書証の保存が重要と思慮されます。


売上税額に関する制度のシステム整備

混合販売に関する判定基準の細分化

「増値税法」では、混合販売を「納税者において、1つの課税取引下で2つ以上の税率に関連する状況が生じた場合、課税取引の主要業務に応じて税率を適用する」ことが規定されています。

今回の「意見募集稿」第10条では、主要業務に基づき、税率、徴収率を適用する1つの課税取引は、下記の条件を同時に満たす必要があると規定されています。
(一)1つの課税取引に、2つ以上の異なる税率、徴収率に関わる業務が含まれている。
(二)業務間には明確な主従関係がある。主要業務は主体的な地位を占め、取引の実質と目的を反映している。付随業務は主要業務の必要な補充であり、主要業務の発生を前提とする。

「混合販売」は、中国の増値税税制及び徴収管理の実務における難点の1つです。現在の徴収管理の実務では、税務機関は主に、取引の各構成要素がお互いに不可欠なものであるか、分割できるか否かを基準に判断します。通常の場合、販売者は1つの取引につき1つの契約書または注文書に基づいて行うため、全ての構成要素の分割は難しく、いずれかの構成要素が欠けると取引目標を達成することはできません。取引は全体の見積もりであり、各部分の価格が別々に計算されることはありません。「意見募集稿」の規定は、どのように「1つの課税取引」を確認するのかの原則を明確にしていますが、実務においては、納税者と税務機関の双方で業務の実質について深くコミュニケーションする必要があると考えられます。

また、1つの取引の主要業務を判定する基準は非常に多様であり、商業実質の分析、取引の各構成要素のコストまたはその他の財務指標の比率、取引の各構成要素を提供する際のサービスの時間などが含まれます。最近、北京税務当局が公表した事前裁定のケースでは、A社は北京でデジタルスマートデバイスを通じて食器洗浄サービスを提供する予定ということで、サービスに係る原価費用の割合が高いことを理由に、税務機関へ現代サービスとして6%の増値税率を適用することを申請しました。税務機関は、A社のスマート食器洗浄サービスは清掃サービスの基準を満たしており、6%の増値税率が適用されるべきであると認定しました。併せて、税収政策の適用が正確であることを確保するために、事業経営及び原価費用の推移の状況を報告することを要求しました。この事例から、税務機関は実務において、原価費用の割合に注目する傾向があることが思慮されます。

今後、詳細な徴収管理方法や実務執行運用が公表され、一般的な事業経営モデルにおける判断基準のさらなる明確化が期待されます。


みなし課税取引

「増値税法」第5条により、下記のいずれかの状況がある場合は、課税取引と見なし、本法の規定に従って増値税を納付する必要があります。
(一)組織及び個人工商業者が自社生産または委託加工した貨物を集団福利または個人消費に使用する。
(二)組織及び個人工商業者が、貨物を無償で譲渡する。
(三)組織及び個人が無形資産、不動産または金融商品を無償で譲渡する。

現行の増値税法規に比し、「無償で提供するサービス」(例:無償貸借、無償賃貸など)、「総・分支機構の貨物移送」、「販売代理貨物」は、いずれも「増値税法」におけるみなし課税取引の範囲には明確に含まれていません。

ただし、サービスの無償提供はみなし課税取引の対象範囲に含まれていないものの、合理的な商業目的を欠く場合には、租税回避防止条項が適用されるリスクに直面する可能性があること(詳細は後述の租税回避防止条項の部分を参照)には留意が必要です。

また「意見募集稿」では、みなし課税取引の明確な範囲の詳述はされていないことにも留意すべきです。みなし課税取引は多くの複雑な事業経営モデルに関連することから、今後、政策制定部門からのより詳細な徴収管理方法と実務執行運用の公表を通じ、各事業経営モデルにおける具体的な判定基準が明確化され、納税者により明確なコンプライアンス上の指針が提供されることが期待されます。

「意見募集稿」第42条では、みなし課税取引の納税義務の発生時点の認定を明確にし、「みなし課税取引が完了した当日とは、貨物の発送当日、金融商品の所有権移転当日、無形資産の譲渡完了当日または不動産権利の変更当日を指す」と規定されています。この規定は、みなし課税取引に対する税務処理に明確な時点を提供することを目的としています。

また、「意見募集稿」では輸出業務に関して、越境の場合の納税義務発生時点に関する下記のような特別な取り扱いも規定されています。

  • 納税者の輸出貨物に税金の還付または免税が適用される場合において、輸出通関の日から36カ月以内に税金の還付または免税の申告が行われない時は、中国国内における貨物販売と見なされる。
  • 納税者が越境でサービスや無形資産を販売し、税金の還付または免税が適用される場合において、納税義務の発生日から36カ月以内に税金の還付または免税の申告が行われない時は、中国国内におけるサービスや無形資産の販売と見なされる。

したがって、企業は輸出業務において、輸出還付及び免税の申告期限を厳格に管理する必要があり、一定の期限を過ぎると中国国内販売と見なされるため、追加納税が生じることになります。


仕入税額控除政策の厳格化

固定資産・無形資産・不動産(以下「長期資産」と総称)の仕入税額控除に関する新規定

「営業税から増値税への徴収変更試行に関する実施弁法」(36号文付属文書1)及び「財政部・税務総局による固定資産の賃貸に関する仕入税額控除等の増値税政策に関する通知」(財税[2017]90号)などの文書に基づき、納税者が固定資産、無形資産(その他の持分無形資産を除く)、不動産を購入した場合及び固定資産、不動産を賃貸した場合において、一般課税方式の課税項目に使用するだけではなく、簡易課税方式の課税項目、増値税免税項目、集団福利または個人消費にも使用する時は、その仕入税額は売上税額から全額控除することができます。しかしながら「増値税法」では、中国の増値税制度に特有の優遇規定が削除され、「意見募集稿」第26条では、下記の通り新たな規定が設けられています。

  • 仕入税額控除の可否は長期資産の用途により決定される。資産が一般課税方式の課税項目に専ら使用されている場合、対応する仕入税額は全額控除することができる。簡易課税方式の課税項目・増値税免税項目・非課税取引・集団福利・個人消費(以下「5種類の控除不可項目」と総称)に専ら使用されている場合、対応する仕入税額は売上税額から控除できない。
  • 混合用途資産の仕入税控除には500万人民元限度額ルールが導入される。一般課税方式の課税項目と5種類の控除不可項目の両方に使用される(以下「混合用途」)場合、取得価額が500万人民元を超えない単一の長期資産については、対応する仕入税額を売上税額から全額控除できる。取得価額が500万人民元を超える単一の長期資産については、購入時に仕入税額を全額控除し、混合用途での期間中は、償却年数に基づいて、5種類の控除不可項目に対応する売上税額から控除できない仕入税額を計算し、毎年調整する必要がある。
  • 用途を変更する場合には、変更期の期首簿価に基づいて控除可能及び控除不可の金額を確定する必要がある。長期資産につき、仕入控除が可能な項目と控除不可項目の間で用途が変更された場合、変更期の期首簿価に基づいて控除可能及び控除不可の仕入税額を計算する。

現行の増値税法規に比し、「意見募集稿」で提示されている長期資産に係る仕入控除の仕組みには、3つの影響があると考えられます。

  • 固定資産に係る仕入増値税が取得時に一括して全額控除され、その後、資産が混合用途に変更された場合、取得価値500万人民元以下の長期資産の仕入税額控除は調整されない。一定金額以下の長期投資に対する政策的な配慮が示されている。
  • 取得価額500万人民元を超える混合用途の長期資産は、現行の「全額控除」方式から「用途別区分調整」方式に変更される。異なる用途に使用される資産に係る増値税の貢献度をより正確に反映することにより、税収中立の原則を強化している。
  • 「毎年調整」の仕組みが導入され、企業には長期的な用途の追跡と税額調整システムの構築が要求され、企業は税務管理のさらなる精緻化が必要となる。

現行の長期資産に係る仕入増値税控除の仕組みは、国際的な資本性物品の仕入税控除に関する一般的な慣行に合致しており、かつ中国の状況も十分に考慮されています。中国は長年にわたり、企業が長期資産への投資を増やし、企業の長期資産に係る技術革新と更新を促進・奨励するため、混合用途の固定資産に係る仕入増値税に対して全額控除の税制優遇措置を提供しています。今回の増値税の法制化を契機として、長期資産に係る仕入増値税控除には500万人民元の限度額ルールを導入し、国際的な整合性を考慮するとともに、政策制定部門は企業の実務上の困難さも十分に考慮しつつ、企業の投資を引き続き支援する姿勢を示しています。ただし上記の実施に当たり、企業は固定資産の用途を長期的かつ正確に管理することが求められ、税収コンプライアンス上の新たな課題に直面することになります。今までの「一括判断、長期適用」のシンプルな方式に比べて、今回の新しい仕組みに対し企業は以下の能力がより必要となります。

  • より精緻な資産管理能力
    • 資産の全ライフサイクルをカバーする追跡システムの構築
    • 資産の用途に関する動的な管理と記録の実現
    • 科学的かつ合理的な用途配分基準と計算方法の確立
  • 複雑な税務計算能力
    • 償却年限に基づく調整の計算ロジックの把握
    • 年間レビューと調整の実務プロセスを確立
    • 複数の業務状況における税額配分問題の処理

また、政策制定部門が今後、さらに詳細な長期資産に係る仕入税額控除に関する具体的な取り扱いを提示することにより、企業が実務上で注目する内容の明確化が期待されます。例えば以下の点が考えられます。

  • 長期資産の減価償却、償却年限は会計処理に基づくのか、最低の減価償却、償却年限の要求があるのか否か
  • 長期資産の混合用途期間中、どのように毎年調整を行うのか、1年未満の場合は月ごとに調整が必要か、資産処分が発生した場合にどのように処理するのか
  • 長期資産の500万人民元の限度額の区分基準は会計処理に基づくのか、発票に基づくのか

長期資産に係る増値税仕入控除政策の重大な調整と実務の複雑性を考慮すると、今回の制度の実施に対しては移行期間の設定とともに、企業における会計と税務処理のルールの明確化、及び情報管理システムの更新を通じ、より科学的な長期資産の税務管理を実現できるようにすることが期待されます。


非正常損失に係る仕入税額控除不可の政策は基本的に継続、詳細な改正点には留意が必要

「増値税法」第22条第3項では、非正常損失項目に対応する仕入税額はその売上税額から控除できないことが規定されており、「意見募集稿」第19条でも非正常損失の定義がさらに明確にされています。現行政策と比しこの条項は基本的には36号文の表現を踏襲していますが、詳細な点に留意する必要があります。主な比較は以下の通りです。

36号文附属書1

「意見募集稿」における規定

第27条 次の項目の仕入税額は、売上税額から控除できない。
……
(二)非正常損失の購入貨物、及び関連する加工、修理、修配サービス及び交通運輸サービス。
(三)非正常損失の製品、完成品に消費された購入貨物(固定資産を除く)、加工、修理、修配サービス及び交通運輸サービス。
(四)非正常損失の不動産、及びその不動産に消費された購入貨物、設計サービス及び建設サービス。
(五)非正常損失の不動産の建設工事に消費された購入貨物、設計サービス及び建設サービス。納税者が新築、改築、増築、修繕、装飾する不動産は、全て不動産の建設工事に属する。
本条第(四)項、第(五)項において商品とは、不動産の実体を構成する材料及び設備を指し、建築装飾材料と給排水、暖房、衛生、換気、照明、通信、ガス、消防、中央空調、エレベーター、電気、スマートビル設備及び関連施設を含む。
 

第28条
……
非正常損失とは、管理不善による貨物の盗難、紛失、カビ変質、及び法律及び規則に違反による貨物また不動産が没収、廃棄、撤去の状況を指す。

第19条 増値税法第22条第3項で言う「非正常損失」とは、管理不善による貨物の盗難、紛失、カビ変質、及び法律及び規則に違反による貨物また不動産が没収、廃棄、撤去される状況を指す。
増値税法第22条第3項において非正常損失の項目とは、以下の状況が含まれる。
(一)非正常損失に関連する購入貨物、及び関連する加工、修理、修配サービス及び交通運輸サービス。
(二)正常損失の製品、完成品に消費された購入貨物(固定資産を除く)、加工、修理、修配サービス及び交通運輸サービス。
(三)非正常損失の不動産、及びその不動産に消費された購入貨物及び建設サービス。
(四)非正常損失の不動産の建設工事に消費された購入した貨物及び建設サービス。納税者が新築、改築、増築、修繕、装飾する不動産は、全て不動産の建設工事に属する。
本条第二款第三項、第四項において貨物とは、不動産の実体を構成する材料及び設備を指し、建築装飾材料と給排水、暖房、衛生、換気、照明、通信、ガス、消防、中央空調、エレベーター、電気、スマートビル設備及び関連施設を含む。

本条例において固定資産とは、使用期間が12カ月を超える機械、機器、輸送工具及びその他の生産・経営に関連する設備、工具、器具などの有形動産を指す。

上記の条項を比較すると、「意見募集稿」は元の36号文における「非正常損失」の各種の状況の大部分を踏襲し、具体的な状況を条例で規定することにより、今後の法規での仕入税の管理がより厳格化されることを示しており、企業は仕入税の管理により留意することが要求されます。貨物や不動産などの項目は、よりリアルタイムでの管理が求められ、特に生産、小売、重工業企業においては、資産の種類が非常に多いことから、「管理不善」による非正常損失に該当するか否かを詳細に識別し判断する必要があります。また、「意見募集稿」では「非正常損失の不動産」に関する表現から不動産関連の設計サービスは除外されていることから、今後不動産プロジェクトに関連する非正常損失が発生した場合において、控除対象から除外する仕入税額に不動産関連の設計サービスの仕入税額が含まれているか否かに注意が必要です。


貸付サービスの控除対象外規定の明確化

「増値税法」第22条に基づき、納税者の控除対象外仕入税額には以下の内容が含まれます。

  • 簡易課税方法が適用される項目の仕入税額
  • 増値税が免税される項目の仕入税額
  • 非正常損失となる項目の仕入税額
  • 集団福利厚生または個人消費のために購入・使用する物品、サービス、無形資産、不動産の仕入税額
  • 飲食サービス、住民の日常サービス、娯楽サービスを購入し、直接消費のために使用した場合の仕入税額
  • 国務院が規定するその他の仕入税額

36号文の規定と比較すると、貸付サービスに係る控除対象外規定は「増値税法」においては明確にされていませんでした。この点に関して、今回の「意見募集稿」第20条では、「納税者が貸付サービスを購入し、ならびに貸付先に対して当該貸付に直接関連する投融資顧問料、手数料、コンサルティング料等の費用を支払った場合、対応する仕入税額は売上税額から控除できない」ことが提示されています。

上記の規定は、控除対象外の範囲に、貸付に直接関連する投資及び融資顧問費・手数料・コンサルティング費用等が含まれることをさらに明確化しています。この部分は36号文の現行規定と一致しており、金融業務への影響を包括的に考慮したことが反映されていると言えます。


非課税取引と仕入税額控除

「意見募集稿」第22条では、納税者が「増値税法」第6条に規定される以外の非課税取引に用いる貨物・サービス・無形資産・不動産を購入した場合、対応する仕入税額は売上税額から控除してはならないと提示されています。一方、「増値税法」第6条は増値税非課税項目が以下の4種類に分類されることを列挙しており、包括規定は設定されていません。
(一)従業員が雇用企業または雇用者に提供した賃金・給与を取得するためのサービス
(二)徴収した行政事務に関する費用、政府運用資金
(三)法律の規定により、取得した土地収用のための補償
(四)取得した預金金利

現行の増値税法と比較すると、今回の「意見募集稿」は仕入税額控除対象の範囲を狭めており、これは増値税の非課税対象の取引に従事する企業の仕入税額控除に直接的な影響を及ぼす可能性があります。


混合用途における控除対象外仕入税額の年間精算責任主体の変更

「意見募集稿」第23条では、混合用途における控除対象外仕入税額の算定方法を規定し、企業に年度精算の実施を要求しています。第23条の具体的な規定は以下の通りです。

  • 一般納税者が仕入れた貨物(固定資産を除く)やサービスを、簡易課税方法の課税対象項目や増値税免除項目に使用した場合において、区分できない控除対象外仕入税額については、当期の控除対象外仕入税額を以下の式に従って算定する。

    当期の控除対象外仕入税額=当期の区分できない総仕入税額×(当期の簡易課税方法による課税対象項目の売上高+当期の増値税免除項目の売上高)÷当期の総売上高

納税者は、上記の計算式に基づき各期の控除対象外仕入税額を算定し、翌年1月の納税申告期間中に年間の集計データに基づいて精算調整を実施する必要があります。

この規定における控除対象外仕入税額の計算式は現行の税法と一致していますが、精算調整の責任主体に明確な変更点があります。「営業税に代えて増値税を徴収する試験の全面的な実施の通知」(36号文)添付資料1「営業税に代えて増値税を徴収する試験の実施方法」第29条では、主管税務機関が上記計算式に基づき年度データを基に控除対象外仕入税額の精算調整を実施することができると規定されています。現行法規では精算調整の責任主体は税務機関であり、実際にはごく一部の企業のみが自主的に年間精算調整を実施しています。今後の法規要件に基づき、企業は税務申告において積極的に精算調整の責任を遂行することが求められるようになります。企業においては以下の点が推奨されます。

  • 増値税の精算調整プロセスを確立し、控除対象外仕入税額の年度計算を調整する。
  • 日常管理において、仕入税額の用途を可能な限り明確に区分し、原価・費用に係る仕入税額の全ライフサイクル管理システムを構築する。調達プロセスから用途の確認を導入するとともに、会計処理や発票での仕入控除の段階でも同様の用途確認を行い、精算調整段階での多額の調整を回避する。
  • 確実に区分できない仕入税額(例:家賃、事務用品など)について、管理を適切に実施し、税務申告における精算調整と財務処理の一致性を確保する。


その他の重要制度の改善

増値税優遇政策の体系的な整理に関する提示

「意見募集稿」は現行の36号文添付資料3「営業税に代えて増値税を徴収する試験の過渡政策の規定」及び「増値税暫定条例」などの関連免税条項に比べ、以下の内容を含む複数の調整を提示しています。

免税項目の種類

現行政策の主要な内容

「意見募集稿」
提案規定内容
 

変更の説明

農業関連

農民専門合作社が本社員の生産する農産物を販売する場合、農業生産者自身が生産した農産物を販売するものと見なし、増値税を免除する

農業生産者を農業生産に従事する個人及び団体と定義する

「意見募集稿」には明確に記載されていない

医療サービス

医療機関が提供する医療サービス

医療機関が提供する医療サービスは維持されるが、美容医療機関を明確に除外する

範囲を明確化し、適用範囲を縮小する

金融サービス

同業間取引、農家向け小口融資の利息、国債・地方債の利息など多数の項目

免税条項に反映されていない

「意見募集稿」には明確に記載されていない

技術サービス

技術譲渡、技術開発及び関連コンサルティングサービス

農民専門合作社

本合作社員への農業用フィルム、種子、化学肥料などの農業資材の販売

学生勤工倹学

学生勤工倹学に提供するサービス

特に注意すべき点として、「意見募集稿」第28条は増値税法に規定される医療機関の免税政策について重要な明確化を提示しています。この条項では、「増値税法」が指す医療機関が提供する医療サービスの免税範囲は「関連規定に基づき医療機関の営業資格を持つ機構(軍隊、武警部隊の各級の各種医療機関を含む)を指しており、美容医療機関(美容医療診所含む)は含まない」ことを明確に規定しています。

この提案は、法規面で美容医療機関が消費税の免税対象外であることを明確化し、美容医療業界の増値税処理に関する実務上の紛争の解決につながる可能性があります。この条項が最終的に採用・施行された場合、美容医療業界は税務負担の再計算、価格戦略の調整、増値税発票の管理制度の改善などを含む税務コンプライアンス戦略を再評価する必要があります。

同時に、「意見募集稿」は優遇政策に対するコンプライアンスと管理要件を強化しています。「意見募集稿」第35条は、税制優遇政策のコンプライアンス要件について明確な規定を設けることを提示しており、増値税優遇政策を享受する納税者は単独計算の要件を満たす必要があることを強調するとともに、真実ではない貨物等の違法・不正な手段による優遇を取得することを禁じています。納税者がさまざまな手段を用いて違法・不正に増値税優遇政策を享受した場合、優遇政策の対象外であった期間に発生した税金は再徴収され、脱税に該当する場合は関連法規に従って処分されます。

しかしながら上記の条項は、税務当局が不当に取得された租税優遇を再徴収する権限を付与することを提示しているものの、その追徴が「税収徴収管理法」に規定されている3年または5年の追徴期間制限(脱税場合を除く)に適用されるか否かは、依然として明確ではありません。

上記の分析で「意見募集稿」に明記されていない現行の免税政策が、「増値税法」第25条の権限付与の枠組みに基づき特別優遇政策として継続されるのか、あるいは廃止・調整されるのか、及び追徴期間などの執行詳細については、企業などにとって注目される論点となります。納税者が安定して予測可能な税制度の環境が提供されるための具体的な政策が、今後公表されることが期待されます。


取引証憑

「増値税法」第7条に基づき、増値税額は、国務院の規定に従って取引証憑に別途記載される必要があります。これに関して、「意見募集稿」第5条はこれに対する具体的な規定が提案されており、納税者が増値税専用伝票を発行する際には売上額と増値税額を別々に明記すべきことを明らかにしています。

同時に、「意見募集稿」第39条は、伝票発行の基本要件と制限条件を規定することを提示し、特に自然人や増値税免税対象取引などに対しては、増値税専用伝票を発行してはならないことを明確化しています。これらの条項の設定は、完全な取引証憑管理体系を構築し、増値税控除チェーンの規範的な運営に制度的な保証を提供します。


納税者の身元管理

自然人の身元確認

「意見募集稿」第7条は、「自然人はいわゆる小規模納税者に属する」と規定することを提示しています。この規定により、自然人は小規模納税者に直接限定され、一般納税者として申請することはできません。

この規定は、現行政策を法律的に確認するものです。現行の「増値税暫定条例実施細則」第29条は「年間課税販売額が小規模納税者基準を超えるその他個人は小規模納税者として課税する」と明確に規定しています。「増値税一般納税者資格認定管理弁法」(国家税務総局令第43号)第4条も「自営業者以外のその他個人納税者は一般納税者資格認定の申請を受けない」と規定しています。したがって、「意見募集稿」におけるこの条項は、実質的に現行規定の継続を明確化したものです。

一方、現行の資源リサイクル企業における逆伝発票発行やインターネットプラットフォーム企業による代行申告などの政策においては、年間売上高が500万人民元を超える個人に自己申告を要求しています。しかしながら、これらの要件は主に税務徴収管理上の自然人申告方法に関する要件に基づくものであり、納税者識別とは矛盾しません。当該自然人には自己申告が必要であり、小規模納税者としての徴収率に基づき納税されます。


一般納税者の資格の不可逆性の規定

「意見募集稿」第38条は、「納税者が一般納税者として登録された後は、小規模納税者に転じることはできない」ことを提示しています。この規定は、増値税納税者の身元管理制度における重大な調整を示しています。この規定は、現行の「小規模納税者の基準の統一及び増値税に関する若干の問題に関する公告」(国家税務総局公告2018年第18号)で条件を満たす一般納税者による小規模納税者への再登録を認めている規定とは明らかな差異があります。

また、「意見募集稿」第38条は、納税者の身元管理に関して2つの重要な変更を提示しています。

  • 明確な転換時点を設定するが、罰則措置は廃止する。「意見募集稿」は、基準を超える納税者が「主管税務機関において一般納税者登録を処理し、小規模納税者基準を超えた当期から一般税額計算方法を用いて増値税の計算と納付を行わなければならない」ことを明確に提示している。この時点に関する要件は、現行実務(通常は翌月)よりも厳格である。ただし現行の「増値税暫定条例実施細則」第34条に規定される、登録手続きを期限内に完了しなかった場合に対する罰則規定は廃止されている1
  • 特定主体の選択権を廃止する。現行政策において「小規模納税者基準を超過しているが課税対象活動が頻繁に発生しない単位及び個人事業主は、小規模納税者として課税されることを選択できる」との柔軟な規定は、「意見募集稿」から削除された。

上記の重要な変更は、季節的な事業活動や偶発的な取引を行う納税者に重大な影響を与える可能性があり、関連する主体は新規の要件を事前に把握し、税務コンプライアンスの準備を整えるべきです。


租税回避防止条項

「意見募集稿」第56条は、増値税法規面で初めて一般的な租税回避防止条項を導入し、「納税者が合理的な商業目的を持たない取引を実施することにより、増値税税額の減少、免除、納付遅延、または増値税還付税額の増加や早期化を行った場合、税務機関は合理的な方法に基づき調整を行う権利を有する」ことを提案しています。この条項の設立は、増値税における租税回避防止制度の重大な完備を示し、税務機関が複雑な税務計画安排に対処するための明確な規制基盤を提供します。企業所得税法において既に確立されている一般的な租税回避防止条項と比較すると、増値税分野における租税回避防止規定は従来、主に各種の具体的政策文書に分散し、統一的な法規枠組みを欠いていました。今回の意見募集稿における租税回避防止条項の導入は、税収の公平性と増値税制度の完全性の維持に寄与するだけでなく、企業の税務コンプライアンス管理に対しより高い水準を求めていると言えます。


結語

「増値税法」の公表により、中国の増値税制度は正式に法制化されます。「中華人民共和国増値税法実施条例」は重要な関連法規として、その正式公表後、法律条文の具体的な実施のための運用指針となります。

「意見募集稿」は基礎的な制度枠組みを明確にすると同時に、実務上の詳細については依然として多くの点につき明確化が必要です。「意見募集稿」は現在公開意見を募集中の段階で、企業及び納税者は2025年9月10日までに規定の経路と方法に基づき、実務経験を踏まえた建設的な意見を提出し、増値税制度の整備を共同で推進することができます。

弊社は「増値税法実施条例」及びその他の関連文書の進展状況を注視し、企業が政策策定部門に対して政策的意見と提案をフィードバックすることを積極的に支援するとともに、増値税法の政策調整が企業の現行の事業、財務、税務等に与える影響を分析することを支援してきました。長期にわたり税制政策の研究に専念する専門チームとして、私たちは関係各方面と協力し、ともに消費税の法制度化時代を切り開いていくことを期待しています。


巻末注

  1. 「増値税暫定条例実施細則」第34条に基づき、納税者の販売額が小規模納税者基準を超過した場合において、一般納税者認定手続きを申請しなかった時は、販売額に従い増値税税率を適用して納税するべき税額を計算しなければならず、仕入税額を控除することも、増値税専用伝票を使用することもできません。ただし、年間課税販売額が小規模納税者基準を超過するその他の個人、及び非企業単位、課税行為が頻繁に発生しない企業が小規模納税者としての納税する場合は除外されます。

お問い合わせ先

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川島 智之 パートナー
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※所属・役職は記事公開当時のものです