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2025年10月31日、経済協力開発機構(OECD)は、相互協議(MAP)に関する統計を公表しました。それによると、2024年の米国のMAPプログラムにおける継続中の事案数は、移転価格事案についてはわずかに減少しましたが、移転価格以外の事案については増加しました。米国のMAPプログラムは、合計290件の事案を終了し(2023年の245件から増加)、329件の事案を新たに開始しました(2023年の247件から増加)。
2024年の統計は、OECDの第7回「税の確実性の日」1で公表されました。また、同イベントで、OECDは2024年のMAPおよびAPAアワードを発表しました。
2024年のMAP統計には、米国を含む、税源浸食と利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みの141の参加国・地域からの情報が含まれています。2024年のデータでは、世界中のほぼ全てのMAP事案が取り扱われています。2024年の移転価格事案と「その他」事案(源泉徴収、居住者、恒久的施設、特典制限など)については、以下のデータポイントを含む統計データが提供されています。
2024年のMAP統計には、個々の国・地域が各締約国と協議したMAP事案数も含まれています。さらに、主要指標に関する各報告国の実績は、OECDの対話型ツールを通じて比較することもできます。
MAP統計では、移転価格事案と「その他」事案に区別されます。移転価格事案は、関連会社間の利益配分の算定または恒久的施設への利益の帰属のどちらかに関連しています。移転価格事案でないMAP事案は全て「その他」事案として整理されます。また、MAP統計の報告では、2016年1月1日以前に受理された事案と2016年1月1日以後に受理された事案に区別されます。2016年12月31日より後に包摂的枠組みに参加した国・地域について、MAP統計では、当該国・地域が包摂的枠組みに参加した年の1月1日より前に受理された事案とそれ以降に受理された事案が区別されます。
対話型ツールを使用すると、利用者は2024年の両タイプの事案における特定の国・地域の実績を比較することができます。比較は以下の7つの主要指標に基づいています。
利用者は、指標を選別し、国・地域グループを選択することにより、検索方法をカスタマイズすることができます。
2024年と2023年の米国MAPプログラムに関する主な統計表の項目の比較を以下に示します。
表1 終了した事案数:2023年と2024年の比較
| 2024 | 2023 |
2016年より前に開始された移転価格事案の終了件数 | 4 | 11 |
2016年より前に開始されたその他事案の終了件数 | 32 | 4 |
2016年より前に開始された事案の終了件数合計 | 36 | 15 |
2016年以降に開始された移転価格事案の終了件数 | 163 | 148 |
2016年以降に開始されたその他事案の終了件数 | 91 | 82 |
2016年以降に開始された事案の終了件数合計 | 254 | 230 |
終了した事案の件数合計 | 290 | 245 |
表2 開始された事案数:2023年と2024年の比較
| 2024 | 2023 |
移転価格事案の開始件数 | 145 | 125 |
その他事案の開始件数 | 184 | 122 |
開始された事案の件数合計 | 329 | 247 |
表3 協議継続中の事案数:2023年と2024年の比較
| 2024 | 2023 |
2016年より前に開始され協議継続中の事案件数合計 | 12 | 47 |
2016年以降に開始され協議継続中の移転価格事案件数 | 379 | 401 |
2016年以降に開始され協議継続中のその他事案件数 | 310 | 217 |
2016年以降に開始され協議継続中の事案件数 | 689 | 618 |
協議継続中の事案件数合計 | 701 | 665 |
2024年において米国IRSは、2016年1月1日以降に開始された移転価格事案を終了するのに平均39.6カ月を要し(2023年の28.5カ月から増加)、その他の事案は開始から終了まで平均23.3カ月を要しました(2023年の25.3カ月から短縮)。2024年において、米国のMAP合計事案数は再び増加しましたが、開始された事案数と終了した事案数を見ると、米国のMAPプログラムは引き続き堅調であることが分かります。2024年に事案が終了するまでに要した期間は、移転価格事案では2023年よりも約11カ月長くなりました。その他事案では2023年から2024年にかけてほぼ横ばいで推移しました。統計によれば、米国は引き続き約3年で事案を開始から終了まで処理していますが、この統計には、米国IRSの人員削減や米国政府機関の閉鎖といった課題が、2025年または2026年にMAPを申し立てる納税者のスケジュールに影響する可能性は反映されていません。
OECDは2年連続で事前確認(APA)の統計を発表しました。これによると、2024年に提出された新規APA申請件数は1,169件(2023年比3%増)となり、世界的なAPA申請件数の増加が示されています。2024年には合計826件のAPAが承認された一方、却下された事案はわずか57件、その他の理由で終了となった事案は143件でした。年末時点の協議継続中のMAP事案数は4,199件で、2024年初めの4,082件から増加しました。
2024年には、80の国・地域が二国間APAを認めていると報告しており(2023年の73国・地域から増加)、そのうち49の国・地域が積極的に事案を管理しています。特筆すべき点として、各国・地域は引き続きAPAを利用した紛争予防を優先しています。11の国・地域で、移転価格MAP事案に対するAPAの比率が50%を超え4、日本、タイ、ベトナムが上位3カ国でした。米国は、APAの対移転価格MAP比率が50%を超える国の一つです。報告した全ての国の全体平均比率は37.8%です。
APAの締結に要する時間は依然として長く、2023年の36.8カ月から、2024年には39.6カ月に増加しました。
OECDは、以下の権限ある当局の努力を評価しました。
2024年の統計は、MAPが引き続き二重課税の解消に有効な手段であり、事案の4分の3以上が合意または救済により終了していることを明らかにしています。同時に、このデータは、MAPの新規事案数と平均処理時間の両方が全般的に増加しており、世界中の権限ある当局が変化の激しい環境に置かれていることを示しています。米国については、移転価格事案の平均処理期間が40カ月弱まで上昇しており、これは国際間の問題の継続的な複雑さと、MAPによる救済への持続的な需要を示しています。
納税者はこれらの結果を、MAPが紛争解決手段として引き続き有効に機能している一方で、完了までの期間が長くなる可能性があることを示すシグナルとして捉えるべきです。租税条約が締結されている相手国との早期の関与と積極的な調整は、スケジュールと期待値の管理に役立ちます。
OECDの2024年統計は、二国間APAの件数およびそれを提供する国・地域の数が引き続き増加している一方で、承認までの平均期間が39.6カ月程度へとわずかに長期化していることも示しています。納税者は、MAPとAPAという二つのプログラム(MAPは事後的、APAは事前的)を戦略的に活用することで、複雑化する国際環境において税の確実性を確保するためのより広範なアプローチを構築できる可能性があります。
最後に、米国IRSの人員削減と米国政府機関の閉鎖が、MAP(およびAPA)事案の処理に要する時間にどのような影響を与えるかはまだ不明です。米国IRSが再開し、条約相手国との協議を再び開始すれば、納税者および税務アドバイザーは、その影響をより明確に把握できるようになります。
巻末注
EY税理士法人
谷津 剛 パートナー
Ernst & Young LLP
金成 龍秀 パートナー
國塩 大晃 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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