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2024年11月15日、OECDは、MAPに関する統計を公表しました。それによると、2023年における米国のMAPプログラムにおける協議継続中の事案数は、移転価格事案についてはわずかに減少しましたが、移転価格以外の事案については増加しました。米国のMAPプログラムでは、(2016年1月1日以降に開始された)230件の事案が終了し、247件の事案が開始されました1。
2023年の統計は、OECDの第6回「税の確実性の日」で公表されました2。OECDは初めてAPAの統計も公表しました3。また、同イベントで、2023年のMAPおよびAPAアワードが発表されました。
2023年のMAP統計には、米国を含む、税源浸食と利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みの140の参加国・地域からの情報が含まれており、2023年のデータでは、世界中のほぼすべてのMAP事案が取り扱われています。2023年の移転価格事案と「その他」事案(源泉徴収、居住者、恒久的施設、特典制限など)については、以下のデータポイントを含む統計データが提供されています。
2023年のMAP統計には、個々の国・地域が各締約国と協議したMAP事案数も含まれています。さらに、主要指標に関する各報告国の実績は、対話型ツールを通じて比較することもできます。
MAP統計では、移転価格事案と「その他」事案に区別されます。移転価格事案は、恒久的施設への利益の帰属または関連会社間の利益配分の算定のどちらかに関連しています。移転価格事案でないMAP事案はすべて「その他」事案として整理されます。また、MAP統計の報告では、2016年1月1日以前に受理された事案と2016年1月1日以後に受理された事案に区別されます。2016年12月31日より後に包摂的枠組みに参加した国・地域について、MAP統計では、当該国・地域が包摂的枠組みに参加した年の1月1日より前に受理された事案とそれ以降に受理された事案が区別されます。
対話型ツールを使用すると、利用者は2023年の両タイプの事案における特定の国・地域の実績を比較することができます。比較は以下の7つの主要指標に基づいています。
利用者は、指標を選別し、国・地域グループを選択することにより、検索方法をカスタマイズすることができます。
米国のMAPプログラムに関するいくつかの重要なポイントの比較を、2022年の統計と比較して以下に示します。
2023 |
2022 |
|
---|---|---|
2016年より前に開始された移転価格事案の終了件数 |
11 |
23 |
2016年より前に開始されたその他事案の終了件数 |
4 |
24 |
2016年より前に開始された事案の終了件数合計 |
15 |
47 |
2016年以降に開始された移転価格事案の終了件数 |
148 |
106 |
2016年以降に開始されたその他事案の終了件数 |
82 |
101 |
2016年以降に開始された事案の終了件数合計 |
230 |
207 |
終了した事案の件数合計 |
245 |
254 |
2023 |
2022 |
|
---|---|---|
移転価格事案の開始件数 |
125 |
145 |
その他事案の開始件数 |
122 |
80 |
開始された事案の件数合計 |
247 |
225 |
2023 |
2022 |
|
---|---|---|
2016年より前に開始され協議継続中の事案件数合計 |
47 |
62 |
2016年以降に開始され協議継続中の移転価格事案件数 |
401 |
424 |
2016年以降に開始され協議継続中のその他事案件数 |
217 |
177 |
2016年以降に開始され協議継続中の事案件数 |
618 |
601 |
協議継続中の事案件数合計 |
665 |
663 |
IRSは、2016年1月1日以降に開始された移転価格事案を終了するのに平均で28.5カ月を要し、その他事案は開始から終了までに平均で25.3カ月を要しました。
2023年において、米国は2022年のようにMAP繰越事案数を減少させることはありませんでしたが、開始された事案数と終了した事案数を見ると、米国のMAPプログラムが引き続き堅調であることが分かります。2023年に事案が終了するまでに要した期間は、移転価格事案では2022年よりも約3カ月短縮され、その他事案では3カ月延長されました。2022年と2023年との間にはわずかな傾向の違いはありますが、全体的には一貫しており、納税者が米国のMAP事案を提出する際、想定されるスケジュールを合理的に予測できることを示しています。
OECDは、以下の権限ある当局の取り組みを評価しました。
2023年の統計は、MAPが引き続き二重課税や条約に適合しない課税を排除する効果的な手段であることを示しています。とはいえ、MAP事案の処理期間は依然として24カ月という完了目標を上回っています。全世界のMAP繰越事案の件数が初めて減少したことは、さまざまな要因によるものと考えられますが、歓迎すべき結果です。
巻末注
EY税理士法人
谷津 剛 パートナー
國塩 大晃 ディレクター
※所属・役職は記事公開当時のものです
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