最近の税務トピックス:吸収分割における簡易課税制度の適用

急速に変化する税務環境へ的確に対応いただけるよう、EY税理士法人では、最新の税務上の課題・論点を解説するコラム「最近の税務トピックス」を新たに開始いたしました。第2回は、組織再編上の議論となりうる「吸収分割における簡易課税制度の適用」をテーマに、その概要と実務上の留意点について解説します。

1. 組織再編成における簡易課税の特例

消費税法上、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、簡易課税制度の適用を受けることができます(消法37①)。

ただし、新設分割を行った場合には、分割承継法人が簡易課税制度を選択することができるか否かの判定において、分割承継法人の基準期間における課税売上高だけでなく、分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高を加味する必要があります(消法37①、消令55一~三)。そして、分割法人が簡易課税制度を選択することができるか否かの判定にも、特例が定められています(消法37①、消令55四)。そのほか、一定の要件を満たす現物出資、事後設立を行った場合にも、特例が定められています。

これに対し、納税義務の免除の特例(消法11、12参照)と異なり、吸収合併、新設合併又は吸収分割を行った場合の特例は定められていません。


2. 会計検査院の指摘事項

令和7年11月5日に会計検査院から内閣に送付した「令和6年度決算検査報告」では、吸収合併、新設合併又は吸収分割を行った場合の特例が定められていないことについて、「吸収合併法人及び吸収分割承継法人について、基準期間における課税売上高以外の指標である被合併法人又は分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高等の状況をみたところ、その金額が5,000万円を超えているものが大半を占めていた。そして、これらの法人の多くにおいては、簡易課税制度を選択して適用したことにより本則課税に比べて納付消費税額が低額となっていると思料され、中には、推計消費税差額が1億円を超えている法人があった。また、吸収分割承継法人において、その法人設立の日の翌日から半年以内に事業を承継している法人が見受けられ、中には設立の日の翌日から41日で事業を承継しているものも見受けられた」と指摘されています。すなわち、会計検査院としては、中小企業の事務負担に配慮して設けられているはずの簡易課税制度が、結果として、規模の大きな法人の組織再編成を行った後における益税につながるような制度になっていることを問題視していると思われます。


3. 実務上の問題点

会計検査院が指摘したように、実務上、このような問題が顕著に生じるのは、本来であれば新設分割で事業を移転すべきところ、許認可の取得などの理由により、いったん受皿会社を設立した後に、当該受皿会社に対して事業を移転させるような場合です。なぜなら、新設分割で事業を移転した場合には簡易課税制度が適用できなかったにもかかわらず、吸収分割により事業を移転したことにより簡易課税制度が適用できてしまっているからです。

このような問題があることからも、今後、簡易課税制度の見直しがなされる可能性があります。令和8年度税制改正では見送られましたが、今後の税制改正の動向に注目しておく必要があります。

 

※本稿の記述は、令和8年1月16日現在の法令等に依ります。


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