令和8年3月期決算における税務上のポイント~成長型経済への移行実現と更なる発展に向けて~

Japan tax alert 2026年3月3日号

エグゼクティブサマリー

今年も3月決算法人の決算期末が近づいてきました。昨年3月に成立した令和7年度の改正税法では、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応することが最重点事項とされました。このような観点から、所得税の基礎控除・給与所得控除等の見直しや成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し、地域経済に好循環を生み出すための投資促進税制の拡充が行われています。

これらのうち法人税申告に関係する項目としては、中小企業者等に係る法人税率の特例の見直し、売上高100億円超を目指す中小企業が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度の追加などがあります。

また、令和6年度の税制改正で手当てされ、令和8年3月期から適用が開始される試験研究費の額の範囲の見直しやイノベーションボックス税制の創設などにも留意が必要です。

その他、国際課税の分野では外国子会社合算税制の見直しがあります。地方税の分野では、事業税外形標準課税の減資への対応措置も始まりました。

本稿では、これらの項目について、その概要を解説します。

実際の法人税申告に当たっては、本稿で取り上げるもの以外の改正事項についてもご確認ください。


法人税

1. リースに関する会計基準等への対応

新リース会計基準の公表に伴って、リース税制について以下の改正が行われました。


(1)借手の処理

①オペレーティング・リース取引に係る契約に基づき支払う金額について、その事業年度に債務の確定した部分の金額が損金の額に算入される旨の規定が新たに設けられました。賃貸借取引として支払賃借料を損金の額に算入する取扱いは改正前後で変わりなく、課税所得への影響はありません。なお、リースに関する会計基準の早期適用により、オペレーティング・リース取引に係る使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上した場合には、新たに設けられた規定に基づき必要な税務調整を行うことになります。

【図表1】借手の改正

【図表1】借り手の改正

②令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係るリース資産の減価償却(リース期間定額法)の計算の基礎となるリース資産の取得価額ついて、その取得価額に含まれている残価保証額に相当する金額を控除しないこと、そして、リース期間内において定額で1円(備忘価額)まで償却できる改正が適用されます。この改正に伴って、令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、経過リース期間定額法を選定することができる経過措置が講じられました。

【経過リース期間定額法】
経過リース期間定額法とは、経過リース資産の改定取得価額を改定リース期間の月数で除して計算した金額にその事業年度におけるその改定リース期間の月数を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法をいいます。

【改定取得価額】
改定取得価額とは、経過措置の適用を受ける経過リース資産のその適用を受ける最初の事業年度開始時点における取得価額(その最初の事業年度の前事業年度までの各事業年度においてした償却の額で損金の額に算入された金額がある場合には、その金額を控除した金額)をいいます。

【改定リース期間】
改定リース期間とは、経過措置の適用を受ける経過リース資産のリース期間のうちその適用を受ける最初の事業年度開始の日以後の期間をいいます。


(2)貸手の処理

新リース会計基準において割賦基準が認められなくなったため、リース譲渡に係る収益および費用の帰属事業年度の特例(延払基準の特例)が廃止されました。

延払基準の廃止に伴い、令和7年4月1日前にリース譲渡を行ったことがある法人の同日以後に開始する事業年度(経過措置事業年度)の旧リース譲渡については、引き続き、延払基準の方法により益金の額または損金の額に算入できる他、一定の経過措置が設けられています。


(3)法人税基本通達の改正

リース税制の改正に伴い、令和7年6月30日付で法人税基本通達の改正が行われました。

この中で、いわゆるフリーレントに関する取扱いが新設され、無償等賃借期間が含まれている賃貸借取引については、損金経理を要件として課税上弊害がある場合を除き、賃借期間を通じた支払額を賃借期間にわたって均等に支払われるべきものとした場合に、各事業年度中に支払われるべき費用の額をその各事業年度の損金の額に算入するものとして取り扱うこととされました。

(法人税基本通達)

(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)
 

12の5-3-2 賃借期間のうち賃料の支払がない又は通常に比して少額である期間(以下12の5-3-2において「無償等賃借期間」という。)が定められた契約のうち、次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの以外のものに基づく法第53条第1項《賃貸借取引に係る費用》に規定する賃貸借取引(以下12の5-3-2において「賃貸借取引」という。)に係る当該契約に基づき支払うこととされている金額についての同項の規定の適用に当たっては、当該金額が当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。
 

(1)当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合
 

(2)当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。)


2. 中小企業者等に関する改正

(1)法人税率の特例の見直し

中小企業者等に該当する法人の法人税率について、年800万円以下の所得金額に適用される税率が15%に引き下げられていますが、中小企業者等の当期の所得金額が年10億円を超える事業年度については17%が適用されます。

【図表2】中小法人の法人税率の見直し

【図表2】中小法人の法人税率の見直し


(2)中小企業経営力強化税制

中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または特別税額控除制度について、売上高100億円超を目指す中小企業に係る措置(E類型)が追加されました。

具体的には、売上高100億円超を目指す投資計画における平均投資利益率が7%以上であることおよび経営規模拡大要件に適合することにつき、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な機械装置、工具および器具備品、ソフトウェア、建物およびその附属設備について、即時償却(建物およびその附属設備は15%または25%の特別償却)または税額控除の適用を受けることができる制度です。

【図表3】中小企業経営強化税制の見直し

【図表3】中小企業経営強化税制の見直し


3. 試験研究費の額の範囲の見直し

試験研究費に係る税額控除制度の適用対象となる試験研究費の額から、内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る費用の額が除かれることになりました。国外事業所等とは、海外支店等の恒久的施設(PE)に該当するものをいいます。国外事業所等を通じて試験研究を行っている場合は当期から集計範囲が変わるため留意が必要です。

【図表4】試験研究費の範囲の見直し

【図表4】試験研究費の範囲の見直し

また、租税特別措置法関係通達(法人税編)に基づき、比較年度の試験研究費の額についてもその改正後の規定により計算することとなります。

(租税特別措置法関係通達(法人税編))

(試験研究費の額の範囲が改正された場合の取扱い)
 

42の4(2)-6 試験研究費の額の範囲が改正された場合には、比較年度の試験研究費の額についてもその改正後の規定により計算するものとする。


4. 外国子会社合算税制の見直し

(1)課税対象金額等の合算時期

外国関係会社に係る課税対象金額等の合算時期が外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から4カ月を経過する日を含む内国法人の各事業年度とされました(改正前は、外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から2カ月を経過する日を含む内国法人の各事業年度)。

12月決算の外国関係会社を有する3月決算法人の場合、令和8年3月期の内国法人の所得の金額の計算上、令和7年12月期決算の外国関係会社に係る課税対象金額等は合算しないことになります。

なお、令和7年3月期に早期適用を行い外国関係会社の令和6年12月期の課税対象金額等を合算していない場合には、令和8年3月期の内国法人の所得の金額の計算上、当該外国関係会社の令和6年12月期の課税対象金額等を合算することになります。

【図表5】課税対象金額等の合算時期の見直し

【図表5】課税対象金額等の合算時期の見直し


(2)書類添付義務・保存義務の対象とされる書類

次の書類が書類添付義務・保存義務の対象から除外されました。

①株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書その他これらに準ずるもの
②貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目の内訳明細書

【図表6】添付・保存書類の範囲の見直し

【図表6】添付・保存書類の範囲の見直し


5. イノベーションボックス税制

青色申告書を提出する法人が、令和7年4月1日から令和14年3月31日までの間に開始する各事業年度において、特許権や人工知能関連技術を活用したプログラムの著作物の譲渡または貸し付け(特許権譲渡等取引)を行った場合には、その特許権譲渡等取引に係る所得金額を基礎として計算した金額の合計額の30%に相当する金額を、各事業年度所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる制度(イノベーションボックス税制)の適用が開始されました。この制度の適用を受けるためには、事業年度末日の60日前から30日後の期間に経済産業省に申請書を提出し、特許権譲渡等取引に該当することの承認を得る必要があります。


法人事業税

外形標準課税にかかる改正として、その事業年度の資本金が1億円以下でも、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人については、その事業年度の資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるときは外形標準課税の対象となります。

本改正税法の公布日(令和6年3月30日)を含む事業年度の前事業年度から施行日(令和7年4月1日)以後最初に開始する事業年度の前事業年度までに、一度でも外形標準課税の対象であった法人については、課税される事業年度の「前事業年度」に外形対象法人でなかったとしても、施行日以後最初に開始する事業年度における資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする経過措置が講じられています。


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EY税理士法人