EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
令和8年度税制改正における外国子会社合算税制(いわゆるCFC税制)の見直しは、グローバル・ミニマム課税(第2の柱)の導入を背景として、国際課税制度全体の整合性を意識しつつ行われました。従来のCFC税制については、租税回避と無関係なケースであっても形式的に合算課税の対象となり、実務負担や過度な課税が生じているとの指摘が多くありました。今回の改正は、租税回避防止という制度趣旨を維持しつつ、実態のある事業活動を行う外国子会社に対する過度な規制を一定程度緩和する方向性を示しています。
改正の中でも特に重要なのが、清算中の外国関係会社に関する新たな特例の創設です。すなわち、清算準備開始前の2事業年度連続して経済活動基準を満たしていた外国関係会社は、解散後原則3年間は、引き続き実体のある子会社と見なしてCFCを適用することになります。これにより、清算中で実質的な事業活動がすでに終了している会社が、形式的に特定外国関係会社と認定されることを回避できます。実務上は、「解散日前に何年間経済活動基準を満たしていたか」の判定が必要となり、清算スケジュールとCFCに係る税務を連動して検討する必要が出てきます。
さらに、「ペーパー・カンパニー」に見える外国子会社であっても、実質的に租税回避のリスクが低い場合には、合算課税の対象から除外(または限定)するための救済規定(ペーパー・カンパニー特例)に関して、資産割合要件の見直しが行われました。従来は、受動的資産割合等に基づく形式的な判定が必要でしたが、改正後は、事業年度末時点で総資産がゼロである場合には、資産割合要件の判定が不要とされました。これにより、設立直後や休眠的な特別目的会社が、形式的にペーパー・カンパニーと認定されるリスクは一定程度緩和されることになります。ただし、「総資産がゼロ」と評価できるか否か、未収金や前払費用等の取扱いをどうするかについては引き続き留意が必要です。
さらに、租税回避防止の観点からの見直しとして、本店所在地国において所得金額に応じた累進税率が適用される場合に、最高税率を用いて租税負担割合を計算する特例について制限が加えられました。通常、最高税率が適用されるとは見込まれない場合や、該当する所得区分が極めて限定的な場合には、当該特例の適用が否定されることとなりました。本改正は、ミクロネシアの税制に対応したものと言われていますが、条文上は当該国に限定する記載はないため、当該国との関係以外でも、税務調査において議論の対象となる可能性を否定できません。実務上、実効ベースに近い税負担水準の説明や、客観的資料の整備が一層重要となります。
なお、令和8年度改正は、CFC税制を廃止するものではなく、グローバル・ミニマム課税との併存を前提とした調整にとどまります。第2の柱の下では、軽課税所得に対して、親会社所在地国で課税する所得合算ルール(IIR)、子会社所在地国で最低税負担を確保する国内ミニマム課税(QDMTT)、さらにIIR等で十分な課税がなされない場合に他国で補完的に課税する軽課税所得ルール(UTPR)が導入されています。これらは多国籍企業グループ全体として最低税率を確保することを目的とする一方、CFC税制は依然として個社単位で租税回避を防止する役割を担っており、両者はその制度目的を異にします。その結果、同一の外国子会社所得について、CFC合算とIIR・QDMTT・UTPRによる課税が並存的に影響する可能性があり、その関係をどのように整理・説明するかが、今後の税務調査対応実務における重要な論点となると考えられます。
EY税理士法人
竹原 昌利 マネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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