日本の新規上場動向 - 2026年1月~3月

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
マネージャー 公認会計士 吉本 麻衣子


1. 新規上場市場の概況

2026年1月から3月にかけての国内株式市場は、年明けに日経平均株価終値51,832円でスタートしました。その後、与党が衆議院選挙において安定的な議席を確保したことによる政局の安定感や、積極的な経済政策への期待、AI・半導体関連銘柄を中心とした株価上昇を背景に、相場は堅調に推移しました。2月27日には日経平均株価が終値ベースで58,850円と過去最高値を更新しました。

一方、期末にかけては中東情勢の緊迫化を受けた原油価格上昇への懸念などから市場の不透明感が強まり、株価は調整局面へと転じました。その結果、3月最終日の終値は51,063円となりました。

こうした市場環境のもと、2026年1月~3月に国内株式市場(TOKYO PRO MarketおよびFUKUOKA PRO Marketを除く)に新規上場した企業数は6社となりました。これは前年同期(2025年1月~3月)と比較して11社の減少となっており、特に東証グロース市場への新規上場企業数が9社減少するなど、同市場における影響が大きく表れています(表1)。

表1 最近5年間(1月~3月)の市場別新規上場企業数

表1 最近5年間(1月~3月)の市場別新規上場企業数

(注1)東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQスタンダード)については2022年1月から3月31日の実績となっています。
(注2)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注3)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

グロース市場への新規上場企業数が減少した背景として、2030年以降にグロース市場の上場維持基準が引き上げられる予定であることから、上場のタイミングを慎重に検討する企業が増加していることも一因として考えられます。


2. 新規上場企業データの分析

業種別では、情報・通信業2社(昨年同期8社)、医薬品製造業2社(昨年同期0社)となりました(表2)。前年と比較して情報・通信業の比率が低下する一方、医薬品製造業の上場が一定数見られたことが特徴です。


表2 2026年(1月~3月)の業種別新規上場企業数

表2 2026年(1月~3月)の業種別新規上場企業数

本店所在地別では、6社中5社の本店所在地が東京都であり、引き続き新規上場企業が東京都に集中する傾向が確認されます(表3)。東京都以外に本店所在地を置く企業についても、上場市場は東京証券取引所が選択されており、上場先の集中度は引き続き高い状況にあります。


表3 2026年(1月~3月)の地域別新規上場企業数

表3 2026年(1月~3月)の地域別新規上場企業数

直前期の当期純利益が赤字の状態で上場した、いわゆる赤字上場企業は、東証グロース市場に上場した3社でした。このうち2社は医薬品製造業、いわゆるバイオベンチャーであり、研究開発投資が先行するビジネスモデルの特性が反映された結果といえます。

また、2026年1月~3月に新規上場した企業はいずれも、初値が公募価格を下回る結果となり、IPO市場の動向として市場関係者の間で注目されました。これは、株式市場全体の変動性の高まりや、IPO銘柄のバリュエーションに対する投資家の見方が慎重になっていることなどが影響した可能性があります。

直前期の売上高分布を見ると、売上高が10億円以上50億円未満の企業が1社、50億円以上100億円未満の企業が3社となりました。一方で、売上高が100億円を超える新規上場企業は見られませんでした(図1)。

初値時価総額の分布では、100億円を超えた企業が5社となりました。東証グロース市場に上場した企業については、5社中4社が初値時価総額100億円を超えており、多くの企業が上場時点で新たな上場維持基準の時価総額を満たしていました(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのはイノバセル株式会社で、520億円となっています。東証グロース市場の平均初値時価総額は235億円となり、前年同期の119億円と比較して大幅に上昇しました。こうした点から、グロース市場に上場する企業の規模が相対的に高まっていることがうかがえます。

図1 2026年(1月~3月)新規上場企業・直前期売上高

図1 2026年(1月~3月)新規上場企業・直前期売上高

図2 2026年(1月~3月)新規上場企業・初値時価総額

図2 2026年(1月~3月)新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、PwC Japan有限責任監査法人が1社を担当する一方で、中小規模を含むその他の監査法人の割合が増加しています(表4)。新規上場プロセスにおいて、これらの監査法人が担う役割は年々拡大しているといえます。

表4 2023年~2026年3月の監査法人別新規上場企業数

表4 2023年~2026年3月の監査法人別新規上場企業数


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