EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2025年7月発行のIPOガイドブックを転載したものであり、本文中特に断り書きのない限り、2025年4月15日現在の法令・規則等に準拠して作成しています。
2025年版 IPOガイドブック
株式の上場とは、広く一般投資家から資金調達を行うことを目的とし、証券市場で株式を自由に売買できるようにすることです。具体的には、同族や特定の限られた者に保有され、株式の譲渡が制限されていた自社の株式を、不特定多数の一般投資家に開放して、証券市場において自由に売買できるようにすることをいいます。
株式会社は、広く一般投資家から資本参加を求めることで大規模な事業を営むことが可能ですが、他方で一般投資家に資本参加を求める場合、一般投資家がいつでも投下した資本を回収できる仕組みが必要となります。資本参加したものの換金することが容易でなければ、資本参加する一般投資家は限られてきてしまいます。このため、一般投資家がいつでも株式を売買できる市場が設けられており、これが証券取引所です。
国内には、日本取引所グループの東京証券取引所の他、名古屋、札幌、福岡の計4カ所の主要な証券取引所があり、それぞれの取引所が証券市場を開設しています(なお、デリバティブ市場としては日本取引所グループの大阪取引所があります)。
各取引所の証券市場は、東京証券取引所が「プライム市場・スタンダード市場・グロース市場」の3市場、名古屋証券取引所が「プレミア市場・メイン市場・ネクスト市場」の3市場、札幌証券取引所が「本則市場・アンビシャス市場」の2市場、福岡証券取引所が「本則市場・Q-Board市場」の2市場に区分されています。
また、プロ投質家向けの「TOKYO PRO Market」が東京証券取引所に、「Fukuoka PRO Market」が福岡証券取引所に開設されています。
各取引所の新興企業向けの市場は、上場基準が緩和され、審査も短期間で済むようになっています。しかし、上場基準が緩和されている分、投資家にとって新興市場は、「ハイリスク・ハイリターン」の市場であるといえます。
会社は、株式を上場して資金調達を多数の一般投資家に求めれば、資金調達の多様化が図られ、更なる会社の成長が期待できます。
その一方で、株式を一般投資家に開放して証券市場に流通させることで、会社にとって見ず知らずの株主が参加してくるため、投資者保護の見地から「上場会社としての適格性」を問われることになります。会社は、株式を上場することで、パブリックカンパニーとしてタイムリーな企業内容の開示や、コンプライアンス等を厳守し、より高い社会的責任を負うことになります。
東証は、2020年2月に「新市場区分の概要等について」、同年12月に「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」を公表し、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支え、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供することを目的として、2022年4月4日付で、従来の市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQの4つの市場区分を、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの市場区分へ再編しました。
各市場区分のコンセプトに応じ、時価総額(流動性)やコーポレート・ガバナンスに関する基準を定めるほか、各市場区分のコンセプトを反映した定量的・定性的な基準を設けています。
従来の市場区分と新市場区分のイメージ
① 新市場区分における上場基準の考え方は以下のとおりです。
② 各市場における上場基準の概要は以下の通りです。
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項目 |
考え方・狙い |
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流動性 |
多様な機関投資家が安心して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄 |
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ガバナンス |
上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄 |
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経営成績 |
安定的かつ優れた収益基盤・財政状態を有する銘柄 |
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項目 |
考え方・狙い |
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流動性 |
一般投資者が円滑に売買を行うことができる適切な流動性の基礎を備えた銘柄 |
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ガバナンス |
持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現のための基本的なガバナンス水準にある銘柄 |
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経営成績 |
安定的な収益基盤・財政状態を有する銘柄 |
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項目 |
考え方・狙い |
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事業計画 |
高い成長可能性を実現するための事業計画を有し、投資者の適切な投資判断が可能な銘柄 |
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流動性 |
一般投資者の投資対象となりうる最低限の流動性の基礎を備えた銘柄 |
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経営成績 |
事業規模、成長段階を踏まえた適切なガバナンス水準にある銘柄 |
図表 新市場区分への新規上場等(イメージ)
3月末決算会社の日程例
市場区分の見直しに関するフォローアップ会議は、東京証券取引所(以下、東証)に対して市場区分の見直しの実効性向上に向けた助言を行うことを目的に創設され、2022年7月に第1回が開催されて以来、2024年までに計19回の会議が開催されました。
2023年1月には、論点整理とそれに基づく今後の東証の対応が公表されました。この論点整理では、日本市場における経営者は資本コストや株価を意識していないケースが多いことが指摘され、経営者の意識改革やリテラシー向上、企業経営における自律性の向上が求められています。具体的な対応策としては、以下の4項目が提言されています:
プライム市場とスタンダード市場においては、継続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、改善計画を策定・開示することが求められています。また、計画に基づき資本コストや株価を意識した経営を推進し、開示を基に投資者との積極的な対話を実施することが重要です。この点において、親子上場のグループ経営や少数株主保護の観点の課題やMBO(経営陣による買収)、支配株主による完全子会社化が増加する中での課題への対応も進めています。
一方、グロース市場については、IPO後に大きく成長する企業を輩出する観点から、以下の6項目を掲げ、本来のグロース市場の機能を発揮するための対応を進めています:
なお、グロース市場の上場維持基準については、2030年以降、現在の「上場10年経過後から時価総額40億円以上」から「上場5年経過後から時価総額100億円以上」に引き上げる案が示されています。