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北海道の外国人労働者数が5万人を超えた。北海道労働局が公表した2025年10月末時点の外国人雇用状況によると、道内で働く外国人は5万1,358人と前年から7,477人増え、伸び率は17.0%となった。外国人を雇用する事業所も8,854カ所と1,052カ所増加し、人手不足を背景に受け入れの裾野が広がっている。
国籍別では、ベトナムが1万3,337人で最多を維持した(図表1)。ただ増加幅は233人、伸び率は1.8%にとどまり、構成比も26.0%と前年から低下した。最大勢力ではあるものの、全体の増加を牽引する力は弱まっている。これに対し、存在感を急速に高めているのがインドネシアだ。人数は1万952人と前年から3,406人増え、伸び率は45.1%に達した。人数規模でもベトナムに迫る。中国は6,333人で続き、増加幅は446人(7.6%増)と緩やかな伸びにとどまった。
中位層ではミャンマーとネパールの増勢が目立つ。ミャンマーは1,280人増で30.4%増、ネパールも588人増で38.3%増となった。人数規模は上位国に及ばないものの、増加率の高さから新たな供給源として存在感を強めている。国籍構成は特定国への集中から分散へと移行しつつある。
在留資格別では技能実習が1万9,964人で引き続き大きな規模を占めるが、増加率は8.1%にとどまる。特定技能は1万2,271人と3,346人増え、37.5%の高い伸びを示した。
図表1 国籍別外国人労働者数(北海道)
産業別では製造業が1万2,607人で最多。食品加工などを中心に安定した需要が続く(図表2)。農業・林業は7,287人と20.3%増え、酪農や畑作を支える労働力として存在感を高めた。建設業も5,832人で21.2%増と伸びた。宿泊・飲食は4,669人で22.9%増となり、訪日客回復を背景に採用が進む。医療・福祉も4,809人と30.5%増え、介護分野を中心に受け入れが拡大している。
図表2 産業別外国人労働者数(北海道)
自民党は2025年5月、「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」を設け、外国人の増加に伴い顕在化する課題への対応を党内で本格的に検討し始めた。6月には「国民の安心と安全のための外国人政策 第一次提言」を取りまとめ、法令遵守の徹底や制度の適正利用、透明性の確保に向けた方向性を示している。関係省庁の横断連携の下で実態把握を常態化し、制度・運用の見直しを主導する司令塔体制の構築も打ち出した。
政府は同年11月、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」を開き、関係省庁が横断して検討を進める枠組みを整えている。自民党も同11月、総裁直属の「外国人政策本部」を設置。政府の議論を踏まえつつ、党としての提言機能を強化する構えだ。
外国人政策本部は2026年1月20日、提言を公表した。基本は「法やルールに反する行為には厳正・厳格に対処」しつつ、「ルール・制度を社会変化に合わせて徹底的に見直す」という考え方である。柱は三つだ。①不法就労や在留資格の悪用への対策(出入国在留DXの推進、在留資格に関する審査・調査の厳格化など)、②安全保障上の懸念の払拭(土地取得などに関する規制、地下水採取の実態把握・管理など)、③日本の文化・ルールを理解し活動できる環境整備(日本語や日本の制度・ルール等を学ぶ包括的プログラムの創設、来日前・来日後の段階や就労者・生活者・子どもなど対象に応じた日本語教育の強化、自治体支援の充実化など)である。
政府は同月23日、関係閣僚会議で提言を踏まえた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定した。関係省庁は対応策に基づき、具体的な施策の検討と実施を進める段階に入っている。
新たな供給国の比重が高まるなど人材供給環境が変化する中、在留資格に関する審査・調査の厳格化も今後一層進む見通しだ。受け入れ企業には二つのリスクを見据えた対応の強化が求められる(図表3)。
一つ目は、在留資格で認められた活動範囲を超える業務に従事させてしまうことによる法令違反リスクである。典型例として、一定の専門性を前提とする在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の人材が、資格上想定されない非専門的業務を主たる職務として担ってしまうケースが挙げられる。人事異動や配置転換を契機に、企業側も本人も気付かないまま違反に至る場合がある一方、意図的な不適正配置が行われる例もある。いずれも不法就労助長罪に問われかねない。この種の違反は、専門業務と非専門業務が同一の現場で混在し、境界が曖昧になりやすい職種で表面化しやすい。建設業の施工管理、製造業の品質管理、宿泊・飲食・小売業における通訳・翻訳業務などがその例だ。大企業であっても、子会社や取引先に視野を広げれば、実質的に違反に該当し得るケースは少なくない。
法令違反リスクの論点は技人国に限られない。留学生の資格外活動における就労時間の上限管理など、いずれの在留資格でも許容範囲を正確に把握し、就労実態を継続的に点検することが欠かせない。不法就労が判明すれば、企業の信用やレピュテーションを損ない得るうえ、是正対応に伴って事業運営の一部が停止・制約される可能性もある。とりわけ多拠点・多層構造を有する企業では、本社統制の下で子会社や委託先・取引先を含むサプライチェーン全体でガバナンスとリスク管理の実効性を高める視点が不可欠となる。
二つ目は、送出国の情勢変化や現地の制度運用、商慣行の不透明さに起因する調達・供給面のリスクだ。ミャンマーで出国制限が続くように、送出国を取り巻く環境は流動的で、先行きは読みづらい。主要な人材の供給源であった東南アジアで受け入れの伸びが鈍る一方、南アジアの存在感も高まっている。政治・経済情勢の変化に伴う制度改正に加え、日本側から見えにくい不適切な仲介行為や、学歴・日本語能力などの証明書偽造も確認される。
こうした状況を受け、一部の企業の間では供給源の多角化を進める動きが広がる。特定の人材紹介会社への過度な依存を避け、採用プロセスの透明性を高めた上で、信頼できるパートナーとの連携に基づく独自の採用スキームを整える例が増えている。供給国を複数に分散した人材ポートフォリオを構築し、急な人材供給の途絶や制度変更の影響を抑えようとする試みも目立つ。
これまで外国人材の活用は人事部門の所掌と捉えられがちだった。だが、調達リスクやコンプライアンス上の論点を踏まえると、経営課題としての性格が強い。企業には、外国人雇用に伴うリスクを把握・管理するだけでなく、現場の人材ニーズや送出国の状況を踏まえ、どのパートナーと連携し、どのような採用スキームを設計するかが問われる。受け入れ後の定着支援や人権配慮まで含め、組織横断での外国人材戦略が不可欠となる。
こうした戦略を中長期で描き、安定的な人材確保と法令に沿った運用を両立できるかが、競争力を左右する。人手不足が構造的に続くなか、外国人材への対応は企業価値や社会的信頼に直結する経営課題となっている。
図表3 外国人材を取り巻く状況と重要リスク
企業における外国人材受け入れの進展に伴い、受け入れの「場」を支える自治体の役割も重みを増している。日本の制度・ルールを学ぶプログラムの創設や日本語教育の強化など、受け入れ環境の整備は国主導で進む見通しだ。だが、地域にとって重要なのは「受け入れた人材が地域に残るかどうか」である。定着は雇用機会や住環境など地域固有の条件に左右される。自治体には国の支援メニューを活用しつつ、それだけに依存せず、地域産業や生活基盤の特性に応じた戦略を自ら設計する姿勢が求められる。もっとも、外国人材に関する自治体事業には「日本人雇用の軽視」といった住民の批判も根強く、大規模な支援策を打ち出しにくい自治体は少なくない。その一方で、危機感を共有し、覚悟をもって独自性の高い取り組みを進める自治体もある。ここでいう独自性は、イベントや相談窓口の上乗せにとどまらない。送出国での人材確保・教育から、受け入れ後のキャリア形成や生活支援までを一体として組み立て、地域として戦略的に整備することを指す。
参考となる事例の一つが神奈川県綾瀬市だ。綾瀬市はベトナムとインドネシアの現地送出機関と包括連携協定を結び、現地送出機関が募集・教育を担う。市の商工会は監理団体として企業と本人を支援し、市も商工会と連携して実習生の市内企業への紹介に加え、働きやすい環境づくりに向けた情報提供や交流機会の創出に取り組む。また、宮崎県はベトナムの農業大学や送出機関と連携し、現地の大卒・高卒生から農業人材を募集・選考したうえで、就労が決まった人材に入国前に農業技術に加え、文化や方言なども教える「宮崎授業」を実施している。秋田県能代市では、市内複数社で一般社団法人を設立し、受け入れ企業への相談対応や登録支援機関・現地送出機関等の紹介に加え、外国人材の情報管理システムを提供する。大分県は留学生の県内定着に向け、県内就職と起業を支援するインキュベーション施設を運営し、地元企業とのマッチングや起業支援をワンストップで担う。
北海道の自治体においても、必要とされる外国人材の在留資格やスキル・能力等の要件を明確にしたうえで、各送出国の状況に応じた人材確保ルートの開拓と、受け入れ後のキャリア支援を含む定着施策までを一体として設計することが期待される(図表4)。現地での人材確保・教育から定着までを見通した独自戦略を描けるかどうかが、質の高い人材の確保と地域への定着の鍵を握る。
図表4 外国人材の確保・定着に関する独自戦略の策定・実行プロセス(全体像)
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