外国人雇用、リスク管理と戦略を

寄稿記事

掲載紙:2026年3月24日・日経電子版
執筆者:
森川岳大
EY新日本有限責任監査法人
FAAS事業部 マネージャー

外国人材の受け入れが加速する中、外国人雇用に伴うリスク管理の重要性が一段と高まっている。中でも、在留資格の範囲外の業務従事による法令違反や、送り出し国の情勢変化に伴う人材供給の不安定化、現地の制度運用や商慣行の不透明さに起因するリスクへの備えは欠かせない。

法令違反の典型例として、一定の専門性を前提とする在留資格「技術・人文知識・国際業務」でありながら、資格上認められていない非専門的な業務が職務の中心となっている事例が挙げられる。人事異動や配置転換を契機に、企業側も本人も気付かぬまま違反に至る場合もあれば、意図的に不適正な配置がなされることもあり、不法就労助長罪の対象になり得る。

この種の違反は、建設業の施工管理や製造業の品質管理、宿泊・飲食・小売業の通訳・翻訳業務など、専門業務と非専門業務が同一現場で混在し、その境界が曖昧になりやすい職種で目立つ。外国人材の不法就労は、企業の信用を大きく損なう恐れがあり、サプライチェーン(供給網)全体のガバナンスやリスク管理が、これまで以上に問われている。

送り出し国の情勢も日々変化する。これまで主要な人材供給源であった東南アジアからの受け入れが鈍化する一方、南アジアの存在感が高まっている。政治・経済情勢の変化に伴う制度改正も頻繁に生じ、日本側からは見えにくい不適切な仲介行為や、学歴・日本語能力等の証明書偽造の問題もある。その中で、供給源の多角化や透明性の高い独自の採用スキームを構築する企業も増えてきた。

外国人材の活用は人事部門の所掌とされがちだが、こうしたリスクを踏まえれば、人事部門にとどまらない経営上の重要課題だ。外国人雇用によって生じるリスクをどう把握・管理し、現場の人材ニーズや送り出し国の状況を踏まえてどのパートナーと連携し採用スキームを構築するか。受け入れ後の定着支援や人権配慮も含め、組織横断的な外国人材戦略が求められる。

こうした戦略を中長期で設計し、安定的な人材確保と法令に沿った運用を実現できる企業こそ、人手不足の時代において競争力を維持できるはずだ。

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