EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ありがたいことに書籍出版からスキルベースに関するご相談が増えております。スキルベースとは人材の需給バランスが崩れた状況で現有リソースを最大限に活用しましょうという思想でもあるわけですが、どういったわけかスキームの対象となるのは今のところ一般社員であることが多く、私はそこにいくばくかの疑問を感じておりました。そうしていたところ、フラクショナルリーダーシップという直球コンセプトが目に留まりましたので本日はこちらをご紹介します。エグゼクティブの世界でもスキルベースは確実に現実的なものへ進化を遂げているようです。
近年、エグゼクティブの退職が相次いでいます。Harvard Business Reviewによれば2024年の米国では2,221名のCEOが退任し、その数は2002年以来最高の値となったそうです。別の調査によればCFOの退任も2020年以降増加を続けており、2025年は同期比で過去最高を上回るペースとのことです。そして、役員に辞められて困るのが企業です。サクセッションという後継者育成は行っているものの十分に機能している企業は少なく、DDI社の調査によれば75%の企業が空席補充時に内部登用を優先させる方針を持ちつつも、すべてのポジションに登用準備が完了した候補者がいるケースは20%にも満たず、結果として半数は社外登用で賄うことになるというのがおおよその数字感のようです。加えてCOVID-19とそれに続くGreat Resignationで、優秀層ほどすぐ社外に出ていく風潮が高まり、企業側の論理でサクセッションという定型的な育成をあてはめることが難しくなっているという課題もあります。これらの事実の組み合わせとして、記録的な数のエグゼクティブが退任し、内部登用に限界があるので社外人材を探すものの、社外の優秀層(採用慣行的には同一ポジション経験者)は数に限りがある、という事態が生じており、これがエグゼクティブ争奪戦へと発展してきているのです。
この状況に対する解決策のひとつとして注目されているのがフラクショナルリーダーシップ、いわばパートタイム役員です。手法自体は2000年代頃からあったもので、当初はフルタイム役員を置くまでには至らない規模のベンチャーでプロ人材を従量課金で雇い入れたことに始まります。一般企業で言えば暫定的な人材登用やコンサル起用で賄っている部分にあたりますが、その応用版としてAIなどのデジタルトランスフォーメーション、既存組織の枠を超えたイノベーション、データセキュリティなどの特定かつ特命的なミッションを担うポジションでパートタイム役員を活用する事例というのが近年増えているのです。例えば従来型の登用例としてはNotion社のフラクショナルCMO(マーケティング)、Figma社のフラクショナルCLO(法務)など、特命型の例としてはAirbnb社やPinterest社のフラクショナルCTO(テクノロジー)などが挙げられます。彼らは当初“パートタイマー”と呼ばれていたのですが、パートタイマーという表現には責任感やコミットメントの希薄さが含まれているのではという議論を経て“フラクショナル”(部分的な)に改められ、以降広がりを見せています。例えばフラクショナルエグゼクティブを自認するLinkedInアカウントは2022年は2,000件ほどでしたが、2024年には11万4,000件まで増えたと言われています。また、登用側も同様で、分割可能なエグゼクティブ求人が2020年前後で数倍に増えたと報告するレポートもあります。
このフラクショナルリーダー、一見すると「当該ポジションを時間単位で埋める手法」なのですが、よくよく考えると一階層上のポジションから特定領域・特定スキルを切り出し、ケイパビリティを持つ人に渡すという施策であり、スキルベースの考え方そのものと言えます。つまり人がいなければCEOが自分で見なければならなかった業務を、それができる人に渡すことでCEOが本来業務にフォーカスできる環境を作りましょう、ということです。CEOに限りません。人がいなければCFOやCOOが見なければならなかった部分をスキル保有者に渡す、そしてCFOやCOOは空いたキャパシティでもっと役立つことをやってください、ということです。リスクを懸念する場合は社内人材に閉じて考えてみてもよいでしょう。そうすればたちまち役員版スキルベースの完成です。人事施策はさまざまな理由で上位レイヤーから導入されることが多いものですから、スキルベースも役員層から始めてみるというのも手かもしれません。そうは言ってもあんな問題やこんな問題が・・・とお考えの企業様からの、フラクショナル人事担当への任用リクエストもお待ちしております。
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