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Youngismは昨年後半あたりから英米メディアで登場する機会が増えているAgeism(エイジズム)の反対語です。エイジズムとは基本的には“年齢を理由とした偏見や固定観念、差別など”を表す言葉です。基本的には、というのはAgeingから想像されるような高齢者に向けられた偏見を意味する使い方が多いからでして、その逆、つまり若年層に対する偏見をエイジズムと区別してYoungismと表現するようになってきたようです。Youngism研究の第一人者としてはボッコーニ大学のフランチョーリ助教授が有名なのですが、彼の研究によるとエイジズムという高齢層への偏見が年齢を軸に発生するのに対し、Youngismという若年層への偏見は世代を軸に発生するのだそうです。つまり、今でいえば「Z世代」のようなくくりで若者を捉えた時、ステレオタイプや偏見が生じるということになります。
2022年の突然の生成AIブームから、エントリーレベルの求人数が減少していることは周知の事実です。しかし実はエントリーレベルのポジションに就きにくくなった理由としてAIの影響よりもむしろYoungismの影響の方が根深く深刻であるという論調も出ているのは、ご存じない方も多いのではないでしょうか。陰謀論的なトーンがないわけではありませんが、簡単にいえば不安定な社会構造を生き抜くために今の若年層が安定やメンタルヘルス、あるいはレジリエンスのようなしなやかさを必要としているのに対し、そのことを本質的あるいは実感をもって理解することのできないミドル以上の層は「そんなことのために」とZ世代の価値基準を軽視してしまい、そのことがYoungism、つまり若年層への偏見を生んでいるというのです。
わかりやすい例として昇格意欲を挙げてみましょう。かつて昇格とはキャリアにとって意味のあるマイルストーンであり、ライフプランにとっても大きなリターンを伴う節目であり、要するに「目指さない理由がない」ものでした。そのため人事の仕組みとしてもみな昇格目指して頑張りましょうというラダー方式を採り、誰もそれに異を唱えなかったわけですが、今の若い世代からするとそれがどうした、と映るのです。5年後10年後の職の安定が約束されているでもない、むしろ日々の生活さえどうなるか不透明な中で、数年先のわずかな昇給を目指して努力する余裕が持てるのはほんの一握りで、大多数はむしろ副業で収入源を増やした方がよっぽど効果的に実入りを期待できるわけです。それを「副業なんて考える暇があったら本業を腰据えてやれよ」としてしまうのが偏見であり、そういう偏見が「最近の若い者は・・・」につながった時、それをYoungismと呼ぶのです。
フランチョーリ氏の研究によれば、そもそも「最近の若い者は・・・」という発想は古代ギリシアから連綿と続く世代間ギャップであり、前世代が築いた基準を新世代が満たさない、もっといえば別軸で生きようとすることに端を発するグローバルかつ不朽の課題だそうです。同様に「これだから昔の人は・・・」もあるのですが、こちらは法律で差別を禁ずるケースが多く(例えばアメリカでは40歳以上を対象に年齢由来の差別を禁止する法律があります)徐々に減少、結果としてYoungismの悪影響だけが続いているといいます。
では、そのYoungismがエントリーポジションを奪うというのはどういうことでしょうか。実は、数が減ったエントリーポジションに応募したとしても年齢を理由にポジションに就けないという事態が起きているというのです。ある調査によると、Z世代の多くが、自分たちは「労働倫理が低く(59%)」、「プロフェッショナリズムに欠け(53%)」、「気分を害しやすい、または忠誠心に欠けている(44%)」という否定的な固定観念にさらされていると訴えています。さらにこちらはイギリスの調査ですが、Z世代の3人に1人は年齢による差別、具体的には「若すぎる」ことを理由とした就業機会の喪失を憂慮しており、52%は年齢に頼らない資格系ポジションへのチャレンジを検討したことがあるといいます。つまりどういうことかといえば、スキルベースが広がるにつれスキルを伴わない若年層はポジションを得ることが難しくなっている。そこに輪をかけて「Z世代は怠惰だ」というYoungismが生じることで、同じエントリーポジションでもZ世代ではない世代を採用するという判断が下されやすくなっている、ということになります。
いや、さすがにそれはやってない、と思われるかもしれません。しかしYoungismが生じているのは必ずしも採用局面だけではないといいます。例えばZ世代に対する否定的な思い込みは、評価や昇格など年齢層の高いセグメントと比較される際に、必要以上に自分の能力や可能性を証明しなければならないというプレッシャーになっており、結果としてZ世代のやる気を奪い、本当の「怠け者」へと追い込んでしまっている可能性も指摘されています。
また、主従はともかくとしてAIの登場がYoungismと相乗的に若い世代に圧力を与えていることも事実でしょう。スキルベースとはスキルさえあれば重用される可能性があるという点で機会平等につながり得るものではありますが、前提としてスキルを伸ばす環境、あるいはスキルが発展途上でも成長ルートに乗ることができる仕組みがなければ回りません。しかし残念ながら現状はそうなっていないため、若者はAIの登場を前に既にキャリアを別方向へと移し始めています。ブルーカラービリオネアという言葉も出てきたように、ホワイトカラーのエントリー職に就くくらいならブルーカラーキャリアの方がAIリスクも低く実入りも多いというのです。
ロボティクス技術等の発展も考えられる中でそれはさすがに短絡的すぎるとしても、社会全体、あるいは自組織の持続可能性というものを考えた時、単にエントリーポジションをAI化するというのではなく、同時にスキル要件を満たす人材をどう輩出していくのかということも考えておかなければ、そもそも若者に見向きもされなくなってしまうことだって十分にあり得るのです。筆者も最近、「最近の若い者は・・・」を聞きました。ごくありふれた一言かもしれませんが、そこに潜むリスクも人事であれば知っておきたいものです。
参考文献 ※内容はアクセス当時のものとなります。
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