EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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サステナビリティへの取り組みがばらばらであるため、組織の他部門に影響を与えることに苦戦しているCSuO(最高サステナビリティ責任者)のチームや、他のグループなどの中でもサイロ化が生じるケースがあまりに多いのが現状です。今回のEY Sustainable Value Studyの対象となったCSuOの半数強(54%)が、サステナビリティへの取り組みのパフォーマンスについて、他者に説明責任を課す権限が自分にあると回答しています。
責任の欠如は、足並みの乱れの拡大を生み、部門をまたいだ連携不足が顕著となる場合があります。EY Sustainable Value Studyの調査結果から、企業の41%が、気候戦略を効果的に進めるために経営層と取締役会の連携の大幅な強化を望んでいることが分かりました。
このようなギャップがあると、サステナビリティ戦略が全体的な事業戦略から切り離されて作成され、その結果として、軽視されてしまうようなサステナビリティ戦略が生み出されることが少なくありません。一方、サステナビリティを企業の包括的な戦略に組み込むことでリーダーは各部門を1つにまとめ、共通の目標に向かわせることができます。
トップダウン型のリーダーシップへ
こうした分断を避けるには、取締役会の協力を受けたCEOがまず先頭に立ち、トップからサステナビリティの組み込みを主体的に推し進める必要があります。社内外で適切な会話の場を積極的に持つべく尽力することが、経営陣全体に求められます。戦略と指標を部門や事業部、国・地域の壁を越え共同で策定し浸透させることで、企業は幅広い賛同を得て、足並みをそろえることができます。
オーストラリア最大の不動産開発事業者の1つ、Stocklandを例に説明しましょう。CSuO兼開発部門責任者のPetie Walker氏が思い起こすのは、CEOのTarun Gupta氏が「数年前の就任時に、新事業戦略の中核にサステナビリティを据え、それをきっかけに全社で取り組むサステナビリティへの姿勢を一新させる18カ月間のプロセスが始まった」当時のことです。
「CEOの役割は極めて重要です」とStockland社の非業務執行取締役であり、同社のサステナビリティ委員会の委員長を務めるAndrew Stevens氏は付け加えます。「サステナビリティがリーダーの最優先課題でなければ、推進派がサステナビリティへの取り組みを大きく前進させることは、非常に困難です」
自動車メーカーのMahindra社では、サステナビリティ委員会の委員長をグループCEOであるAnish Shah氏が務めており、その決定に重みを持たせています。「サイロに風穴を開けています」と話すのは、Mahindra社で主席社外取締役を務めるVikram Mehta氏です。
戦略的かつ将来を見据えた取り組み
この過程で、サステナビリティへの取り組みを戦略的かつ将来を見据えたものにするには、三者(CSuO・CFO・取締役会)間の連携が欠かせません。おそらく、これをどこよりも重視しているのは、大手飲料メーカーとして、天然産物への依存が大きいアサヒグループです。「当社では、サステナビリティを将来への投資と考えています。リスクとインパクトの数値化を図り、将来のコストを避けるよう努めています」とアサヒグループのCFO﨑田薫氏は述べています。
同社の前サステナビリティ部門責任者を務めた近藤佳代子氏は、将来の財務成果にサステナビリティがもたらす価値を実証することが喫緊の課題となっていることから、CSuOとCFOは今後、「1つのチームとして協力する」必要があると考えています。同社の取締役EVP(執行副社長) 兼グループCPO(最高プロダクト責任者)を務める谷村圭造氏は、次のように付け加えます。「将来について考え、どのような文化、戦略、そして日々のリーダーシップを各自が追求するかを考えることが大切です。すべては、会社に沿ったダイナミクスとガバナンスの枠組みを構築し、その枠組みが継続的に進化し、実効性を維持できる基盤と支援メカニズムを作るということに帰着します」
三者以外にも拡大する
CSuO・CFO・取締役会の三者が中心的役割を果たすことに変わりはありませんが、このチームが変革を推進していく中で、企業の全リーダーが力を合わせ、サステナビリティ戦略を組織全体に浸透させていく必要があります。
Stockland社のCFOであるAlison Harrop氏は「経営陣の一人ひとりが、サステナビリティ戦略の一翼を担っています」と述べています。「それはまさに組織全体に張り巡らされたクモの巣のようなもので、多くの交点がありますが取り組みを進めているのは、成果をもたらすことができる社内の人材です」
より厳格で、規制主導の非財務報告を求める声の高まりもまた、重要な推進要因となっています。例えば、eコマース企業であるeBay社では、サステナビリティチームが最高会計責任者やSEC(米国証券取引委員会)への報告を担当するチームとの連携を強めており、eBay社CFOのSteve Priest氏によると、「財務組織全体が協調する見事な体制が出来上がっている」とのことです。
テクノロジーの変化も、サステナビリティチームを拡大する必要性を高める要因となっています。生成AIの急激な普及で、世界的にエネルギー消費量とデータセンターの建設が急増しています。自社のデータセンターを維持するか、それともクラウドプロバイダーを利用するか。それを判断するには、生成AIが気候と自然に及ぼす影響を把握する必要があることから、最高情報責任者もこの問題の検討に加わるようになってきました。