12 分 2022年9月16日
シダの葉が織りなす輪のズーム画像

取締役会が直⾯する喫緊の課題︓CSOとの協⼒を通じて価値創造型のサステナビリティを推進

執筆者 Sharon Sutherland

EY Global Center for Board Matters Leader and Area Program Management Leader

Global mindset. Power through diversity. Art lover. Intellectually curious. Traveler. Legacy matters. Passionate about learning initiatives.

EY Japanの窓口

EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー

Japanリージョンのマーケッツリーダーおよび主要なアカウントリーダー。35年以上にわたりEYに貢献。公認会計士。

12 分 2022年9月16日

取締役会は最高サステナビリティ責任者(CSO)と協力することで、会社がESGの恩恵を享受しリスクを軽減するための支援ができます。

要点
  • 企業がESGを価値創造の中心に据え、競争力を獲得できるようにする上で、最高サステナビリティ責任者(CSO)の役割は極めて重要である。
  • 効果的に物事を進めるには、CSOと取締役会の共生関係が必要である。しかしEYの調査とインタビューからは、その関係が発展途上であることが分かる。
  • CSOと取締役会は、CSOの役割の強化、ESGアジェンダの優先順位付け、堅実なデータ開示プロセスの確立という3つの点で助け合うことができる。
Local Perspective IconEY Japanの視点

環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素は、企業にとって企業の社会的責任(CSR)の枠を超えた未来の競争力の源泉となっています。サプライチェーンにおける関係者が高い意識で取引先を選定し始めていることはもちろんですが、企業の社会的影響を重視するミレニアル世代・Z世代も、自らの価値観に沿うブランドを支持し、購買行動や就職先候補の選定に反映させる傾向があります。企業はESGをビジネス戦略に組み込んで事業運営の中で実践し、透明性の高い情報開示を行うことが極めて重要です。言い換えれば、そうした対応を怠れば、ボトムラインへのダメージやレピュテーションリスクにもつながりかねません。

一方、ESG・サステナビリティの国際的な法規制や開示基準は複雑かつ変化も速く、常に情報のアップデートが求められるため、企業内の協働が求められます。最高サステナビリティ責任者(CSO)、取締役会、財務部門など関係各所の間で適切なガバナンスを導入し、いかに良好な関係を築いて知識を共有し、アジェンダの優先付けを行い、戦略と一体化できるかが、サステナビリティ領域で真の価値を創造する上で鍵を握ります。


EY Japan の窓口

瀧澤 徳也
EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー

環境・社会・ガバナンス(ESG)はかつて、企業の社会的責任の延長にある周辺的な活動として扱われていました。今では、ESGは企業の戦略と運営に不可欠であり、ステークホルダーとの社会契約の一部にもなっています。うまく実行すれば、事業を拡大し会社を成長させる大きな機会となります。そのため、企業や取締役会は「なぜ持続可能であるべきなのか」ではなく、「どうすれば会社はサステナビリティを通じて価値を創造できるのか」を問うようになっています。

この問いに答え、「Value-Led Sustainability(価値創造型のサステナビリティ)」とEYが呼ぶものを実現する上で、最⾼サステナビリティ責任者(CSO)、つまりサステナビリティのリーダーが⼤きな役割を果たします。この役職が企業のESG全般に直接責任を負うとは限りませんが、これまで取り上げたような喫緊の戦略課題や、多くの企業が情報開⽰を求められている状況を考えれば、そのビジネス上の重要性はますます⾼まっています。

そのため取締役会は、CSOという役職と、CSOが推進するESGアジェンダを全面的にサポートする必要があります。しかし最近のEYの調査では、取締役会とCxOの間で、コミュニケーション、共通の理解、優先順位の設定が概して不足していることが分かっています。最近のEYの調査(英語版のみ)では、欧州の大手企業の取締役および上級管理職の約43%が、長期的価値を高めるためESG要素を十分取り入れようとする熱意が取締役会に欠けていることを、大きな問題と捉えています。

EYのシリーズ記事「取締役会とCxO」では、両者の関係を強化するため、取締役会が具体的に何をすればいいのかを提案しています。最初の記事では取締役会とCROの間の動的関係(英語版のみ)を探りましたが、この2つ目の記事では、どうすれば取締役会とCSOが互いをうまくサポートできるのかを考えます。全体を通して、EYのプロフェッショナルや一部のクライアントへのインタビューと、調査を通じて得られた知見を用いて、取締役会とCSOが自身と会社全体の成果をどのように改善できるのかを提案します。

  • CSOの役割

    CSO(または同等の役職)の仕事は、企業のサステナビリティの成熟度を明確にすることです。これには自社の炭素基準排出量、サプライヤーの炭素基準排出量、ESGの取り組みがもたらす社会貢献度などが含まれます。

    また、ESGのどの分野を優先すべきか決定し、事業戦略に組み込んで、ステークホルダーのために価値を生み出し保護できるようCEOをサポートします。こうした分野には、サプライチェーンの活動や従業員の多様性と包摂性など、広範なESG問題が含まれるようになっています。

    またCSOには、サステナビリティの行動計画を策定し、業務に組み込んで各部門に確実に遂行させる責任があります。この計画では、ESGの真のコストと機会を財務と関連付けて測定する必要があります。最後に、ESG運動が高まる中でCSOに求められるのは、企業の脆弱性がどこにあるのかを理解し、リスクを軽減するための戦略を立てることです。

    しかし当然ながら、企業のESGすべてに1人で直接責任を負うことはできません。そのためCSOは、各領域を個々の担当者や各チームに任せ、そうしたソースからの情報をとりまとめ、戦略的に極めて重要なものを取締役会と経営陣に提示します。こうした意味では、サステナビリティと事業戦略の架け橋と言えます。

シンガポールの高速道路に架かる自然の橋
(Chapter breaker)
1

第1章

ESGは今や世界中の企業にとって戦略的に重要な課題

ESGへの関心が高まるにつれ、取締役会とサステナビリティリーダーとの共生関係の必要性も高まっています。

この数年、気候変動により、サステナビリティの規制と情報開示に大きな変化が起きています。こうした変化は、EUの非財務情報開示指令(NFRD)に加え、EUの企業サステナビリティ情報開示指令(CSRD)米国証券取引委員会の新ガイドラインへの提案を通じてもたらされています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大とCOP26がこの戦略課題の緊急度を高め、多くの企業が業界の優先事項を反映した野心的なESG目標に取り組んでいます。例えばEYでは、2025年までに炭素排出量をネットゼロにするという目標を2021年1月に設定し、その達成に向けて順調に進んでいます。

幸いなことに、この意識の高まりは環境のサステナビリティだけにとどまりません。EYの調査によれば、最高財務責任者(CFO)と財務リーダーの約84%が、パンデミックを機に、ステークホルダーが企業に社会的影響と包摂的成長の促進を求めることが増えたと述べています。

2021年度のEYグローバルコーポレートレポーティング調査

84%

の回答者が、パンデミックを機に、社会的影響と包摂的成長の促進を企業に対して求められることが増えたと述べています。

EY Global Vice Chair – SustainabilityのSteve Varleyによれば、「素晴らしい製品を手頃な価格で提供するだけではもはや十分ではありません。自社のビジネスだけでなく、従業員、サプライヤー、コミュニティを保護し、彼らのために価値を創造しなければ、競合他社に後れを取るでしょう」

見返りが大きい一方で、失敗すれば損失も大きい

EYの調査(英語版のみ)によれば、欧州のリーダーや取締役会は、こうした圧⼒に応えることの将来的メリットを十分認識しています。彼らは、ESG要素を企業戦略に取り込む⼤きな利点は「ESGを意識した消費者が促進する収益成⻑」であり、リスクレジリエンスを上回ると回答しています。

取締役会や経営陣は同時に、ESGに取り組まなければ高くつくことにも気付いています。EUのコーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CS3D)などのイニシアチブが施行される以前にも、企業のサプライチェーンに劣悪な労働条件が見つかれば、評判と収益に取り返しのつかないダメージを被る恐れがありました。また一部の地域では他の地域よりも、責任を問われることを役員が懸念するようになっています。

自社のビジネスだけでなく、従業員、サプライヤー、コミュニティを保護し、彼らのために価値を創造しなければ、競合他社に後れを取ることになります

そうしたリスクの高い環境では、多くの企業がCSOを任命したり、ESGの責任を上級管理職に割り当てたりするのは当然と言えます。しかし、その役職と取締役会との関係がまだ発展途上であることも明らかです。

例えば、ESGの機会を実現しリスクを軽減できるようにするには、CSOが戦略的に位置付けられ、経営会議での発言権、適切なレベルの資金、明確なKPIと指揮命令系統を持つ必要があります。しかしEYの調査によれば、これらの重要な手順をまだ進めていない企業があります。

取締役会とCSOはもっとサポートし合うことができる

最終的に重要なのは、CSOと取締役会が共⽣関係を築き、会社の戦略的⽅向性とESGをすり合わせるため緊密に協⼒することです。また、合意した⽬標を適切なペースで実現できるよう、取締役会は積極的にCSOをサポートすることが求められます。CSOの側では、取締役会がESGアジェンダを理解し、常に状況を把握しておけるようサポートする責任があります。

この記事のためにインタビューしたサステナビリティリーダーは、大体において取締役会から十分なサポートを受けていると答えています。しかし、気候変動以外の問題も検討するなど、ESGに関して「相互の戦略的結び付き」を強めるために、取締役にはもっとできることがあると彼らは考えています。

取締役会の方向性は正しいと思われます。2年前の15%に比べて、現在はほぼ半数が、毎回の会議でESGについて話し合い、報告しています(英語版のみ)。しかし取締役会長と非業務執行取締役の68%は、短期的優先事項と長期的優先事項の調整を巡って、経営チーム内に大きな意見の食い違いがあると回答しています。あるインタビュー対象者はこれを「利益とパーパスのバランス調整」と呼んでいます。

2022年のEY Long-Term Value and Corporate Governance Survey

68%

の回答者が、短期的優先事項と長期的優先事項の調整を巡って、経営チーム内に大きな意見の食い違いがあると述べています。

これらの調査結果と、インタビューから得られた知見は、共にこの関係性の成熟度に大きなばらつきがあることを示しています。また、取締役会と経営陣の間にも食い違いがあることを示していますが、CSO(または同等の役職)との緊密な協力関係によってこれに対処しやすくなる可能性があります。

熱帯雨林の吊り橋を歩くバックパッカー
(Chapter breaker)
2

第2章

取締役会とCSOがウィン・ウィンの関係を築く3つの方法

ESGがもたらし得る利益と損失は、CSOにも取締役会にも影響を与えます。両者は主要な課題に取り組むことを通じて、成功に向け互いに助け合うことができます。

取締役会とCSOが互いをサポートする方法を3つのテーマに整理し、取締役会が取るべき実践的行動と共に紹介します。

1. CSOの役割を強化し実効性を持たせる

企業が専任のCSOを置く必要はありませんが、ESGの実践と説明に責任を負う⼈物(できれば経営幹部の1⼈)を割り当てる必要があります。この⼈物はトピックを理解し、幹部レベルの影響を⾏使して会社に成果をもたらさなくてはなりません。そうしたCSO(または同等の役職)の役割に実効性を持たせるために、取締役会が取るべき⾏動がいくつかあります。

ESGの責任を(1つまたは複数の)委員会に割り当てる

EY Global Deputy Vice Chair – SustainabilityのAmy Brachioによれば、適切なガバナンスが重要であり、「CSOの役割の重要性を反映したガバナンスを導入することで、企業がESGをどれほど真剣に受け止めているかについて、ステークホルダーに強いメッセージを送ることができます」

そのために、ESGの監視を1つまたは複数の委員会に担当させ、それぞれの役割と責任を明確に定義します。例えば、話を聞かせてくれたあるグローバル企業は、取締役会の小委員会の1つを、「サステナビリティ」を冠する名称に変更しました。

取締役会のガバナンスに関してCSOの知識向上を図る

どのようなガバナンスモデルであれ、取締役会は、ESGの監視、測定、開示のための現在の体制と、その体制がどのように貢献できるかを、CSOが理解できるようにする必要があります。例えば、CSOがリスク委員会や監査委員会と定期的に会議を開けるようにして、ESGリスクを管理し規制を順守できるようにします。

CSOの役割の重要性を反映したガバナンスを導入することで、企業がESGをどれほど真剣に受け止めているかについて、ステークホルダーに強いメッセージを送ることができます
Amy M. Brachio
EY Global Vice Chair - Sustainability
CSOと協力してESGのGを実行する

強力なコーポレートガバナンスと透明なコミュニケーションは、企業が倫理的であること、またガバナンスが行き届かない同業他社よりも優れていることを示す重要なポイントです。資産運用会社がガバナンスに細心の注意を払っているのはそのためです。2021年のRussell Investmentsの調査では、ESG関連の意思決定は主にガバナンスに関するものだと80%が回答しています。Insightiaによれば、2021年にESG活動家の要求を受けた全企業のうち、67%がガバナンスに関する問題を扱っていました。

CSOはESGの観点から企業の成熟度を評価することで、特に脆弱な部分を活動家に⽰し、直ちにリスクの軽減を図ることができます。ESGのピアレビューを実施し、その結果を⽤いて改⾰につなげるという手段もあるでしょう。取締役会は、そうしたレビューを推奨したり、収⽀報告や明確な委任状勧誘書類を通じて投資家と効果的にコミュニケーションを取ったりすることで、積極的にサポートします。

ESGを経営幹部の業績の尺度にする

取締役会は、CSOや報酬委員会と協力して目標を役員報酬およびインセンティブの計画に組み込むことにより、極めて高いESG基準を支持するという企業の取り組みを強化できます。

2. ESGアジェンダの優先順位を付け、互いから学ぶ

CSOの成功は、取締役会や経営陣と定期的に有意義な時間を取れるかどうかにかかっています。企業のESGリスクや、他社とは異なる価値を実現する機会について議論し、決定し、合意するには、そうした時間が必要です。そのためにできることがいくつかあります。

CSOと協力してESGを事業戦略の中核に据える

CSOの仕事は、そのESG戦略がなぜ会社に適しているのかを取締役会に提示し説明することです。サステナビリティと戦略とを関連付ければ、関心を集めやすいでしょう。一方で取締役会は、現在、今後、そして長期的未来の事業戦略にESGがしっかりと組み込まれるようにする必要があります。

BPのSenior Vice-President ESGであるAlan Haywood⽒は、サステナビリティと戦略を関連付けるようCSOに推奨しています。「世界でエネルギー転換が進む今⽇、戦略とサステナビリティは密接に関連しています」と彼は⾔います。「それらを同じ管轄、つまり同じリーダーシップの下に置き、取締役会を巻き込みながら推し進めるとよいでしょう」

戦略とサステナビリティを同じ管轄、つまり同じリーダーシップの下に置き、取締役会を巻き込みながら推し進めるとよいでしょう
Alan Haywood氏
Senior Vice-President ESG, BP
取締役のESG知識を深める

取締役会がESGの知識を身に付けることが大切です。BoralexのDirector, Corporate Social ResponsibilityであるMihaela Stefanov氏は次のように述べています。「ESGの世界は複雑で急速に変化しています。そのため成長しようという心構えが大切であり、取締役会とCSOは、個人としてだけでなく一体となって知識を更新し続ける必要があります。だから知識教育が重要なのです」

取締役は必要に応じて、諮問委員会を設立したり、関連する専門知識を持つ人物に役員会での発言権を与えたりすることを検討すべきです。そうした委員会や専門家もCSOを直接サポートする必要があります。

CSOはその深い知識を基に、取締役会(およびさらに広範な部⾨)に適切に情報を伝えることで助けとなり、またそうする必要があります。それにより取締役はESGに関する実践的知識を⾝に付け、質問したり課題を提⽰したりできるようになります。話を聞かせてくれたある企業は、こうした取り組みを⽀援するために、実践的なワークショップや外部の専⾨家による講演を⾏う環境サステナビリティ週間を毎年開催しています。

そのため成長しようという心構えが大切であり、取締役会とCSOは、個人としてだけでなく一体となって知識を更新し続ける必要があります。だから知識教育が重要なのです
Mihaela Stefanov氏
Director, Corporate Social Responsibility, Boralex

3. ESGデータの収集、管理、開示の堅実なプロセスを確立する

今日の投資家は、炭素排出量ネットゼロや賃金の平等など何であれ、ESG問題への取り組みの証を求めています。しかしEYの投資家アンケートで回答者の89%がグローバル基準の施行を望んでいるものの、その実現はまだ先の話です。

2021 EY Global Institutional Investor Survey

89%

の回答者がグローバル基準の施行を望んでいます。

気候関連の情報開示に関しては、IFRSサステナビリティ開示基準の開発を行う国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2021年後半に設立されたばかりです。EUの企業サステナビリティ情報開示指令(CSRD)が今年度後半に発効し、2025年から(2024年度のデータに基づき)サステナビリティ報告が始まります。

取締役会が以下に示すような行動を取ることは、気候関連の情報開示の国際基準が整備されるまでのつなぎになると同時に、他のESG分野に関連する規制に先行することにもなります。

CSO、財務部門、監査委員会の間で緊密な協力関係を築く

これにより、ESGのEに関する新しい基準と規制を確実に順守できるようになります。ネットゼロや脱炭素化などのシナリオを定期的に計画することで、関連リスクを発生前に特定し軽減しやすくなります。また、CSOは投資家との良好な関わりを通じて、企業が情報開示をどのように改善し、競争力の源にしようとしているかを示すことができます。

財務の面からESGの影響を説明することでCSOをサポートする

話を聞かせてくれたあるサステナビリティリーダーによれば、これまで多くの企業の行動を促してきたのは、法的に報告が求められるという事実です。社会的影響などのESG分野のデータ開示規制や、そのデータを収集および分析し、財務実績と関連付ける効果的な方法がなければ、企業は行動しようと思わないかもしれません。

ただし、別の回答者が指摘したように、今は財務上重要でないことでも将来重要になる可能性があります。取締役会やCSOが競合他社に先んじて優位に立とうと思えば、最新のデータと分析結果がその達成にどのように役立つかをよく調べる必要があります。また、CFOと協力し、現在だけでなく将来のニーズにも応えられるよう、非財務報告を扱う統一された効率的アプローチを確立する必要があります。

最終的にCSOはCFOと協力して、会社がより持続可能な事業フットプリント(温室効果ガス排出量の削減など)に移行するためのビジネスケースの作成とプログラム変更を支援する必要があります。会社が掲げる目標と、それを達成するために必要な財源、スキル、技術との間には、隔たりがあることが多いのです。

取締役会にとって重要な検討事項

取締役会とCSOは会社がステークホルダーのために価値を創造し保護する上で、ESGを中核に据えられるよう、互いに協⼒する必要があります。これを念頭に、取締役会が⾃らと経営陣に投げかけるべき6つの問いがあります。

  1. CSOを経営幹部に任命しているか。任命していない場合、誰がサステナビリティに責任を持ち、説明責任を果たすのか。ESGの機会を実現しリスクを軽減しやすくするために、どのような形で彼らを戦略的に位置付けているか。
  2. 取締役会はCSOという役割に求めるものを話し合い、それを経営幹部チームに直接伝えているか。
  3. ESGアジェンダの重要性とCSOの役割を反映するために、どのようなガバナンスが導入されているか。例えば、ESGの監視を1つまたは複数の委員会に担当させているか。
  4. CSOと協力してESGを事業戦略の中核に据える取り組みを行っているか。取り組んでいる場合、ネットゼロの未来で成功するための時間軸と会社の移行計画はどのようなものか。これらの目標を役員報酬およびインセンティブの計画に組み込んでいるか。
  5. 会社のESGレポートが単に規制の要求に応えることを⽬的として作成されている場合、それはどの程度か。CSO、財務部⾨、監査委員会を連携させ、より良い開⽰プロセスと管理⽅法で裏打ちされた社外の優れた枠組みを⽤いて影響を測定できれば、他にどのようなことを達成できるか。
  6. 取締役会の一員として、会社が収集し報告するESG情報の正確さに満足しているか。広く受け入れられている標準的な分類法を用いて、堅実な方法でデータが収集されているか。報告データが誤っていた場合、誰が説明責任を負うのか。

サマリー

かつては周辺的な活動であった環境・社会・ガバナンス(ESG)は、今では会社がステークホルダーのために価値を創造し保護する上で中核に据えられています。最高サステナビリティ責任者(CSO)または同等の役職の登場はこの変化を反映していますが、EYの調査によれば、この重要な役職と取締役会はもっとサポートし合えるはずだということが分かります。両者は、CSOの役割の強化、ESGアジェンダの優先順位付け、ESGデータの収集、管理、開示の堅実なプロセスの確立という3つの点で助け合うことができると考えられます。

この記事について

執筆者 Sharon Sutherland

EY Global Center for Board Matters Leader and Area Program Management Leader

Global mindset. Power through diversity. Art lover. Intellectually curious. Traveler. Legacy matters. Passionate about learning initiatives.

EY Japanの窓口

EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー

Japanリージョンのマーケッツリーダーおよび主要なアカウントリーダー。35年以上にわたりEYに貢献。公認会計士。

  • Facebook
  • LinkedIn
  • X (formerly Twitter)