わかりやすい解説シリーズ「減損会計」 第3回:減損の兆候

公認会計士 浦田 千賀子


【ポイント】
減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象のことです。



減損会計のステップ

第2回で、減損会計の第1段階である固定資産のグルーピングについて見ていきました。第3回では減損会計の第2段階として、固定資産や関連する事業をとりまく環境から、どのように減損の兆候を把握するかを見ていきます。
すべての資産に対して減損の認識の判定を行うことが、企業の金銭的・時間的負担を増大させるおそれがあることから、まずは、減損を検討するか否かの入口として、減損の兆候を把握します。
固定資産の減損の兆候の例として、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」)では、下記の4つの例(①~④)を挙げていますので、順にご説明します。

① 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合

営業活動から生ずる損益、又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合、あるいは継続してマイナスとなる見込みの場合、減損の兆候に該当します。ここでいう「継続してマイナス」とは、おおむね過去2期がマイナスであったことをいいます。
ただし、過去2期がマイナスであっても、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は、減損の兆候に該当しません。
当期がX3年に該当すると仮定し、下記の図でイメージを掴みましょう。

① 営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合

② 使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合

企業の内部事情や、固定資産の個別的な要因により、収益性の低下が生じる、又は見込まれる場合、減損の兆候に該当します。例えば、以下のようなケースが考えられます。



(1) 事業の廃止または再編成(会社分割や事業希望の大幅な縮小なども含む)

(2) 予定よりも著しく早期の資産の除去・売却

(3) 当初の用途からの転用

(4) 資産の遊休化

(5) 資産の著しい稼働率低下

(6) 資産の著しい機能低下

(7) 建設仮勘定について、計画の中止や大幅な延期の決定



③ 経営環境の著しい悪化がある場合

社外環境の変化により、収益性の低下が生じる、又は見込まれる場合、減損の兆候に該当します。例えば、以下のようなケースが考えられます。



(1) 市場環境の著しい悪化
ex. 材料価格の高騰、製商品価格の大幅な下落、販売量の著しい減少

(2) 技術的環境の著しい悪化
ex. 技術革新による著しい陳腐化、特許期間終了による重要な技術の拡散

(3) 法律的環境の著しい悪化
ex. 重要な法律改正、規制緩和、規制強化



(1) 市場環境の著しい悪化

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(2) 技術的環境の著しい悪化

(2) 技術的環境の著しい悪化

(3) 法律的環境の著しい悪化

(3) 法律的環境の著しい悪化

④ 市場価格の著しい下落がある場合

資産又は資産グループの市場価格が簿価から少なくとも50%程度以上下落した場合に、市場価格の著しい下落があると考えます。この場合、減損の兆候に該当します。
市場価格とは、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場のことです。上場株式の株価と異なり、事業用資産の場合は市場価格の把握が困難な場合が多々あります。この場合、土地の公示価格や路線価等の一定の評価額や、一般に受け入れられている指標を市場価格とみなして使用します。

④ 市場価格の著しい下落がある場合

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