建設業における新リース基準の留意点

情報センサー2026年8月・9月 業種別シリーズ

建設業における新リース基準の留意点


建設業では工事に際してさまざまな資材や機械(以下、資機材)が使用されており、その取引には建設業固有の特性が含まれる場合があります。本稿では、新リース基準の適用上、実務的な検討が必要と考えられる主要な論点について解説します。


本稿の執筆者

EY新日本有限責任監査法人 建設セクター 公認会計士 石田 悠介

当法人に入社後、主として建設業の会計監査および内部統制監査業務ならびに建設セクター活動に従事。

※所属・役職は記事公開時のものです



要点

  • 工事現場で使用される資機材には、協力会社から賃借するもののほか、協力会社が現場へ持ち込むものもあり、それぞれについてリースの識別を行うことが重要である。
  • 他者と共同で施工する建設ジョイントベンチャー(以下、建設JV)においては、スポンサー会社とサブ会社のそれぞれについて、リースを識別するか否かの判断および関連する会計処理が論点となる。
  • 建設現場で使用される資機材には、1品目当たりのリース料が少額のものが多く含まれており、少額リースに関する簡便的な取扱いの適用可否が実務上の検討事項となる。

Ⅰ はじめに

2024年9月13日に企業会計基準委員会から公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下、新リース基準)および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下、新リース適用指針。また、「新リース基準」と「新リース適用指針」を合わせて、「新リース基準等」)が、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から原則適用となります。

本稿では、新リース基準等の適用に当たり、建設業の企業において実務的に対応が想定される論点を中心に、会計処理に関する検討上の留意点を解説します。

なお、文中の意見に係る部分は筆者の私見である旨、あらかじめ申し添えます。


Ⅱ 建設業における資機材賃借の特徴

建設業では工事のために足場材や仮囲い、ユニットハウス、クレーン、給排水機器などさまざまな建設用の資機材が必要です。自社で所有する資機材を使用する場合もありますが、その多くは賃借されています。建設会社が現場ごとに直接賃借する場合もあれば、協力会社へ工事の一部を発注し、協力会社が資機材を使用して施工する場合もあります。また、賃借料が少額な資機材が一定数含まれているという特徴もあります。

さらに、単独で工事を行うだけでなく、民法上の組合を組成して共同出資を行い、他社と共同で施工する建設JVがあり、その場合には建設JVが権利主体となって資機材を賃借し、共同出資者それぞれが出資割合に応じて費用を負担する場合もあります。

上記の特徴を踏まえ、本稿ではリースの識別、建設JVおよび少額リースの論点について解説します。


Ⅲ リースの識別

新リース基準の適用上、「リース」とは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいいます(新リース基準6項)。企業は、契約の締結時に、当該契約がリースを含むか否かを判断することが求められます(新リース基準25項)。

建設現場では協力会社から資機材を賃借する場合だけでなく、協力会社が自身で持ち込んだ資機材を使用して施工を行う場合もあります。後者の場合にも建設会社においてリースを識別する場合があると考えられるため、それぞれの場合におけるリースの識別過程について検討します。

リースの識別の判断に当たっては、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含むと判断されます(新リース基準26項)。すなわち、契約がリースを含むか否かは、「資産の特定」および「特定された資産の使用の支配」の観点から検討を行う必要があります。

1. 協力会社から資機材を賃借している場合

(1) 資産の特定

資産は、通常は契約に明記されることにより特定されます(新リース適用指針6項)。ただし、建設業の場合、資機材の発注書等の書面のみでは資産が明確に特定できないことも想定されます。この点、資産が契約に明記されていなくとも事実と状況によりリースが含まれることが明らかであるときがあるとされており(新リース適用指針BC10項)、通常は建設現場に搬入された時に資機材の種類および数量が明確化されるため、黙示的に資産が特定される場合も多いと考えられます。

ただし、賃借された資機材の種類・数量を把握できたとしても、貸主が資産の実質的な入替権を有する場合や資産が稼働能力の一部分であり物理的に別個のものと区分できない場合には、当該資産は特定された資産に該当しません(新リース適用指針6項、7項)。

(2) 特定された資産の使用の支配

特定された資産の使用の支配については、その使用期間全体を通じて①顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有していること、②顧客が特定された資産の使用を指図する権利を有していること、という2つの要件を満たすことが必要です(新リース適用指針5項)。

①については、借主である建設会社が賃借した資機材を使用して工事を進めることができるため、建設会社がその使用による経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有していると考えられます。

②については、新リース適用指針BC13項では「使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮する」と示しています。建設会社は施工計画や工事進捗に応じて、建設現場において賃借している資機材の使用時期や使用時間等、その使用から得られる経済的利益に影響を与える事項の決定権を有していることが多く、このような状況においては、建設会社がその使用を指図する権利を有していると考えられます。

2. 協力会社へ工事の一部を発注し、協力会社が自身で持ち込んだ資機材を使用して施工する場合

建設業では、建設会社は発注者から工事を受注し、建設会社は協力会社に対して施工や資機材の調達などを委託します。ここで、協力会社により建設会社の工事現場へ資機材が搬入されているという点では、協力会社から資機材を賃借する場合と協力会社が持ち込み資機材を用いて施工する場合に相違はありません。このため、法的形式が賃借ではなくても、建設会社においてリースが含まれるか否かの検討が必要です。

(1) 資産の特定

「1. 協力会社から資機材を賃借している場合」と同様の検討を行います。

(2) 特定された資産の使用の支配

前述の通り、その使用期間全体を通じて①顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有していることと、②顧客が特定された資産の使用を指図する権利を有していること、について検討を行います。

①については、資機材を賃借している場合と同じく、協力会社が資機材を使用して施工することにより、借主である建設会社は工事を進めることができるため、その使用による経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を建設会社が有していると考えられます。

②については、前述の通り、新リース適用指針BC13項は「使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮する」と示しています。

建設会社と協力会社は施工を委受託する関係性にあるため、建設会社は協力会社の施工における資機材の使用方法そのものを指図する立場には一義的にはないと言えます。ただし、建設会社には工事全体の総合的な監理監督機能があることから、その機能の範囲内において協力会社の資機材の使用方法を実質的に指図している場合もあり得ると考えられます。


Ⅳ 建設JV

建設業では、建設JVを組成して共同で施工を行う場合があります。ジョイントベンチャー(以下、JV)は民法上の「組合」と解されており、法人格がないため、構成員のうち1社を代表者(スポンサー会社)として定め、それ以外の構成員はサブ会社と呼ばれます。

建設JVでは、JV運営に関する基本的かつ重要な事項はJV運営委員会で協議を行いますが、JV実行予算の策定や資機材の調達先の選定、施工管理などではスポンサー会社が大きな影響力を有しています。

上記より、建設JVが賃借する資機材について、スポンサー会社とサブ会社においてリースを識別するか否かを検討します。

リースの識別については、「資産の特定」および「特定された資産の使用の支配」の観点から検討が必要です。ここで、「資産の特定」について、建設JV特有の検討事項はないと考えられます。次に「特定された資産の使用の支配」について、その使用期間全体を通じて①顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有していること、②顧客が特定された資産の使用を指図する権利を有しているか、の検討を行います。

①については、建設JVの取り決めで工事収益(利益)は出資比率によりスポンサー会社とサブ会社に配分されますが、建設JVは資機材の使用によりその経済的利益のほとんどすべてを享受できます。また、スポンサー会社は資材の調達先や協力会社の選定における影響力に起因するメリットも享受できるため、より多くの経済的利益を享受できると言えます。したがって、スポンサー会社はJVで賃借した資機材の使用による経済的利益のほとんどすべてを享受できるため、本要件を満たすと考えられます。

②の検討においては、使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮します(新リース適用指針BC13項)。この点、建設JVではスポンサー会社が単独で資機材の調達を行い、サブ会社は後日確認を行うことが一般的です。また、資機材の使用方法等の決定においても、施工管理を行うスポンサー会社に実質的な決定権限があり、サブ会社はスポンサー会社の決定に沿って資機材を使用するのみで、使用方法の決定権限は有しないことが通常です。したがって、建設JVが賃借する資機材について、その使用を指図する権利を有しているのはスポンサー会社であり、サブ会社には指図権がないと考えられます。

上記を踏まえ、スポンサー会社は建設JVが賃借する資機材につきリースを識別しますが、サブ会社はリースを識別しない会計処理が考えられます。

なお、スポンサー会社が使用権資産とリース負債を測定する際にJV比率を乗じるかを考えます。建設JVにおける通常の購買取引にて、スポンサー会社はJV全体の金額で支払債務を計上しています。この現行の会計慣行との整合性を踏まえると、使用権資産とリース負債についてもJV全体の金額で計上する方法が考えられます。


Ⅴ  少額リースに関する簡便的な取扱い

建設現場で賃借する資機材には、汎用的な足場材等の軽量仮設や備品(以下、仮設材等)など、1品目当たりのリース料が少額で、工期内の一定の短期間において頻繁に賃借・返却が繰り返される項目が多く存在します。すべての仮設材等に対して使用権資産を計上するのは実務上大きな負担を伴うことから、新リース基準における少額リースおよび短期リースに関する簡便的な取扱いを用いて会計処理を行うことが考えられます。ここでは少額リースについて解説します。

少額リースとは、以下要件のいずれかを満たすリースであり、リース開始日に使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます(新リース適用指針22項)。

(1)重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額※1以下のリース

(2)次の①又は②を満たすリース※2
①企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しい(借手のリース料が300万円以下)リース※3
②新品時の原資産の価値が少額である(新品時に5,000米ドル以下程度)リース

※1 基準額は、通常取引される単位ごとに適用し、リース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができるとされている。
※2 会計方針としていずれかを選択でき、選択した方法を首尾一貫して適用するとされている。
※3 当該方法は、リース取引に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第16号)において定められていたリース契約1件当たりの借手のリース料が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れたものとされている。

少額リースの取扱いのうち新リース適用指針22項(1)を適用する場合、汎用的な足場材等複数の部材を組み合わせて使用する項目について、「通常取引される単位」の設定が論点となります。ここで、少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定(法人税基本通達7-1-11)における単位が参考になります。汎用的な足場材等は、協力会社との通常の取引単位が単体(本数、台数等)であり、建築現場の規模に応じて使用数が異なるため、一定の単位を設けることが難しいと言えます。このため、足場材単体を通常取引される単位として設定することが考えられます。


Ⅵ おわりに

本稿では、建設業における新リース基準等の適用の影響、特にリースの識別、建設JVおよび少額リースに関する論点について解説しました。建設業の資機材調達は多様な形態で行われるため、新リース基準等の適用に当たっては、業界特有の商慣行を踏まえた上で、各社の取引実態に即した検討が重要です。本稿が建設業に関わる企業の新リース基準等の適用に向けた検討に少しでも役立つことがあれば幸いです。


サマリー

建設業における新リース基準への対応に向け、資機材賃借に係るリースの識別、建設JVおよび少額リースの実務上の留意点を解説します。


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