持続的収益成長を可能にするCROが取り組むべきこととは?

なぜ今CRO:Chief  Revenue Officerが注目されるのか?日本企業の成長を加速する“最高収益責任者”とは?


日本企業の成長鈍化や収益性向上などの経営課題に対し、いま注目される最高収益責任者が取り組むべきアジェンダ(CROアジェンダ)を解説。EYはこのCROアジェンダについて、6つのオファリングで課題解決をご支援いたします。


要点

  • 失われた30年。売上高成長率(CAGR)はほぼ横ばい
    粗利益率の成長はほぼゼロという低成長の日本企業
  • 利益拡大を目指しサービスシフトを進める一方で、顧客接点組織の分断が生むコト売りへの対応が遅れ
  • 注目されるCRO:Chief Revenue Officer設置企業、非設置企業の収益成長率の差は、1.8倍というインパクト

日本企業を取り巻く環境と長期的課題

近年、日本企業はパンデミックや国際的な紛争など、外部環境の急激な変化に直面してきました。しかし、経営課題の本質は10年以上変わっていません。「売上・シェア拡大」「収益性向上」「人材の強化」は依然として最重要な経営課題です。

 

特に日系製造業の過去30年を振り返ると、売上高は緩やかに回復傾向にあるものの、1995年度を基準としたCAGR(年平均成長率)はわずか0.48%にとどまっています。さらに、粗利率のCAGRは0.03%、営業利益率は1.66%と、収益性の改善は販管費の圧縮によって辛うじて達成されてきたことがうかがえます。つまり、本業での利益成長は限定的であり、構造的な課題が残されています。

日系製造業のトレンド(30年間)

出典:独立行政法人統計センター「法人企業統計調査 製造業合計」を基にEY作成、https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003060791(2025年11月1日アクセス)

しかし、日本の製造業は、北欧などと比較するとサービス事業への転換が大きく遅れていることがわかります。経済産業省の調査では、日本と北欧のサービス化への移行段階を5段階のレベルで示しています。

第0段階:サービス提供なし
第1段階:製品販売につなげるサービス(設置サービス、ヘルプデスク等)
第2段階:顧客との長期関係につなげるサービス(フルメンテナンス等)
第3段階:顧客のオペレーション変革につながるサービス(ノウハウの外販等)
第4段階:顧客のビジネスモデル変革につながるサービス(プラットフォーム提供等

驚くべきことに、日本は、「サービス提供なし」が45.5%と圧倒的に高い状況にあります。一方、比較に出されている北欧は、「顧客のオぺレーション変革につながるサービス(ノウハウ外販等)」が39.6%と突出して高い状況にあります。日本は残念ながら、11.6%とされており、北欧の1/3以下という状況にあります。

このように日本のサービス化の状況は北欧と比べても大きく水をあけられている状況であり、その結果が、既述したマージンの差として示されていることがうかがい知れます。サービスシフトへの変革は、売る対象(モノ)が変わるだけでなく、顧客のペルソナや購買プロセスも大きく変化することを意味します。結果として、営業手法や顧客接点のあり方も抜本的に見直す必要があります。

顧客接点組織の分断と課題

近年、顧客中心型のプロセスや組織デザインが注目されています。The Model型に象徴される専業・分業型のオペレーションモデルは理論上有効ですが、現実には「分断」化が進み、個別最適に陥っている企業が少なくありません。

顧客中心型のオペレーションを設計するには、マーケティング、インサイドセールス、営業、コンタクトセンター、カスタマーサクセスといった広義の顧客接点組織を束ね、時にはプロダクト開発やブランディングまで統合的にマネジメントする必要があります。

では、この広範な領域を誰が担うべきなのでしょうか? CMOなのか、CCOなのか、COOなのか?

海外で注目されるCROという役割、いまこそ日本に

この問いに対する一つの答えが、CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)です。CROはCEO直下で顧客接点組織を一元管理し、データ統合とKPI連動によるレベニューマネジメントを推進します。目的は、持続的な収益拡大の実現です。

実際、Fortune 100企業ではCROを設置している企業が、同業他社に比べて1.8倍高い収益成長率を達成しているという調査結果があります。近年、日系企業でもCROやCRO室、RevOps(Revenue Operations)といった組織横断的なマネジメントを担う部門の設置が進み始めています。

CROがもたらす価値

CROの役割は単なる営業責任者ではありません。マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなど顧客接点全体を統合し、データに基づく意思決定を加速させます。これにより、以下の効果が期待されます。

  • 収益性の向上:サービス化やサブスクリプションモデルへの移行を支援
  • 顧客体験の最適化:分断された顧客接点を統合し、シームレスな体験を提供
  • 組織の成熟度向上:KPI連動型のマネジメントにより、全社的な収益ドライバーを明確化

EYができること

EYのCXT(カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション)ユニットでは、CROアジェンダを策定し、日本企業の経営課題である「売上・シェア拡大」「収益性向上」「人材強化」に対応する6つのオファリング(コンサルティング・メニュー)を整理しました。


これらは個別化されたコンサルティング・メニューではなく、密接に連関する体系です。

例えば、販路開拓・営業力強化支援を進めると、製品・サービスの独自の提供価値は何か、その提供価値をどのように顧客に伝えていくのかなど、製品・サービスの強みの見直しといったブランド戦略やマーケティングの在り方の見直しが必要になるケースが多くあり、「販路開拓・営業力強化支援」と「ブランディング戦略支援」を組み合わせてご支援することもあります。

お問い合わせ

より詳しい情報をご希望の方はご連絡ください。


また、営業現場をハンズオン型(「販路開拓・営業力強化支援」)にてご支援をするとCRMやSFAなどを導入したが十分な効果を得られず、むしろ、業務が非効率なケースを散見します。

このような場合、現場の営業力強化をご支援するのと同時に、ツールの使いこなし方、画面(UI)の再設計というよりは、マネジメントの在り方の見直し(「カスタマーテック高度化」)を組み合わせて、ご支援をすることがあります。

また、セールスイネーブルメントの強化・立上げ(「エンプロイーサクセス支援」)へ派生してご支援することで、CRMやSFAの利活用を高度化していくケースもあります。

このように、複合的に発生する課題をハンズオン型での支援を軸にそれぞれのオファリングを組み合わせ、または連続的にご支援することで、CROが取り組むべきアジェンダの解決に取り組みます。

まとめ

日本企業は長期的な成長鈍化と収益性の課題に直面しています。その背景には、製品のコモディティ化やサービスシフトの遅れがあります。今後の成長には、顧客接点の分断を解消し、統合的なレベニューマネジメントを実現することが不可欠です。

CROはその鍵となる存在です。CEO直下で顧客接点を統合し、データドリブンな意思決定を推進することで、持続的な収益成長を実現します。EYはCROアジェンダを通じて、企業の変革をハンズオン型で支援し、売上拡大・収益性向上・人材強化という経営課題の解決に貢献します。


サマリー 

日本企業の成長鈍化や収益性向上などの経営課題に対し、いま注目される最高収益責任者取り組むべきアジェンダ(CROアジェンダ)を解説。EYはこのCROアジェンダについて、6つのオファリングで課題解決をご支援致します。


共同執筆者

小林 洋介
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション ディレクター

※所属・役職は記事公開当時のものです。




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