しかし、日本の製造業は、北欧などと比較するとサービス事業への転換が大きく遅れていることがわかります。経済産業省の調査では、日本と北欧のサービス化への移行段階を5段階のレベルで示しています。
第0段階:サービス提供なし
第1段階:製品販売につなげるサービス(設置サービス、ヘルプデスク等)
第2段階:顧客との長期関係につなげるサービス(フルメンテナンス等)
第3段階:顧客のオペレーション変革につながるサービス(ノウハウの外販等)
第4段階:顧客のビジネスモデル変革につながるサービス(プラットフォーム提供等
驚くべきことに、日本は、「サービス提供なし」が45.5%と圧倒的に高い状況にあります。一方、比較に出されている北欧は、「顧客のオぺレーション変革につながるサービス(ノウハウ外販等)」が39.6%と突出して高い状況にあります。日本は残念ながら、11.6%とされており、北欧の1/3以下という状況にあります。
このように日本のサービス化の状況は北欧と比べても大きく水をあけられている状況であり、その結果が、既述したマージンの差として示されていることがうかがい知れます。サービスシフトへの変革は、売る対象(モノ)が変わるだけでなく、顧客のペルソナや購買プロセスも大きく変化することを意味します。結果として、営業手法や顧客接点のあり方も抜本的に見直す必要があります。
顧客接点組織の分断と課題
近年、顧客中心型のプロセスや組織デザインが注目されています。The Model型に象徴される専業・分業型のオペレーションモデルは理論上有効ですが、現実には「分断」化が進み、個別最適に陥っている企業が少なくありません。
顧客中心型のオペレーションを設計するには、マーケティング、インサイドセールス、営業、コンタクトセンター、カスタマーサクセスといった広義の顧客接点組織を束ね、時にはプロダクト開発やブランディングまで統合的にマネジメントする必要があります。
では、この広範な領域を誰が担うべきなのでしょうか? CMOなのか、CCOなのか、COOなのか?
海外で注目されるCROという役割、いまこそ日本に
この問いに対する一つの答えが、CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)です。CROはCEO直下で顧客接点組織を一元管理し、データ統合とKPI連動によるレベニューマネジメントを推進します。目的は、持続的な収益拡大の実現です。
実際、Fortune 100企業ではCROを設置している企業が、同業他社に比べて1.8倍高い収益成長率を達成しているという調査結果があります。近年、日系企業でもCROやCRO室、RevOps(Revenue Operations)といった組織横断的なマネジメントを担う部門の設置が進み始めています。
CROがもたらす価値
CROの役割は単なる営業責任者ではありません。マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなど顧客接点全体を統合し、データに基づく意思決定を加速させます。これにより、以下の効果が期待されます。
- 収益性の向上:サービス化やサブスクリプションモデルへの移行を支援
- 顧客体験の最適化:分断された顧客接点を統合し、シームレスな体験を提供
- 組織の成熟度向上:KPI連動型のマネジメントにより、全社的な収益ドライバーを明確化
EYができること
EYのCXT(カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション)ユニットでは、CROアジェンダを策定し、日本企業の経営課題である「売上・シェア拡大」「収益性向上」「人材強化」に対応する6つのオファリング(コンサルティング・メニュー)を整理しました。