EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
近年、日本企業を取り巻く事業環境は大きく変化しています。しかし、一般社団法人日本能率協会「第45回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題 2024」等によれば、経営者が直面する課題は、「人材の育成」、「収益性の拡大」、「売上・シェア拡大」が常に、トップ3にあげられ、新型コロナウイルス感染症が、まん延した時期を挟んでも、過去10年変更なく、長らく経営者が抱える課題であると言えます。
一方で、製品やサービスのライフサイクルは短くなり、コモディティ化の加速が提供価値の見直しを余儀なくしています。かつては『良い製品を作れば売れる』という時代もありましたが、今や顧客は多様なチャネルから情報を得て、購買プロセスの大部分を営業担当に会う前に済ませてしまうような時代になりました。また、総務省の調査によれば、25年間の中で、販売従事者は、約160万人も減少しており、営業という機能や役割を再定義し、「売る力」をいかに維持・向上させていくのかが、経営上の重要な課題となっています。
こうした中で、インサイドセールスやデジタルマーケティング、カスタマーサクセスなど顧客接点の在り方を大きく変革しようと試みを始めている企業が増え、変化に対応できない企業は、収益成長が鈍化、既存顧客の維持すら困難になる局面に直面しています。
収益が上がらない要因の多くは、単に『営業力不足』という言葉で片付けられるものではありません。実際には以下のような構造的な課題が横たわっています。
第一に、組織の縦割り(タコつぼ化)です。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、コンタクトセンター、カスタマーサクセスがそれぞれ独自のKPIで動いていると、顧客にとっては断絶した体験となります。
例えば、マーケティングチームが作ったリードをフィールドセールスが受け取らない、または、リードから受注へのコンバージョン率が極めて低いというような経験はないでしょうか。このような事象が起きるケースは、獲得すべき顧客像(ペルソナ)がかみ合っていなかったり、トスアップの条件が必ずしも十分に整合していないことに起因します。
第二に、マネジメントへのデータ活用の不全です。もしくはマネジメントの標準化不足と表現すべきかもしれません。
SFAやCRMを導入していても、入力負荷が高く現場に定着しないために、有効なデータが蓄積できず、マネジメントに使えないということはないでしょうか。一方で、入力負荷の高さは、入力項目の多さ、煩雑さだけでなく、上長への報告メール、チャット、時には、エクセル等の報告資料作業(重複作業)に時間がとられている企業も少なくありません。
ここまでの苦労を現場に強いる一方で、上長からの的確なフィードバックがなかったり、意思決定につながらない、さらには上長によってマネジメントスタイルが異なりさまざまな流派が生まれ、担当者の対応が複雑化するという状況は多くの企業に共通しています。
マネジメント(状況把握・指示・意思決定)に必要な情報とは何なのか、どんな情報があれば適切なマネジメントができるのかを整理しきれずに導入するとしばしば、起こる現象です。
第三に、売り「モノ」と売り「カタ」の複雑化です。顧客ニーズを満たすため、多くの企業は、製品やサービスを充実化させてきました。しかし、この充実した製品・サービスは、業務を複雑化し、担当者が覚えること、対応すべき事項が指数的に増えていきます。さらに法人ビジネスの場合、価格は相対で決まることが多いため見積調整や協力会社調整などの組み合わせが無数に広がり、さらに業務を複雑化し、顧客と向き合うべき時間を失う悪循環に陥ります。
その結果、EX(従業員体験)が損なわれ、CX(顧客体験)も低下し、顧客の離反や競合に負け、収益は頭打ちになります。
また、構造的な課題を放置したまま収益拡大のための「業務生産性向上」や「顧客満足度向上」を掲げ、デジタル化に取り組んでも、期待した効果は必ずしも十分には得られません。むしろ現場の疲弊を加速させ、離反(退職)を誘発するのです。
では、どうすれば収益を拡大できるのか。やはり、営業改革のようなビッグバンをすべきなのでしょうか。
EYでは、ビッグバンは必ずしも必要ないと考えています。
構造的な問題を整理し、系統立て、問題解決していくことは、非常に重要な取り組みではありますが、時間がかかりすぎるというのが、経営者の意見ではないでしょう。
EYでは、即効性高く収益を拡大するのであれば、『売りカタ』のイノベーションが重要だと考えています。
売りカタのイノベーションを実現するために重視すべきポイントは、次の3つに集約することができます。
収益拡大が課題になっている企業の多くは、「実市場」、「実顧客」へのアプローチが不足し、最適な製品・サービスを顧客に提供していくための仮説と検証サイクルが十分に機能していないことが原因であることがしばしばあります。
企業によっては、成功確率を追いかけるがゆえに、A(終わらないプランニング)やB(局所的・場当たり的な実行)の取り組みとなり結果、C(実市場・実顧客の理解不足)に陥り、悪循環となっていることが多いと言えます。
EYは、このような状況下にある企業に対し、販路を見直し、市場と顧客の対話数を引き上げる(試行回数を上げる)ことを推奨しています。極端なことを言うと、プランニングの精度は70%あれば十分なのです。むしろ、早く市場に出て顧客に合わなければビジネスは始まらないのです。
EYのカスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション(以下、CXT)は、ABOTというフレームワークを収益拡大に向けた検討の下敷きとしながら、現場伴走型(ハンズオン)で、営業力強化の実現をご支援いたします。
ABOTとは、CXTが独自に開発した営業力強化のためのフレーム枠で、Assess、Build、Operate、Transformの頭文字をとった造語です。
Assess工程では、現状の売りカタを確認します。通常は売上データなどを過去数年分に遡り分析をしながら、製品・サービスの分析や勝ち筋を分析し、強化すべき市場・顧客を特定していきます。
Build工程は伴走型で実践的に営業力強化を行っていきます。従来、現状分析の後、あるべき姿を描き、キレイな営業戦略を設計するケースがありましたが、ABOTでは、それはいったん劣後し、勝率を上げることを最優先した戦術を見直していきます。
ABOTは、認知度向上やリード創出のためのマーケティング及び、ブランディング(提供価値)の再設計をご支援することで、売りカタをイノベーションしていきます。
営業戦術の見直しを統合的にご支援する中で、必ずたどり着くのは、売りモノの弱さです。
近年、製品やサービスのコモディティ化に悩む企業は少なくありません。売りカタのイノベーションは、実市場・実顧客へのアクセスを増やすため、顧客ニーズを必ずしも十分に満たすことができていないことに気づくことがしばしばあります。
CXTではそれをミッシングピースの発見と呼び、顧客ニーズの理解を通じて、製品・サービス群、ブランドメッセージなどを再設計します。
サービスデザインをすることで、新たなブランディングや提供価値の設計があり、マーケティングと営業をハンズオンでご支援することで、持続的な事業成長のサイクルを作りだすご支援をいたします。
最後にTransformでは、Build とOperateで行ってきたアプローチやノウハウをクライアント自身が環境変化に応じて持続的に成長をしていけるよう、プレイブック化していきます。近年は、プレイブック化だけではなく、セールスイネーブルメント組織の設計、立上げ運営のご支援を通じて、これまでの取り組みを体系化して組織にインストールしていきます。
経営の重要課題である収益拡大の鍵は、営業だけなく、マーケティングやインサイドセールス、コンタクトセンターやカスタマーサクセスなど顧客接点のすべてに隠されています。
近年、顧客体験の再設計を企図する企業が増えてきました。しかし、専業分業化されすぎてしまった今の日本企業には今一度、プロセス(または組織)横断的に顧客体験を最大化する戦略を力強く牽引する責任者が必要になってきました。
海外では、CRO‐Chief Revenue Officeという新たなCxOが誕生し、注目を集めています。ABOTは、そうした組織横断的な取り組みをご支援すべく生み出されたソリューションであり、クライアント企業の持続的な事業成長の一助となることを確信しています。
【共同執筆者】
小林 洋介
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション ディレクター
※所属・役職は記事公開当時のものです。
日本企業が直面する重要な経営の課題である持続的成長を阻害する背景には縦割り組織やデータ活用不足、営業プロセスの複雑化があります。EYは独自のABOTフレームワークを通じて、顧客理解を強化し、営業の在り方を見直し、持続的な成長を支援します。
メールで受け取る
メールマガジンで最新情報をご覧ください。