労働人口減少化社会における経理財務部門の変革:EYのマネージドサービスがもたらす持続可能な業務体制

情報センサー2026年3月 FAAS

労働人口減少化社会における経理財務部門の変革:EYのマネージドサービスがもたらす持続可能な業務体制


労働人口が減少する社会において、企業は付加価値の高い業務をより効率的な体制かつ継続可能な形で提供するための変革が求められています。最新の先進技術や取組み事例を踏まえ、より効果的な打ち手を着実に実行していく必要があります。


本稿の執筆者

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 マネージドサービス推進チーム

米国会計士 石津 有輝
米国会計士 矢野 卓
公認会計士 佐藤 弘毅

連結会計・リース・財務などのバックオフィス業務を包括的に受託し、事務負荷の軽減に貢献。EYの専門性と品質を活用し、アウトソーシングやコスト削減から長期的価値創出へ導き、企業の競争力強化を支援。



要点

  • 経理財務部門には、分析や経営支援といった付加価値業務へのシフトが進みにくい、という構造的な課題がある。
  • 持続可能な業務体制の見直しには、業務の効率化と体制の再構築を両輪で進めることが有用である。

Ⅰ はじめに

企業は国際的な環境変化や労働人口の減少といった厳しい競争環境の中で、戦略的な意思決定力を高めるとともに、生産性の高い組織体制への変革が求められています。その中で経理財務部門は、限られたリソースで安定的かつ高品質な財務報告・開示を維持しつつ、業務効率化を進め、より付加価値の高いガバナンス基盤の強化や経営支援業務等に注力していく必要があります。しかし、従来の効率化施策やシェアード化だけでは十分な成果が得られないケースが少なからずあり、安定性と変革を両立する新しいアプローチが必要です。第Ⅱ章では、経理財務部門が直面する課題を整理し、それに対する全般的なアプローチを説明した上で、第Ⅲ章以降で業務効率化の推進と体制の構築を検討する際のポイントを代表的な経理業務ごとに説明します。


Ⅱ 経理財務部門の課題及び変革へのアプローチ

1. 経理財務部門に求められる役割の変化 

競争環境が日々高まりビジネスが複雑化する中で、経理財務部門はその意思決定や事業運営そのものへの支援機能、データ品質やデータ利活用度合いを高める機能など、より付加価値の高い業務へのシフトを求められています。

国際情勢の変化、先進技術の発達、国内外における人口動態の変化、国内外の社会構造の変化など、企業を取り巻くマクロ環境が大きく変わってきています。その中で、変化する環境への柔軟な対応力、激化する競争社会に対応する競争力、労働力の源泉への対応が求められるようになってきました。企業の経理財務部門においてもこうした変革を意思決定サポート部門として支援するとともに、自部門としてより生産性の高い体制で付加価値業務へのシフトを図るという変革が求められています。

2. 労働力不足と業務効率化の必要性

人口動態の変化により、経理財務部門は必要な人材を確保することが難しくなっています。特に、少子高齢化の影響で、業務を継続するための人手が不足し、業務の属人化やキーマンリスクが進行しています。

また、現業の対応に追われている状況が続き、分析や経営支援といった付加価値業務へのシフトが進みにくいという構造的な課題があります。

3. シェアードセンター運用に関する課題

シェアードセンターを導入したものの、業務効率化が思うように進まないケースが多く見られます。これは、各拠点や部門で異なる手順やルールを残したままにしているなど、業務プロセスの標準化を抜本的に行っていないことが要因として考えられます。

4. 経理財務部門の変革

「業務効率化の推進」と「体制の見直し」の2つの方向性で検討することが重要です。アプローチとしてはリフト&シフト型、及び標準化・効率化先行型などがあり、例えば、「体制の見直し」では業務役割分担の明確化、業務集約化、社外リソースの活用といった手法が考えられます。

これらの取組みについては従来、各企業で行われてきましたが、必ずしも当初想定したような効果が十分に上がっていないケースもあると思われます。これは、属人的なスキルに負うところが多く業務効率化が徹底されておらず、また業務効率化と体制の見直しがそれぞれ独立の施策として検討され、有機的な取組みとして検討が進められていなかったことも一因と考えられます。

変革をより実効性をもって進めるには、先進技術の積極的な活用を通じて従来は効率化の対象外とされていた業務プロセスに対しても聖域なく業務標準化・効率化を進め、その上で役割の見直しを社内外問わず柔軟に進めることが重要です。

変革のアプローチは、企業の業務特性や組織の成熟度に応じて選択・併用されるものであり、状況に応じて使い分けることが重要です。このような課題認識と変革へのアプローチを踏まえ、第Ⅲ章では業務効率化の推進と体制の構築を検討する際のポイントを代表的な経理業務ごとに説明します。EYが提供するマネージドサービスがどのように経理財務部門の変革を支援し、企業経営の高度化に寄与でき得るかについて紹介した各サービスページへのリンクは、記事の最後に列記します。なお、業務効率化に関する具体的な施策については、第Ⅳ章で詳しく記載しています。


Ⅲ 業務効率化の推進と体制の構築の検討ポイント

基本的な考え方

業務効率化の推進と体制の構築を効率的・効果的に進めるためには、既存の業務を定型業務と高度・専門業務に切り分け、それぞれの業務に内在する課題(業務工数や必要人員数・スキル、それらに対する人員の過不足を含む)を把握することが出発点となります。

業務効率化は、不要な業務の排除、標準化、自動化に加え、役割分担を見直した上で、人材面の手当てとして不足する業務領域に内部人材の異動、新規/中途採用、派遣社員の活用など適切な方策を立てることになります。

どのような手段で人材を確保するかについては人材の流動性や、確保のしやすさ、コスト面などの各要素を勘案した上で検討することになります。緊急性が高い場合や内部調達が難しい、またリソース配置として外部調達が適切であるといった場合には、外部リソースを用いることも選択肢になり得ます。

例えば、定型業務が多くを占める場合には低単価の外部人材を活用し、高度・専門業務に本社の熟練人材を充てるケースもありますし、熟練人材そのものが不足しているケースでは外部専門家人材を活用することも有用です。

一般に経理業務効率化というとSSCやBPOが思い浮かびますが、予算やリソースの面から全面的な体制変更が難しい場合もあるため、そのようなケースでは個別領域から徐々に着手していくことで効果を得ることが可能と考えます。

以下では、専門業務が必要となり社内・外部化、標準化推進において論点に上がりやすいと想定される4領域に焦点を当て、業務ごとの検討ポイントを説明します。

1. 連結決算業務 

連結決算業務は、一般に前提となる知識が高度に求められることから難易度が高い業務と考えられます。一方で、自動仕訳や入力チェックなど連結システムによる自動化・標準化対応が比較的進んでいるため、定型業務と高度・専門分野の区分がしやすい分野でもあります。

例えば、下記の業務のうち連結パッケージ入力、収集データチェックなどは定型業務として区分し、サブ連結、連結決算処理は本社の熟練人材や外部の高度・専門人材を充てることが考えられます。また、連結システムの機能の活用が必ずしも十分でないケースもあるため、入力チェック項目の充実やキャッシュフロー用の設定改善により、業務負荷そのものを減少させることも有効です。

2. リース会計業務 

日本会計基準における新リース会計の強制適用まで残り約1年となり、各企業の対応が進んでいます。新基準導入における会計論点の整理や、導入後の必要データ収集プロセス構築などは専門知識や経験が必要である一方で、導入後のプロセス運用(情報収集からデータパッケージへの入力含む)は定型業務化が可能な領域と考えられます。

また、情報収集からデータパッケージへの入力業務においては、リースをオンバランス処理するために必要な情報が多岐にわたり、かつ幅広い部署から収集する必要も想定されることから、業務効率化のためにプロセスをシステム化(リース会計パッケージソフト導入、AI-OCRなどを活用した契約情報の抽出など)することも有用な手段と考えられます。情報収集プロセスの中にも新リース会計における特有の会計処理判断(例えば実質リースなど)には専門的な知識を要する場合があります。このような判断を伴う業務についても一定程度の判定をAIが実施することが可能になってきているため、業務効率化の観点からはAI活用の検討を並行して進めることが有効です。

上記業務全てを既存リソースのみで対応することが難しい場合、外部人材を活用し、社内リソースをより付加価値の高い業務にシフトすることもリソースの有効活用につながると考えられます。

3. 単体決算業務

単体決算・個別財務諸表作成業務、そして法定決算業務は、一般的にマニュアルが整備され業務の標準化が進んでいれば定型業務が多くを占める業務と考えられます。マニュアルに従ったデータ収集や入力作業がメインとなる単体決算業務は定型業務として分類し、その中でも複雑な会計処理や開示の検討については会計プロフェッショナルが対応する高度・専門分野として分類することで、効果的な業務設計につなげやすくなると考えます。

また定型業務の割合を広げるための決算業務の標準化や業務効率化については、業界や社風に合った最適なプロセス化を行うために高度・専門人材の活用領域と考えられます。例えば、多くのプロセス改善の経験を持つプロフェッショナルが支援することで、企業はより多くの業務負担を軽減し、自社リソースを戦略的な業務にシフトさせることが可能になります。

なお、定型業務と高度・専門分野の両領域で外部人材を活用することも有効な手法と考えています。

4. 内部統制運用業務

内部統制報告制度が導入されて15年以上が経過しますが、2024年4月1日以後開始事業年度から適用されている改訂後の内部統制報告制度では、同制度の実効性に関する懸念や経済社会の構造変化やリスクの複雑化に対応した内部統制の整備運用が求められています。一方で多くの企業が、人手不足と専門性、経営層からの高度化要求、品質確保とリスク低減といった課題を抱えています。限られたリソースでこれらの課題に対応するためには、定型業務と熟練した専門知識・能力が求められる業務とを区分し、社内人材と外部人材を適所に配置する必要があります。

  • 内部統制の運用評価

内部統制報告制度への対応を通じてルール化及び文書化が進んだ内部統制の運用評価は、外部人材を活用しやすい業務領域と考えられます。必要に応じてこのような定型業務を低単価の外部人材に外注することで、ビジネスに関する豊富な知識や経験を有する内部人材を戦略的業務へ配置し、コスト最適化や、事業規模やリスク状況に応じた内部統制運用の柔軟性向上を図ることが可能となります。

  • 内部統制の効率化・標準化対応

熟練した内部人材の知見と内部統制に精通した外部専門家の知見を組み合わせることで、最新の規制やベストプラクティスに沿う標準化された内部統制を設計・維持することができます。


Ⅳ 業務効率化に関する具体的な施策

業務の可視化・効率化、及び業務役割分担の見直しに当たっては、取組みの対象範囲を一部の部門・チームに限定せず、全社・グループ会社を含めた横断的な視点で施策を講じることが高い効果を生むと考えます。

図1 業務効率化の推進例 

図1 業務効率化の推進例 
出所:各種資料を基にEY作成

1. 業務の可視化・効率化の推進

業務プロセスの作業時間、プロセス前後関係、組織間の関係性を可視化することで、重複業務、ボトルネックなど課題を特定できます。業務自体の見直し、あるいは課題に対する改善を実施することで業務全体の効率化を実現します。可視化・効率化で採られる手法について次の2点を紹介します。

(1) 業務プロセスの見直し

既存の業務プロセスをゼロから見直すアプローチとして、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)手法があります。現行業務を前提とした改善ではなく、根本からの業務変革を目標として必要性の観点で業務プロセスの断捨離を行います。

既存システムのリプレースやマネージドサービス導入などの事案と併せて取り組み、現場の抵抗感を薄めることで改革の実現性が高まります。 

(2) 技術を活用した業務の効率化

課題に対して技術を利用して効率化を図ります。業務プロセスの見直しと並行して実施することで、業務効率化にとどまらず価値創出など高度化を図ります(AIを活用した業務の自動化・効率化、Power Query、BI等のセルフサービス型ユーザーツールの利用によるデータ集計による業務効率化、作業用に属人化したExcel等ツールの標準化、クラウドコンピューティングを利用等)。

2. 業務役割分担の見直し

経理財務部門の役割を再定義し、長期的な企業価値の最大化に貢献する機能を強化します。具体的には、経理財務部門が経営層へ積極的に関与し、財務データを基にした情報提供や業績モニタリングのレポートを通じて経営戦略に係る意思決定の支援を行います。

役割の再定義に際して、標準化した定型的な業務は前述の自動化、あるいは業務の外部化を検討します。これにより経理財務部門はコア業務に集中できるようになります。


Ⅴ おわりに

今後の環境の変化に備えるため、持続可能な業務体制の見直しに向けて、業務効率化と体制の再構築を両輪で進めることが有用であると考えます。各社の置かれた状況は異なるため、進め方自体については専門家のアドバイスを活用することも有用です。

EYでは、各種ソリューションを提供しています。下記リンクからご覧ください。本稿が、企業にとって決算支援や業務効率化を検討する際の一助となれば幸いです。


【共同執筆者】

EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部 マネージドサービス推進チーム

公認会計士 古川 吉克
米国会計士 田中 浩充
      市丸 基行
米国会計士 廣瀬 優
      前島 勝太


サマリー

国際競争や労働人口動態などの環境変化の中、各企業の経理財務部門は、生産性の高い組織をつくり、安定かつ高品質な業務サービスや高付加価値業務を、限定的なリソースで提供できるようシフトが求められています。組織体制変革の1つの取組みとして、業務標準化とマネージドサービスの活用に焦点を当てた検討のポイントを解説します。



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