電子カルテなど病院情報システム導入セミナーの開催報告

病院の診療情報を「使える情報」に変えるには

病院には多くの診療情報が蓄積されています。しかし、情報が部門やシステムに分散し、日常業務が回っていることで課題が見えにくい場合があります。本稿では、現場起点で情報基盤を見直す方法を考えます。


要点

  • 日常業務が回っていても、情報の分断が診療や患者対応の負担を生んでいる場合がある。
  • 横断的な情報基盤には、システム連携と部門間の業務・運用設計の両方が必要である。
  • ベンダーの実装力に加え、第三者による課題整理と合意形成支援も有効な選択肢である。

病院には情報がある。それでも課題は見えにくい

病院では、患者基本情報、検査結果、画像、診療文書、入退院支援の記録、手術記録、算定情報など、多くの情報が日々蓄積されています。ところが、情報が存在することと、必要な人が必要な場面で使えることは同じではありません。

情報が部門やシステムごとに分かれていても、職員の経験、電話連絡、転記、紙の一覧などで日常業務は回ります。そのため、情報の分断は「現在の運用で対応できている課題」として見過ごされがちです。しかし、その状態は確認や入力の負担を増やすだけでなく、診療に必要な情報が適時に共有されない、情報の更新が行き届かない、記録と患者の状態が正しく結び付かないといった問題につながります。

こうした課題は、情報システム部門だけで把握することが難しい場合があります。実際の操作や部門間の受け渡しを担う職員へのヒアリングを通じて、初めて全体像が見えることも少なくありません。

現場で起きている「情報はあるのに使えない」課題

例えば、入退院支援で入力した患者情報が手術部門の記録へ連携されず、同じ内容を再入力しているケースがあります。患者情報は院内に存在していても、必要な画面から参照できなければ、職員にとっては「使えない情報」です。

また、複数患者を横断して確認する一覧画面が用意されていても、表示や検索に時間がかかり、職員が個別の患者カルテを開いて作業しているケースもあります。機能があるかどうかだけでなく、実際の診療場面で使える応答速度や操作性が確保されているかが重要です。

さらに、患者のADL(日常生活動作)、移動方法、食事条件などを複数のシステムへ入力し、状態が変化するたびに更新する運用では、一方の情報だけが古いまま残ることがあります。これは単なる二重入力の問題ではなく、職種や確認画面によって異なる患者情報を参照するリスクでもあります。

横断的な情報基盤は、システムをつなぐだけでは完成しない

これらの課題に対し、情報を一つの画面に集めれば解決するとは限りません。まず、どの情報を正本とするのか、誰が入力・更新するのか、どの職種がどの場面で参照するのか、どの状態をもって確定とするのかを整理する必要があります。

同じ情報でも、入退院支援、病棟、手術、検査、医事では利用目的が異なります。各部門の要望をそのまま個別機能として追加すると、画面や運用が複雑になり、重複管理が残る可能性があります。共通化する情報と部門固有で管理する情報を分け、業務、権限、性能、責任分担を一体で設計することが重要です。

必要なのは、製品力と現場実装を支える組織力

横断的な情報基盤の構築には、複数システムを接続する技術だけでなく、医師、看護師、医療技術職、事務職などの業務を理解し、現場の言葉をシステム要件と運用へ変換できる人材が必要です。導入後も、設定、テスト、教育、稼働後の改善を継続しなければ、想定した機能が利用されない状態になりかねません。

病院がシステム会社を評価する際には、個別製品の機能や価格に加え、複数領域の専門人材を束ね、部門横断で提案できるか、既存の他社システムも含めて設計できるか、導入後まで責任を持って支援できるかを確認する必要があります。事業統合や組織再編は、専門性や人材、導入経験を束ねる手段の一つです。ただし、再編の事実ではなく、それによって病院への支援体制が実際に強化されているかを評価すべきです。

第三者の活用で、院内課題を病院全体の構想に変える

一方、システム会社だけに課題整理を委ねると、検討が提供可能な製品や機能を起点としたものになりやすい面があります。病院側でも、各部門が自部門の業務を中心に要望を出すため、全体最適の判断が難しくなることがあります。

そこで選択肢となるのが、特定の製品に依存しない第三者の活用です。第三者は、現場ヒアリングを通じて、職員が日常業務の一部として受け入れている負担や、部門間の受け渡しに潜む課題を可視化します。その上で、病院全体の方針、患者安全、業務効率、費用対効果を踏まえ、要求事項の整理、優先順位付け、ベンダー比較、院内合意形成を支援します。

重要なのは、システム会社と第三者のどちらかを選ぶことではありません。システム会社が持つ製品・技術・導入経験と、第三者が担う中立的な課題整理・全体設計・合意形成を組み合わせることで、現場の課題を実装可能な情報基盤へつなげやすくなります。

病院が確認すべき5つの視点

病院情報システムの更新や新規導入では、次の視点を確認することが重要です。

  • 現場の課題を、部門横断で把握できているか
  • 情報の正本、入力、参照、更新、確定のルールが明確か
  • 機能だけでなく、性能や実際の業務導線を評価しているか
  • システム会社の技術力と導入・運用支援体制を評価しているか
  • 第三者を含む体制で、全体最適と院内合意形成を進められるか

まとめ

病院内の情報分断は、職員の努力によって日常業務が回っているほど見えにくくなります。しかし、二重入力、確認作業、更新漏れ、施設間の処理制約は、業務負担にとどまらず、診療や患者対応にも影響し得ます。

診療情報を「使える情報」に変えるには、横断的な情報基盤と、現場の業務を踏まえた運用設計の両方が必要です。製品力と組織力を持つシステム会社を選ぶとともに、必要に応じて第三者の知見を活用し、潜在的な課題の把握から要求整理、選定、導入後の定着までを一貫して進めることが、病院全体の情報活用を前に進めます。

サマリー

日常業務に埋もれた情報分断を見つけ、診療情報を横断活用するには、システム連携、運用設計、部門調整が不可欠です。システム会社と第三者の強みを組み合わせることが、実効性のある情報基盤につながります。

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