EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本稿の執筆者
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 IFRSデスク 公認会計士 坂本 泰樹
2013年当法人に入社。製造業、観光業、鉄道業などの会計監査及び内部統制監査に従事。19年からの2年間はEY米国のシアトルオフィスに勤務。25年よりIFRSデスクに所属し、サステナビリティ開示基準の関連業務に従事。
要点
2023年6月に、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により、IFRS サステナビリティ開示基準(以下、ISSB 基準)として、IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」及びIFRS S2号「気候関連開示」が公表されました。日本国内においても、2025年3月にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)により、ISSB基準の内容を取り込んで開発されたサステナビリティ開示基準(以下、SSBJ基準)が公表されています。
現行の有価証券報告書においては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄においてサステナビリティ情報の開示が求められていますが、今後については、SSBJ基準に基づく開示を将来の有価証券報告書において求めることが、その適用時期や適用対象企業を含めて金融庁の金融審議会ワーキング・グループにおいて現在検討されています。
本稿では、ISSB基準及びSSBJ基準に基づくサステナビリティ関連財務情報の開示に役立つであろう、当法人が公表しているパブリケーション(基準及び実務対応に関する解説ならびに開示支援のツール)についてご紹介します。
本刊行物は、IFRSに関するEYの最新の解説及び見解をまとめたEY発刊の原著である「EY International GAAP® 2025」のうち、ISSB基準を取り扱っているパート(第52章 IFRS S1号及び第53章 IFRS S2号)の日本語版となります。
また、Applying IFRS:IFRS S1号及びIFRS S2号の解説は、毎年12月末時点の情報に基づくInternational GAAPシリーズの更新版(翌年6月末時点の情報)となります。本最新版では、ISSB基準で要求される開示を検討する企業の助けになるよう、「設例」や「よくある質問」等をより一層拡充しており、EYの見解も含め、ISSB基準を詳細に解説しています。
SSBJ基準は、ISSB基準の内容を取り込んで開発されていますので、SSBJ基準に基づく開示を検討する際の出発点として大変有用です。
詳細は、こちら(IFRSインサイト)をご確認ください。
11のセクター、68の産業別に気候に関連する定量的・定性的指標の産業別開示である、「IFRS S2号の適用に関する産業別ガイダンス」について解説しています。また、国内外企業のサステナビリティ情報開示の事例も盛り込んでいます。
詳細は、こちらをご確認ください。
本刊行物は、温室効果ガスプロトコル(GHGプロトコル)の要求事項を解説し、サステナビリティ報告の作成支援やデータ保証の経験から得られたEYの知見を提供しています。IFRS S2号及びSSBJ基準の「気候関連開示基準」においては、GHG測定に関して、GHGプロトコルへの準拠が要求されている※ことから、GHGプロトコルにおける要求事項の理解に大変有用です。
詳細は、こちら(IFRSインサイト)をご確認ください。
※ただし、法域の当局または企業が上場する取引所が、企業の温室効果ガス排出を測定する上で異なる方法を用いることを要求している場合は、当該方法を用いることができる。
ISSB基準の開示要求事項を満たすためにEYで開発した最初の開示の設例となります。IFRS S1号の「気候ファースト」の経過的な救済措置により、企業はIFRS S1号及びIFRS S2号を適用する初年度に、気候関連のリスク及び機会(IFRS S2号に規定)についてのみ報告することができ、本書においては、当該経過的な救済措置を適用することを選択した企業を例示しています。
本日本語翻訳版については、 オリジナル版(英語)にて脚注されている、各開示と関連するISSB基準の項番に対応する形でSSBJ 基準の参照番号も加筆していますので、SSBJ基準に基づく開示を検討する際にも出発点としてご参考にしつつ、適宜カスタマイズしていただくことを想定しています。
詳細は、こちら(IFRSインサイト)をご確認ください。
本チェックリストは、ISSB基準及びISSBが公表する関連ガイダンスに規定されている、必要な気候関連開示の概要を提供することを目的としています。なお、このチェックリストにはIFRS S1号に関連する開示要求事項が含まれていますが、気候関連以外のサステナビリティ関連のリスク及び機会の開示には対応していません。よって、前述の「気候ファースト」の経過的な救済措置により、適用初年度において、気候関連のリスク及び機会(IFRS S2号に規定)についてのみ報告する場合、本チェックリストがそのまま適用されますが、救済措置を適用しない場合には、気候関連財務開示を除くサステナビリティ関連財務情報に関するチェックリストは範囲に含まれておりませんので、追加的な検討が必要となります。 チェックリストは毎年更新され、ISSBによって行われるIFRS S1号またはS2号の修正が含まれます。
詳細は、こちら(IFRSインサイト)をご確認ください。
本書は、2023年6月にISSBが公表した「IFRSサステナビリティ開示基準」について解説しています。IFRSサステナビリティ開示基準は、企業の年次法定開示で連結ベースでの開示を求める、各国の制度開示への取り込みを想定して開発されています。また、企業はサステナビリティに係る「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という経営情報の開示が求められます。本書は、この新たな企業開示・企業経営の基本ルールを解説したガイドブックであり、S1基準(全般的要求事項)、S2基準(気候関連開示)の内容と対応をわかりやすく説明しており、第4章では、開示対応の実務について解説しています。
詳細は、こちらをご確認ください。
気候変動への対応が急務となる中、投資家をはじめとする有価証券報告書の主要な利用者は、気候関連のリスク及び機会が企業の事業、戦略、財務業績・財政状態にどのような影響を与えるかについて、企業が明確で実行可能かつ包括的な開示を提供することを期待しています。また、気候関連のリスク及び機会は、世界のビジネス環境を急速に変化させており、企業は現在のビジネス戦略をこの変化に適応させること、そして報告の透明性と開示される情報間のつながりを高めることが求められています。本稿で紹介した書籍、基準解説及び開示支援ツールが、皆さまの気候関連財務開示の作成にお役立ていただけましたら幸いです。
気候変動への対応が急務となる中、有価証券報告書の利用者は、気候関連のリスク及び機会がビジネスに与える影響について、明確で実行可能かつ包括的な開示を提供することを期待しています。新たな基準とそれに基づく開示について、さまざまな情報を収集し、適切に対応することが必要となります。
EYのプロフェッショナルが、国内外の会計、税務、アドバイザリーなど企業の経営や実務に役立つトピックを解説します。