EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY-Parthenonは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
要点
ハイパフォーマンスリーダーシップというと、規律、レジリエンス、プレッシャー下での実行力が連想されがちです。しかしEY-Parthenonの調査は、優れたリーダーには、適応力、休息・回復、共感力も必要であることを示唆しています。スポーツは長い間、経営層のリーダーシップを育成する場として認識されてきました。EY-Parthenonチームは、スポーツ経験のある経営層(アスリート系リーダー)とスポーツ経験のない経営層(非アスリート系リーダー)の比較を行い、前者のリーダーシップの強みである規律や明確な役割、フィードバックだけでなく、柔軟性の欠如や盲点、長期的計画における課題も特定しました。この調査は、アスリートとしての経験がビジネスにもたらす最大の価値は競争心だけでなく、レジリエントで適応力のある、ハイパフォーマンスを発揮するチームを構築するための運営基盤にあると示しています。
EY-ParthenonのCEO Outlook: High-Performance Leadership Surveyによると、スポーツの経験から生まれるマインドセットとビジネスにおけるリーダーシップの関係は、一般的なたとえが示すほど単純ではありません。これは経営層がよりアスリートのようになるべきか、ということではありません。問われているのは、スポーツのマインドセットに伴う限界に陥ることなく、その強みを生かせるか、ということです。
アスリート系リーダーは、規律ある地道な改善を通じてチームを動員し、リアルタイムのデータを活用、体系化したシナリオの作成を好み、戦略的優位性を追求する傾向があることが分かりました。しかし、スピードや長期的なトレードオフ、意識的な休息・回復のほか、心理的負荷の強い状況下でのコミュニケーションにおいて明確な課題も見られます。
現在の非線形で変化のスピードが速く、変動性と相互連関性が高い(NAVI)環境では、規律だけで継続したハイパフォーマンスを生み出せません。また、適応力のみでも十分ではありません。最高のパフォーマンスを発揮するリーダーシップチームは、両方のスキルを備えています。規律によって継続的に実行力を発揮し、環境が変化した際には適応力を持って応じるのです。今回の記事では以下の内容を取り上げます。
調査によると、アスリート系リーダーは一貫した規律あるパフォーマンスを重視する傾向があり、小さな達成を繰り返して、広範囲に及ぶ段階的な改善を進めます。これに対して、非アスリート系リーダーは、試行と迅速な適応を重視する傾向があります。
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続きを読む調査結果は、スポーツのマインドセットにおいては個人の卓越性よりも、ルーティンの確立、明確な役割、進捗の測定、継続的な改善などからなる運営基盤が重要である可能性を示しています。ビジネスの観点では、この結果は、パフォーマンスと競争優位性は包括的な変革施策ではなく一貫した取り組みによってつくられるという、小さな改善の積み重ねの成果を反映しています。
「一連の行動をほぼ自動化できるルーティンが身に付いていれば、不測の事態に対応するための認知的な余裕が生まれます。これはアスリートもビジネスも、軍隊でさえも同じことを言うでしょう。ルーティンを確実に守っていれば、一度にどれだけのことなら対応できるかが分かります。そしてどの作業を増やせる可能性があり、どの作業を減らすべきなのかを判断できます」と、ノルウェーのアグデル大学のスポーツ科学教授、Stephen Seiler氏は述べています。「どのような分野でハイパフォーマンスを追求するにせよ、認知的な余裕を生み出すためには良いルーティンが必要です。そうすることで、衝撃的な出来事や予測しない事態が起こった際にも落ち着いて行動することが可能になります」
スポーツでは、チームで成果を達成する際に個人の役割を明確にします。「スポーツ組織やチームにおいて、結果は非常に明確で、一目で分かります」と、米国オリンピック・パラリンピック委員会のPerformance Innovation LeadであるElliot Schwartz氏は述べています。「アスリートにとって、自分がチームの成果にどのように貢献しているかを理解するのは非常に簡単なことです。しかし、ビジネスの環境、特に大企業では、自分の貢献は見えにくくなります。企業で働く社員は、自分がプロジェクトで行った小さなタスクが、どのように組織の収益に影響したのかを知りたいと思うものです。企業はこの点をスポーツから学ぶことができます」
しかし、スポーツの経験が築き上げる規律は、同時に厳格さを生み出します。非アスリート系リーダーは、過度な計画に伴うリスクを認識する傾向があり、アスリート系リーダーの30%と比べて、55%の非アスリート系リーダーは、過度な計画はプロジェクトをコントロールできるという錯覚を生むと考えています。また、66%の非アスリート系リーダーは、詳細な計画は不測の事態への適応力を減少させると考えています(アスリート系リーダーは52%)。
リーダーシップにとって重要なのは、規律は、行動する自信を生み出すものであり、変化を拒むものとなってはいけません。最高のパフォーマンスを発揮する企業は、外部環境の変化に対応するための柔軟性を保ちながら、ルーティンとパフォーマンスの仕組みを活用して、組織全体の実行力を向上させます。
アスリート系リーダーの準備に対するアプローチは、見かけほど単純ではありません。アスリート系リーダーの47%は、特定の状況を想定して体系的なシナリオを作成しますが、同様のことを行う非アスリート系リーダーは34%にとどまりました。一方で、重要な局面のために想定したシナリオのシミュレーションを行うと回答した非アスリート系リーダーは47%であったのに対し、アスリート系リーダーは42%でした。この調査結果は、効果的な準備とは、計画を立てることではなく、プレッシャー下において的確に対処するために必要な自信や共通言語の構築、役割の明確化であることを示しています。
アスリートは常に指導を受け、試練を与えられ、プレッシャーがかかる場面で力を発揮することを求められます。こうした経験を通じて、共通の目的に向かって仲間を結束させるすべを身に付けたリーダーが自然と育つのです。
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地政学戦略グループ(Geostrategic Business Group)の存在意義は、企業が、地政学的情勢が事業に与える影響や、世界的に不安定なこの情勢をうまく乗り切る方法を把握するために支援をすることにあります。
続きを読む両者の違いは、危機対応の方法に最も顕著に表れます。突然の重大危機が発生した場合、アスリート系リーダーは、チームを動員して各メンバーに責任を割り当て、チームとして問題を解決する傾向があります。また、専任の「レッドチーム」に責任を任せる傾向もあります。一方で、アスリート系リーダー(19%)の約2倍にあたる36%の非アスリート系リーダーは一歩引いて事前にシミュレーションした対応指針またはシナリオを重視しています。
迅速な行動を必要とする状況では、チームとして考える手法は有利に働きます。「一流のアスリートは、長年にわたりハイパフォーマンスチームで活動してきました。そうしたチームの成功を左右するのは信頼、明確な役割、責任の共有です。アスリートは常に指導を受け、試練を与えられ、プレッシャーがかかる場面で力を発揮することを求められます。こうした経験を通じて、共通の目的に向かって仲間を結束させるすべを身に付けたリーダーが自然と育つのです」と、オリンピック2大会への出場経験を持つEY Athlete Programsのグローバルリード、Joice Maduakaは述べています。
一方で、ここから取締役会やリーダーシップチームにとって極めて重要な問いが浮かび上がります。プレッシャーに適応する能力を伸ばそうとしているのでしょうか。それとも、予測した通りに物事が運んだ時にのみ使える対応指針に投資しているだけでしょうか。
危機によって組織のリーダーシップを支える基盤が生まれるのではありません。危機に陥った時、これがあらわになります。
アスリート系リーダーは、人を動かすことに慣れていると考えられます。厳しい状況の中でチームの士気を保つことは容易と回答する傾向があり、メンバーやチームに働きかけることは難しいと感じにくいです。
また、アスリート系リーダーの重要な課題も明らかになりました。その場で必要な対応と長期的な戦略のバランスを取ること、即座に行動し、迅速に信頼性のあるデータと知識を入手することに苦心する傾向があったのです。
一見すると、これは意外に感じられます。スポーツにはスピード感と決断力というイメージがありますが、この強みは、常にビジネスに適用できるわけではありません。アスリート系リーダーは、プレッシャー下で人を動員することには非常に優れているものの、迅速な行動の必要性、不完全な情報、より長期的な戦略への影響を踏まえながら難しい判断を迫られた場合、苦心する可能性が高いのです。
この違いは、組織の評判に関連する状況ではさらに明確になります。取締役会に提示したデータが誤っていたことが原因で重大な不祥事が発生した場合、どのように対応するか質問した際に、アスリート系リーダーは、公の場で説明責任を果たすことと組織の安定性を優先する傾向があります。これに対し、非アスリート系リーダーは、再発のリスクを下げるために業務上の欠陥の特定にフォーカスする傾向があります。
しかし、どちらの資質も、それのみでは十分ではありません。危機的状況における優れたリーダーシップは、危機のさなかで組織の安定を図るための自信と説明責任に加え、失敗の原因を解明し、再発を防ぐための分析的な規律を必要とします。
類似したパターンは、意思決定においても見られます。アスリート系リーダーは、リアルタイムのパフォーマンスデータを意思決定のサポートとして活用することを支持します。非アスリート系リーダーは、予測的知見と将来を見据えた分析を使用する傾向があります。
これらの調査結果を合わせると、アスリート系リーダーは目の前の課題を実行することに自然と重きを置く一方で、非アスリート系リーダーは将来により目が向くことが分かります。
しかし、優れたリーダーシップチームはこの2つの視点を組み合わせます。ハイパフォーマンスとは、それぞれの強みを最大化するのではなく、強みが生むトレードオフを最小限にするために、最適なバランスを見つけることを意味します。
そのバランスは、特にコミュニケーションにおいて顕著に表れます。アスリート系リーダーは、複雑な状況をシンプルに伝えるのは容易だと回答する傾向がありました。概して、彼らのコミュニケーションスタイルは、明確さと一貫性、自信と組織内の連携を重視しています。
ステークホルダーが安心感を、チームが方向性の一致を、取締役会が確証を必要とするようなプレッシャーがかかる場面において、これらの資質は、組織が決断力を持って対応していると感じさせるために非常に重要なものです。
しかし、共感力を必要とする難しい対話では、同じコミュニケーションスタイルの効果が低下する可能性があります。ここでの違いは際立っています。非アスリート系リーダーの36%に対し、アスリート系リーダーの50%は、公の場でのコミュニケーションで、悪い知らせを共感しつつうまく伝えることが最も難しい課題の1つだと感じています。
この結果を、説明責任の欠如と捉えるべきではありません。むしろ、アスリート系リーダーは上司と部下の両者に対して、自らの失敗を認める傾向があることを示しています。
しかし、説明責任のみでは十分ではありません。透明性や話し方のトーン、タイミングが信頼をつくり出す場面においては、リーダーにとって、悪い知らせを共感しつつ伝える能力が不可欠となります。
休息・回復も、もう一つの重要な課題です。調査で明らかになった最も驚くべき結果の1つは、回復と関連しています。トップアスリートの世界では、継続的に成果を上げるには意識的な休息・回復が不可欠と以前から認識されてきました。一方で、アスリート系リーダーは、意識的な休息・回復の優先順位が低いとみられます。
強いプレッシャーが続いた後、再び全力で業務に取り組む前に、意識的に回復と振り返りのための時間を設けると答えた人は、アスリート系リーダーでは8%にとどまりました。一方、非アスリート系リーダーは29%でした。彼らは意識的に休むよりも、これまでのルーティンを大幅に変更することなく、パフォーマンスについて振り返る傾向があります(アスリート系リーダー33%、非アスリート系リーダー24%)。
この結果は、アスリート系リーダーが回復を軽視しているのではなく、強いプレッシャーの後でも勢いの維持を重視していることを表しています。しかし、今日のビジネス環境では、ハイパフォーマンスを維持するにはレジリエンスに加え、いつ立ち止まり、回復し、リセットするかを見極めるのが重要になります。
スポーツ経験の有無にかかわらず、89%のリーダーは、優れたリーダーシップを発揮するためには休息と振り返りが必要不可欠だと回答しました。この違いは、回復をどの程度重視しているかではなく、どのように普段の仕事に組み込むかにあります。アスリート系リーダーは、休息・回復を普段のルーティンの中に組み込まれたものとして考える一方で、非アスリート系リーダーは、振り返りのための時間は意図的につくるものだと捉えています。
EY-Parthenonができること
EY-Parthenonは、クライアントとともに、従来の枠にとらわれない実践的な思考で、今⽇のビジネスを真のインパクトへと導く、実現可能な戦略の実⾏を⽀援する戦略コンサルティングチームです。
続きを読む調査結果が示しているのは、ビジネスリーダーがアスリートのようになるべきだということではありません。むしろ、CEOや取締役会が、経営層チーム全体でより意図的にリーダーシップ能力を伸ばす必要があるということです。
スポーツのマインドセットは、規律、自信、一貫性、役割の明確化、士気の向上、リアルタイムのフィードバックをもたらします。一方で、スポーツ経験に依拠しないマインドセットは、適応力、共感性、外部環境への意識、戦略的先見性、あいまいさを受け入れる力をもたらします。
これからの競争優位性は、この2つのマインドセットを融合させることで生まれる可能性があります。補完し合う2つのリーダーシップの強みを意図的に統合することで、組織は不確実性の中を進み、パフォーマンスを維持して長期的価値を生み出す備えができます。
アスリート系リーダーは、サポート体制の重要性をよく理解しています。非アスリート系リーダーと比較すると、アスリート系リーダーは過去12カ月間でプロフェッショナルコーチやリーダーシップコーチ、メンター、組織内部の育成プログラム、仲間のネットワークまたは他者からのカジュアルなフィードバックを活用する傾向があります。
アスリート系リーダーにとって、これからの優位性はさらなる規律から生まれるとは限りません。それよりも、視野を広げ、思い込みに疑問を投げかけ、今日のビジネス環境において高まる要求に対する適応力を高めるために、サポート体制を活用することから得られるものがあるかもしれません。
「高いパフォーマンスを発揮するアスリートは、単純に、他の人より規律正しく、レジリエンスが高く、自らの目標に対するコミットメントが強いという誤解があります。しかし、実際には、ハイパフォーマンスを発揮するアスリートには彼らをサポートする人々や環境があり、それが非常に大きな違いを生むのです」と、国際自転車競技連合のCoach ExpertでありRoloBike Training Systemsの創設者およびCEOを務めるJulian Nunez Corredor氏は述べています。
「中心にいるのはアスリートですが、その周りには生理学者、技師、栄養士、理学療法士などを統率するヘッドコーチがいます。トレーニング、体の状態、器具の調整、回復が一貫して行われるよう、各専門スタッフを調整しています。そして専門スタッフたちの間のコミュニケーションが、実際にどれ程高いパフォーマンスを出せるかを左右するのです。全てが順調に進んでいる時、人々の目にはアスリートだけが映ります。しかし、物事がうまくいかなくなった時、サポートチームはアスリートに寄り添い、『あなたは一人じゃない、みんなで一緒に進もう』と声をかけるのです」
非アスリート系リーダーにとって状況は違うかもしれませんが、同じようにチャンスがあります。リーダーシップにスポーツの強みを取り入れるのです。ビジネスリーダーの強みを際立たせる適応力、共感力、戦略的な未来予測に、明確な役割、確立されたルーティン、効果的なチームの動員、一貫性のあるパフォーマンスへのフィードバックを取り入れることで、より卓越したリーダーシップを生むことができます。
優れたリーダーシップチームは、純粋なスポーツマインドセットか、純粋なビジネスマインドセットか、どちらか一方ではありません。その両方を組み合わせます。着実に実行できる規律、変化に対応できるだけの適応力、前に進むための自信、学び続ける内省力を兼ね備えています。
企業がAIへの対応や変革を進め、長引く不確実性に対処する中で、経営層のチームがスポーツとビジネスそれぞれの強みを統合できるかどうかが、競争優位性を左右します。それは、個人のリーダーシップの卓越性よりも重要となっていきます。
未来を切り開くのは、画一的な考え方をするリーダーではなく、規律と適応力、自信と共感力、実行力と先見性を統合するリーダーシップチームです。
優れたリーダーは、規律と適応力のどちらかを選ぶのではなく、両方を築き上げます。EY-ParthenonのHigh-Performance Leadership Surveyの結果は、実行力、レジリエンス、説明責任を、共感力と柔軟性、戦略的先見性と組み合わせることが長期的なリーダーシップの強みとなることを示しています。
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