EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
グローバル・ミニマム課税に係る初年度の申告対応について、前編・後編の2回シリーズで解説します。後編の本稿では、GIR、最終親会社等届出事項及び申告書(別表20関係)の作成・提出にあたっての具体的なポイントを取り上げます。
本稿の執筆者
EY税理士法人 グローバル・コンプライアンス・アンド・レポーティング・グループ 税理士 山口 優子
日系・外資系多国籍企業の税務申告業務、税金監査業務等に従事。外国子会社合算税制およびGM課税の専門チームに所属し、申告サポート業務、アドバイザリー業務に加え、申告に係るシステム開発にも携わっている。
※所属・役職は記事公開時のものです
要点
日本でのグローバル・ミニマム課税適用初年度の申告対応として、特定多国籍企業グループ(以下、MNEグループ)においては以下の申告書等の提出が必要となります。
前編では、各申告書等の概要に加え、日系MNEグループと外資系MNEグループとで提出が必要となる申告書等の範囲が異なる点について説明しました。
後編となる本稿では、各種申告書等の作成上に関する具体的なポイントや、提出の際の留意事項について解説します。
なお、あくまで日本の法制度に基づく申告対応についての説明であり、国外の法制度に基づく申告対応については本稿ではカバーしていませんので、ご了承ください。
特定多国籍企業グループ等報告事項等(以下、GIR)は、OECD(経済協力開発機構)が公表する統一フォーマットを使用して英語で記載します。GIRは、原則としてOECDモデルルールおよびコメンタリーに基づいて作成することとされており、作成にあたっては、OECDによるGIR説明ガイダンスおよび国税庁による特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領(以下、GIR記載要領)を参照することとなります。また、GIRの記載上の通貨は、原則として最終親会社等(以下、UPE)の連結等財務諸表における表示通貨を用いることとされています。
ここからは、日本のUPEが日本でGIRを提供するケースを前提として、GIRの3つのセクションに関して特に留意すべきと考えられる項目を取り上げます。なお、各項目におけるカッコ内の付番は、GIRフォーマット上の付番と対応します。
図1 Section 1の構成
MNEグループがセントラルファイリング※方式の適用を受ける場合には、本欄にUPE所在地国と構成会社等の所在地国との間の情報交換によりGIRを受領する国又は地域を記載します。このため、GIRの作成にあたっては、構成会社等が所在する国とUPE所在地国である日本との間にGIRの提供期限において有効な適格当局間合意があるかどうかを、MNEグループ自らOECDのウェブサイト等で確認することが必要となります。
※ 前編の第Ⅲ章1(2)参照
本表には、GIRの報告対象となる対象会計年度終了の日時点の情報を基に、構成会社等及び共同支配会社等について、所在地国、名称等の基本情報を記載します。日本国内を含むMNEグループ全ての構成会社等について記載をするため、法人数の多いMNEグループでは相当な情報量となります。特に持分割合については、所有者の区分(例:UPE、UPE以外の構成会社等、非グループ会社等)ごとに直接・間接に保有される持分割合を記載する必要があり、GIR記載要領に記載例が示されています。
MNEグループの組織構造の変更によって国別実効税率やトップアップ税額の計算に影響が生じる場合には、本表に変更の内容や変更の発効日を記載します。組織構造の変更とは、例えば持分割合の変更がある場合、買収により新たにMNEグループに属することとなった構成会社等がある場合、売却や清算結了によりMNEグループに属さなくなった構成会社等がある場合が挙げられます。
本表には、サブグループごとに課税権を有することとなる国又は地域の名称、各種セーフ・ハーバーの適用状況、国別実効税率及び国別のトップアップ税額のレンジを記載します。
まず、サブグループとは、GloBEルールによる国別実効税率等を計算する際の計算の単位とされるグループを言います。例えば、ある所在地国に構成会社等とは別に共同支配会社等がある場合は、他の構成会社等とは別のサブグループとして国別実効税率を計算するため、GIR上でもサブグループごとに記載することとなります。
次に、課税権を有することとなる国又は地域とは、いわゆる「ルール・オーダー」に従ってGloBEルールを適用する必要がある国又は地域を言い、例えば下記の①②が挙げられます。よって、本表の記載にあたっては、当該対象会計年度に係る各所在地国の法令の適用状況を確認する必要があります。
① 所得合算ルール(以下、IIR)による課税権:
日本所在のUPEがA国の構成会社等に対してIIRを適用する場合、日本はA国に対して課税権を有する
② 国内ミニマム課税(以下、QDMTT)による課税権:
B国に所在する構成会社等がQDMTTセーフ・ハーバー(以下、QDMTT SH)の適用を受ける場合、B国はB国自身に対して課税権を有する
図2 Section 2の構成
本表には、サブグループごとに適用を受けるセーフ・ハーバーを記載します。移行期間CbCRセーフ・ハーバー(以下、TCSH)については、once out, always outの観点から、適用初年度において本表にTCSHの3つのテストのいずれかの適用を記載していない場合には、翌対象会計年度以降についてTCSHの選択を記載することができないため注意が必要です。
また、QDMTT SHの適用を受ける場合には、本表にその旨を記載した上で後述のSection 3にQDMTTの税額計算に関する事項を記載します。
図3 Section 3の構成
Section 3は国別実効税率及びトップアップ税額の計算過程及び計算結果を記載するパートとなるため、MNEグループのすべての所在地国についてTCSHの適用を受ける場合には原則Section 3の作成は不要ですが、以下に例示する一定の場合には該当箇所の記載が必要となります。
また、TCSHの適用ができずいわゆる本則計算の対象とされる所在地国においてQDMTT SHの適用を受ける場合にも、Section 3の記載が必要となります。なお、QDMTTの計算に用いられる通貨が連結等財務諸表の表示通貨と異なる時には、Section 3についてもQDMTTの計算に使用している通貨で記載することとされています。
国別実効税率の分母・分子について、出発点となる財務会計上の数値とGloBEルール上の調整後の数値をそれぞれ記載した上で、国別ETR(実効税率)を算出します(3.2.1)。本表に記載する税引後当期純損益金額と法人税等の額及び法人税等調整額については、構成会社等間(例:本店と恒久的施設等〈PE〉間)の配分調整を行う前の金額とされています。
続いて、分母である国別グループ純所得(損失)の金額(3.2.1.1)と分子である国別調整後対象租税額等(3.2.1.2.a)についてそれぞれ計算過程を純額ベースで記載します。なお、これらの項目において計算の出発点となる財務会計上の金額は、3.2.1とは異なり、構成会社等間の配分調整を行った後の金額とされています。
本表では、繰延対象租税額の算出過程について、財務会計上の法人税等調整額を出発点として以下の計算順序で記載します。
① 会計上とGloBEルール上とで帳簿価額差異の存する資産・負債に係る法人税等調整額の調整
② GloBEルールにおいて規定される繰延対象租税額に係る調整
③ 基準税率(15%)による再計算
なお、上記①については、法人税基本通達18-1-67に掲げられている調整がこれにあたるものと考えられます。
移行対象会計年度、すなわち当該所在地国においてGloBEルールの本則計算を実施する最初の対象会計年度の期首における繰延税金資産(DTA)及び繰延税金負債(DTL)の残高について、本表に記載します。
国別の特例規定の選択をする場合に記載します。特に、みなし繰延税金資産相当額がある場合における国別調整後対象租税額等の計算の特例(3.2.3.1.a.5、いわゆるGloBE Loss選択)については、当該所在地国の移行対象会計年度でのみ選択が可能であるため、漏れがないよう注意が必要です。
国別実効税率の分母・分子の計算過程について構成会社等単位で記載します。サブグループをまたぐ配分計算や調整項目(いわゆるプッシュダウン調整)がある場合には、以下の項目の記載も必要となります。
なお、本表については構成会社等単位での記載が原則ですが、一定の要件を満たす場合には移行期間報告簡素化措置の選択や連結グループ等に係る合算報告措置の選択ができるものとされています(3.2.4.a及び3.2.4.b ただし一部の項目に例外あり)。
本則計算において実質ベースの所得除外額の控除を受ける場合、又はTCSHで通常利益テストの適用を受ける場合には、実質ベース所得除外額の計算に関する事項(3.3.2)を記載します。
また、所在地国においてQDMTTの適用を受ける場合には、自国内最低課税額に係る税に関する事項(3.3.4)を記載します。
所在地国においてトップアップ税額が生じる場合には、構成会社等ごとに配分する会社等別国際最低課税額の金額を算出した上で、納税義務者(UPE、中間親会社等、被部分保有親会社等〈以下、POPE〉)ごとの帰属割合に応じた税額を記載します。本表のうち、内国法人である納税義務者に係るトップアップ税額については、後述する別表20関係の金額と対応することとなります。
最後に、GIRについて、日本では添付書類に関する規定は現時点(2026年6月現在)はありません。ただし、将来の税務調査に備えてGIR作成にあたってのデータソースを整理、保存しておくことが推奨されます。特に制度導入の初期段階においては、たとえ結果としてトップアップ税額が生じない場合でも、MNEグループがどのようなプロセスでグローバル・ミニマム課税に係る検証を実施したのかについて確認をされる可能性があるものと考えられます。
前編で説明したとおり、最終親会社等届出事項はセントラルファイリングの場合にGIRに替えて提供するものであるため、主に外資系MNEグループの日本子会社である構成会社等が提供することになるものと想定されます。
記載項目はCbCRに係る最終親会社等届出事項とおおむね同様の内容となっており、代表提供する場合には、付表に内国法人であるグループ内の他の構成会社等の名称等を記載します。最終親会社等届出事項についてもGIRと同様に、対象会計事業年度ごと、つまり毎期の提供が必要です。
各対象会計年度の国際最低課税額に係る申告書は、別表20と付表1~4で構成されています。別表20は法人税と地方法人税が1枚の様式になっています。
付表1についてはGIRの3.4.1.2及び3.4.1.3から、付表2以下はGIRの3.4.1.1から、日本国内の納税義務者に対応する部分を記載します。
別表20はトップアップ税額が発生する場合にのみ提出が必要とされており、日本ではゼロ申告は不要です。また、日本国内に税額が生じる納税義務者が複数ある場合(例:UPE及びPOPE)には、納税義務者ごとに提出が必要です。
留意すべきは、別表20の添付書類として連結等財務諸表及び連結等財務諸表の勘定科目内訳書が必要とされていることです。
なお、別表20について外部専門家による税務代理がある場合には、通常の法人税申告書と同様、税務代理権限証書の提出が必要となります。
グローバル・ミニマム課税関係に関する申告書等の提出にあたっては、国税庁の国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用してデータを提供することになります。GIR及び最終親会社等届出事項については電子申告により提供するものとされており、別表20関係についても特定法人(例:期首資本金の額が1億円超の法人)については電子申告義務化の対象とされています。
既に述べたとおり、特にGIRは報告すべき項目が膨大であり、たとえすべての所在地国でTCSHの適用を受ける場合でも、Section 1(全社分)とSection 2を提供することとなりCbCRの比ではないデータ量となります。国税庁のサイトでは、XML形式又はCSV形式によるGIRの記載要領が公表されており、これを参考にe-Taxに取り込み時のエラーにも備えて、初年度においては早めに対応を進めることが賢明です。
最後に、グローバル・ミニマム課税に係る申告等には罰則規定が設けられています。例えばGIRについて正当な理由がなく期限までに提供しなかった場合には、法人の代表者等は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処することとされています。
後編では、グローバル・ミニマム課税に係る申告書等の作成における具体的なポイント、その他の留意事項について解説しました。制度の対象となるMNEグループにおいては、今後、適用初年度申告に向けて対応が本格化するものと思いますが、本稿が皆さまの申告業務に少しでもお役に立てましたら幸いです。
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グローバル・ミニマム課税の初年度申告対応として、日系MNEグループでは、GIRに必要な追加情報の洗い出しや電子申告に向けての早めの準備が求められます。一方、外資系MNEグループではセントラルファイリングとローカルファイリングとで日本側の対応が変わるため、親会社にGIRの提供方針を確認する必要があります。
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