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税務部門が企業のデータ戦略の議論に早期から参画すべき6つの理由


税務チームは、企業データの設計段階に早期に関与することで、組織全体の意思決定を強化しながら、戦略的パートナーとしての地位を築くことができます。


要点

  • 税務は組織全体から集められた情報を照合しており、その過程で、企業データが本来のシステム以外で利用される際にデータの欠落や不整合がある箇所を明らかにする立場にある。
  • 繰り返し発生する税務上の修正対応は、個別のレポーティングやコンプライアンスの問題というよりも、企業データの設計上の弱点を示していることがある。
  • データ設計の議論に税務を早期に関与させることで、意思決定を強化し、税務部門を戦略的な事業パートナーとして位置付けることができる。


EY Japanの視点

AI時代の企業データ戦略における税務部門の役割

日本企業においても、ERP刷新やAI活用、移転価格、グローバル・ミニマム課税(Pillar Two)への対応などを背景に、データ基盤の高度化が急速に進んでいます。一方で、税務部門がデータ設計やシステム刷新の議論に参画するのは、主要な設計方針が固まった後となるケースも少なくありません。記事が指摘するように、税務部門は財務・業務・事業データを横断的に利用する立場にあるため、システム間で失われる情報やデータ品質上の課題を最も早く把握できる機能の1つです。
 
近年、日本企業では税務ガバナンスの強化や税務DXへの投資が進んでいますが、持続的な税務高度化を実現するためには、コンプライアンス対応の効率化にとどまらず、税務要件を企業全体のデータ戦略やガバナンス設計の一部として捉える視点が不可欠です。EY Japanでは、税務・テクノロジー・データの専門家が連携し、税務データの標準化、データガバナンスの構築、AI活用を見据えたデータ基盤整備を通じて、企業の戦略的な意思決定を支援しています。
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21カ国のグローバルCEO1,200人を対象とし、四半期ごとに行われる2026年EY-Parthenon CEO Outlook調査によると、80%以上のCEOが、企業価値の向上に必要な戦略的洞察を提供するAIの可能性を引き出すには、高品質な税務および財務データが不可欠であると考えています。しかし、多くの大企業で企業データ戦略が加速しているにもかかわらず、税務部門への相談は通常主要な設計判断(Key Design Decisions)が下された後に行われるのが現状です。EY USLI Tax Technology and Transformation LeaderであるDaren Campbellは、このことが原因で、データ設計の欠落や不整合を是正することが著しく困難になっていると指摘します。

 

「従来、データ戦略が策定される際に税務が意思決定に関与する機会はなく、事後的に関与することになりますが、その段階ではすでに手遅れです」と、EY Global Tax Data Officer(CDO)も務めるCampbellは述べています。

 

企業のデータへの取り組みでは、拡張可能性と標準化が優先される一方、税務上の要件は後工程で調整すべき事項として扱われてきました。また、データが一元管理されていても、適切な税務処理を行うために必要な情報(資本関係、法人情報、取引時期、国・地域などの情報)が不足していることがあります。その結果、税務チームは報告期限のプレッシャーの中で必要な情報を再取得・照合しなければならず、Campbellの言うところの「考古学者」のように、不完全なデータを解釈するために過去の取引を掘り起こすことになります。そして、時間をかけて蓄積した結果をもとに、修正申告や調査対応の追加作業が発生し、さらには取引発生から長期間経過した後に税務ポジションを見直さなければならないこともあります。

 

以下の6つのポイントは、税務リーダーがCDOとより早い段階で連携し、重要な設計上の判断が確定する前に、企業のデータ投資の方向性を形作るのにどのように貢献できるかを示しています。

 

1. 税務を、企業全体をつなぐデータの架け橋として位置付ける

税務は、財務システムから業務プラットフォーム、事業報告関連に至るまで、企業全体から流れてくるデータに依存しています。EY Global Chief Data OfficerであるRichard Cloughが指摘するように、「税務は、組織内のほとんどのデータに接する唯一の部門です」。その広範さゆえに、税務リーダーは、データが各部門内に分散している場合には見えにくい問題も、明確に把握することができます。

実際には、税務チームは、適切な税務処理を行うために必要なデータ属性が情報に欠けているケースによく直面します。資本関係、法人情報、取引時期、国・地域情報、あるいは資産分類などが不完全であったり、システム間で一貫性なく記録されていたりする場合があります。Campbellが指摘するように、税務は、一元的に管理されているデータを受け取ることはあっても、「適切な処理を行うために必要な背景の情報が欠けている」ことが少なくありません。

税務は、組織内のほとんどのデータに接する唯一の部門です。

税務は組織全体の情報を解釈しなければならないため、税務リーダーは、システム間で企業データが連携できていない箇所を自然と把握することができます。この視点により、税務リーダーは単なるコンプライアンス担当者としてではなく、データ統合やアーキテクチャの意思決定に関与する立場として企業データの議論に加わることができます。CDOにとって、税務は企業データ戦略を診断する重要なレンズとなります。 

2. 各機能でのデータ有効性が企業の全体価値につながるという前提を疑う

多くの場合、企業データはそれぞれの機能領域の中では十分に機能します。財務システムはレポーティングや決算処理を支え、業務プラットフォームは取引を効率的に記録し、事業システムは顧客や収益の動向を記録します。それぞれの領域では、データは整理され、信頼性が高く、完全であるように見えるかもしれません。

しかし、企業データの真価が問われるのは、情報が部門をまたいで移動する時です。その段階で定義の違いが生じたり、法人構造が整合しなかったりするほか、重要な背景の情報が失われる場合があります。あるシステム内では問題なく機能していたデータも、他の部門からの情報と統合されると曖昧なものになってしまうことがあります。税務は、財務、業務、事業の各システムから得られた情報を照合しなければならないため、このギャップに最初に直面する部門の1つである場合が多くあります。 

3. 議論の視点をコンプライアンスの作業負荷からデータ設計へと転換する

多くの組織では、税務が企業データの取り組みに関与するのは、プラットフォーム、データモデル、ガバナンスフレームワークがすでに定義された後です。その時点では、データをどのように取得、構造化し、システム間で再利用するかを決定する重要な判断はほぼ完了しています。

プロセスの後工程で税務要件が検討されても、チームは構造的なデータの制約を根本から解決するのではなく、その制約を回避する対応をせざるを得なくなります。手作業による照合や追加の報告作業、繰り返される調整は、組織内の他の場所で行われたデータ構造上の選択による問題の表れにすぎません。

Campbellが説明するように、本当の問題は多くの場合、データの不足ではなく、背景の情報不足にあります。企業システムには関連情報が含まれているにもかかわらず、部門をまたいでそれを正しく解釈するために必要な属性が欠けている場合があります。法人構造、時点情報、分類ルールが一貫していなければ、税務チームは取引がすでに記録された後にその意味を再構築しなければなりません。

税務リーダーにとって、これはCDOとの対話の方向性を変える機会となります。データに関する課題を、コンプライアンスの作業負荷や報告の複雑さとして捉えるのではなく、企業データの設計上の判断が、当初から税務上の結果を左右していると強調することができます。

4. 繰り返される修正対応を上流工程へのデータ投資の機会に変える

多くの組織において、税務チームは申告、調査、税務係争への対処の過程で、同じデータ上の問題に繰り返し直面しています。取引の再分類、申告書の修正、適切な税務ポジションの確立に必要となる、複数のシステムからの裏付け情報の再構築などです。

こうした繰り返し行われる修正対応は、しばしば業務負担として扱われます。しかし、実際には、企業データが、部門横断的に利用できるように収集・構造化されていないことを示しているのです。

Campbellが指摘するように、多くの組織ではデータが生成される段階で根本原因が解決されていないため、毎年同じ問題に対処することになってしまいます。

「問題の修正が上流工程に反映されないため、毎年同じ問題を修正し続けることになります。税務当局との係争段階になってから『このデータはどこから来たのか?』と確認しようとしても、追跡記録もデータ記録も残っていないのです」

税務リーダーにとって、このパターンはCDOとの議論において重要な点となります。税務上の修正対応が繰り返されるということは、企業データがシステム間を移動する際に、部門横断的な解釈に必要な背景の情報を保持できていないことを意味します。こうした繰り返し発生する修正対応の規模を定量化することで、より強固なデータガバナンス、より明確なデータ、さらに一貫性のある企業データモデルへの的を絞った投資の根拠となります。

5. 陰の税務作業がもたらす隠れたコストを定量化する

多くの組織において、税務関連業務の相当な割合が税務部門以外で行われています。財務、管理会計、および報告担当チームは、税務報告を支援するために、情報の抽出、再構築、または再分類に多大な時間を費やすことがよくあります。

こうした分散した業務は、正式な税務予算に表れることはほとんどなく、代わりに財務決算プロセス、業務報告、およびシェアードサービス業務の中に組み込まれています。その結果、税務データを準備する真のコストは、しばしば見えなくなってしまいます。

Campbellが説明するように、こうした断片化された取り組みは、組織全体に非効率の悪循環をもたらす可能性があります。「税務以外のチームは、税務が必要としていると思われる情報を提供するために、データを分解するのに時間を費やす一方で、税務チームは、その同じ情報を再構成して利用可能な形にしています」

この作業は各部門に分散しているため、投資判断が行われる際に企業データの問題として認識されることはほとんどありません。組織は、報告サイクルの遅延、作業の重複、業務上の摩擦といった影響を受けますが、その根本原因は往々にして隠れたままです。税務リーダーにとって、こうした陰の税務作業がどこで発生しているかを特定することは、データ投資に関するCDOとの協議を変革するきっかけとなります。 

6. データ品質を財務の信頼性と戦略的対応力に結び付ける

背景の情報が不足した企業データの影響は、コンプライアンスの領域にとどまりません。税務チームが、適切な税務処理に必要となる十分な背景の情報なしに取引を解釈しなければならない場合、税務ポジションが後に不確実なものとなり、引当金の見直しや過去の分類の再評価が必要になることがあります。これらの問題は、運転資金計画や、財務データに対する組織の信頼性に影響を及ぼします。

Campbellが指摘するように、不完全な情報や不十分な文脈のデータは、組織が後に判断を正当化するのを難しくする可能性があります。「税務チームが判断を下すために必要な情報を全て把握していなければ、誤った判断をしてしまい、調査で否認されることがあります」

従って、信頼性の高い税務データは、より堅実な申告、税務引当金の変動低減、財務部門のリーダーシップからの信頼性向上につながります。同時に、CDOは、システム間で移動するデータについて、トランスフォーメーション施策、高度な分析、AI活用を支える、強固な税務データ基盤の恩恵を受けることができます。 

なぜ税務リーダーはCDOとデータ戦略について連携すべきなのか

企業のデータ戦略は、レポーティングが始まるはるか以前から税務上の結果を左右しますが、多くの場合、税務部門が関与するのは、重要な設計上の決定がすでに下された後です。税務リーダーはより早い段階から関与することで、取引を正しく解釈するために必要な情報を始まりの段階で確実に取得されるようにするほか、修正対応を減らし、財務報告の質を向上させることができます。税務要件を企業のデータ設計の観点から位置付けることは、税務部門の役割を高め、データの問題への事後対応から、企業のデータ構造やガバナンスを主導する立場へと転換させます。

CDOにとって、税務リーダーと連携することは、企業データが組織の境界を越えて移動した際にどのように機能するかについて、直接的な洞察を得る機会となります。税務は、財務、業務、事業システムにまたがる取引を解釈する必要があり、その過程で、データがそれを生成するシステム外で使用された際に、文脈や意味を失っている箇所を明らかにすることがよくあります。その視点を企業データ戦略に取り入れることで、個々のプラットフォーム内での効率性だけでなく、情報が確実に組織全体にわたる信頼性の高い解釈を考慮して設計されるようになります。

サマリー

企業データ戦略は、組織全体で取引がどのように記録されて利用されるかを決定します。税務リーダーは、情報がシステム間を移動する際に文脈を失う箇所を把握する機会が多くあります。CDOと早期に連携することで、税務チームはデータが生成される段階でこの問題に対処できるようになり、修正対応を減らし、税務ポジションの信頼性を高めることができます。より強固なデータ基盤は、レポーティングを改善するだけでなく、全社的な意思決定に利用される財務情報に対する信頼性向上にもつながります。


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