リース会計基準の公表等に伴う財務諸表等規則等の改正のポイント

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 小倉 幹生


Ⅰ. 改正された規則等

  • 財務諸表等規則
  • 連結財務諸表規則
  • 財務諸表等規則ガイドライン
  • 連結財務諸表規則ガイドライン
  • 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(金融庁告示)
  • 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件(金融庁告示)

Ⅱ. 本改正の概要

1. リースに関する注記

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等で、注記が求められている以下の事項に合わせて、関連する財務諸表等規則等について、次の開示項目の注記を求めることとされています。ただし、その他の注記において同一の内容が記載される場合には、その旨を記載し、当該事項の記載を省略することとされています。

なお、第2種中間(連結)財務諸表における中間(連結)貸借対照表についても、同様の規定を設けることとされています。

(1) 借手の注記事項

① 会計方針に関する情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第1号イ等)

次に掲げる会計処理を行った場合には、その旨及び当該会計処理の内容

ただし、連結財務諸表において同一の内容が記載される場合には、その旨を記載し、個別財務諸表において省略可

ⅰ. リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを区分せずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理

ⅱ. 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な会計処理

ⅲ. 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理

② リース特有の取引に関する情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第1号ロ等)

貸借対照表において区分して表示していない場合には、次に掲げる事項

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. 使用権資産の帳簿価額について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の貸借対照表の科目ごとの金額

ⅱ. 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な会計処理を行った場合には、当該会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる科目及び当該リース負債の金額

ⅲ. 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理を行った場合であって、かつ、権利金等の減価償却を行わなかったときは、償却していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等が含まれる科目及び当該権利金等の金額

損益計算書において区分して表示していない場合には、次に掲げる事項

ⅳ. 短期リースについて、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって費用として計上する場合、当該短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及びその発生額

ⅴ. 借手の変動リース料をリース負債に含めない場合、当該変動リース料に係る費用の発生額が含まれる科目及びその発生額

セール・アンド・リースバック取引については、次に掲げる事項

ⅵ. セール・アンド・リースバック取引から生じた売却損益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該売却損益が含まれる科目及び当該売却損益の金額

ⅶ. 資産の譲渡とリースバックを一の取引とみて、金融取引として会計処理を行った場合、当該会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及びその金額

ⅷ. ⅶ.の会計処理以外の会計処理を行った場合、当該セール・アンド・リースバック取引の主要な条件

サブリース取引については、次に掲げる事項

ⅸ. 使用権資産のサブリースによる収益を損益計算書において区分表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び当該収益の金額

ⅹ. ヘッドリースにおける借手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合のサブリース取引について計上した損益を、損益計算書において区分して表示していない場合、当該損益が含まれる科目及び当該損益の金額

ⅺ. 転リース取引に係るリース債権又はリース投資資産及びリース負債から利息相当額を控除する前の金額で計上する場合であって、かつ、当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債を貸借対照表において区分して表示していない場合、当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債が含まれる科目並びにそれぞれの金額

③ 当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第1号ハ等)

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額

ⅱ. 使用権資産の増加額

ⅲ. 使用権資産に対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の貸借対照表に表示する科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額

(2) ファイナンス・リースの貸手の注記

① リース特有の取引に関する情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第2号イ等)

貸借対照表に次の事項を区分して表示していない場合、次に掲げる事項

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. リース債権について、リース料債権部分の金額及び受取利息相当額

ⅱ. リース投資資産について、リース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額

損益計算書に次の事項を区分して表示していない場合、次に掲げる事項

ⅲ. リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益が含まれる科目及び当該収益の金額

② 当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第2号ロ等)

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. リース債権の残高に重要な変動がある場合のその内容

ⅱ. リース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容

ⅲ. リース債権に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

ⅳ. リース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額

(3) オペレーティング・リースの貸手の注記

① リース特有の取引に関する情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第3号イ等)

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. オペレーティング・リースに係る貸手のリース料に含まれていない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合には、当該収益が含まれる科目及び当該収益の金額

② 当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報(連結財務諸表規則第15条の3、財務諸表等規則第8条の6第1項第3号ロ等)

ただし、連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において省略可

ⅰ. オペレーティング・リースに係る貸手のリース料に係る貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額及び5年超の受取予定額

2. 使用権資産の表示(連結財務諸表規則第26条第1項第4号、財務諸表等規則第23条第1項第8号等)

使用権資産については、対応する原資産の表示区分が有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産の場合には区分掲記することとされています。

3. 一般に公正妥当な企業会計の基準(金融庁告示)

企業会計基準委員会が2024年9月13日までに公表した会計基準を、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第1条第3項及び財務諸表等規則第1条第3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準とすることとされています。

2024年9月13日公表

  • 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」
  • 企業会計基準第35号「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正
  • 企業会計基準第36号「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の一部改正(その2)

Ⅲ. 適用時期

2025年3月24日に公布・施行し、リース会計基準の適用時期に合わせて、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度又は中間連結会計期間及び事業年度又は中間会計期間において適用することとされていますが、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度又は中間連結会計期間及び事業年度又は中間会計期間において適用することもできます。


Ⅳ. 公開草案からの変更点

連結キャッシュ・フロー計算書に関する注記事項(連結財務諸表規則第90 条)のうち、非資金取引の例示に使用権資産の取得及び現物出資による株式の取得又は資産の交換が追加された点を除き、内容に関わるような公開草案からの変更はありません。



なお、本稿は本改正の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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