2027年3月期第1四半期及び半期決算上の留意事項並びに第1四半期及び半期決算のトピック

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士
浅野 浩隆、加藤 裕一、宮﨑 徹、久保 慎悟

2027年3月期第1四半期決算は、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」等が原則適用となります。また、中東情勢等、経済の不確実な状況が続いており、このような経済状況の変動による会計処理への影響を検討する必要があると考えられます。

そこで、本稿では、2027年3月期第1四半期及び半期決算上の留意事項として、2027年3月期に原則適用又は早期適用可能となる会計基準等に加えて、経済状況が会計処理に及ぼす影響についてQ&A方式で解説します。なお、解説は3月決算会社を前提としています。


なお、本稿の本文において、会計基準等の略称は以下を用いています。

正式名称

本文中の略称

企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」

棚卸資産会計基準

企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」

金融商品会計基準

企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」

四半期会計基準(※)

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」

連結会計基準

企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」

法人税等会計基準

企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」

時価算定会計基準

企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」

中間会計基準(※)

企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」

期中会計基準

企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」

四半期適用指針(※)

企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」

税効果適用指針

企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」

時価算定適用指針

企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」

中間適用指針(※)

企業会計基準適用指針第34号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」

期中適用指針

実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」

実務対応報告第42号

実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」

実務対応報告第47号

実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」

実務対応報告第48号

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」

財務諸表等規則

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」

連結財務諸表規則

移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」

金融商品実務指針

補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」補足文書


※ 期中会計基準等の適用により、四半期会計基準、四半期適用指針、中間会計基準及び中間適用指針については、適用終了となっています。

本稿は2026年6月30日の時点の情報に基づくものです。

期中会計基準編

Q1. 期中会計基準等の概要と対象となる財務諸表

期中会計基準等の概要と、その適用対象となる財務諸表について教えてください。

A1.

(1) 期中会計基準等が開発された背景

2023年11月の金融商品取引法の改正等を受け、上場会社においては2025年3月期から四半期報告書制度が廃止され、第2四半期については半期報告書の提出が求められる一方、第1・第3四半期については取引所規則に基づく四半期決算短信による開示が行われるなど、期中開示制度の枠組みが見直されました(図表1参照)。

(図表1)四半期開示制度の見直し(2023年改正)の全体像

(図表1)四半期開示制度の見直し(2023年改正)の全体像

この見直しの結果、制度上は、第2四半期と第1・第3四半期とで、適用される開示制度や財務諸表の作成根拠が異なる状況が生じていました。具体的には、第1・第3四半期については、取引所規則に基づき公表される四半期決算短信に含まれる四半期財務諸表等(四半期財務諸表及び四半期連結財務諸表等又は四半期累計期間に係る財務書類をいう。)が、四半期会計基準等を参照して作成される一方、第2四半期については、金融商品取引法に基づく半期報告書が提出され、当該報告書に含まれる第一種中間財務諸表が、中間会計基準等により作成されることとなっていました(図表2参照)。このように、期中に開示される財務諸表について、それぞれ異なる会計基準に基づいて作成されるなど、制度上異なる枠組みの下で作成される状況が生じており、期中財務諸表全体としての整合性の確保が課題とされていました。

(図表2)四半期開示制度の見直し(2023年改正)後における半期報告書と会計基準の関係

(図表2)四半期開示制度の見直し(2023年改正)後における半期報告書と会計基準の関係

このように、期中に開示される財務諸表が異なる制度及び会計基準に基づいて作成される状況の中で、企業の経営成績の測定は、報告頻度や開示制度の違いによって左右されるべきではないとされており、期中報告においてもこの考え方が重視されています。このため、期中に開示される財務諸表についても、同一の会計基準に基づいて作成されることが必要とされ、こうした状況を踏まえ、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、中間財務諸表及び四半期財務諸表にそれぞれ適用されていた会計基準等を統合し、事業年度より短い期間の財務報告に共通して適用される会計基準を新たに開発することとされました(期中会計基準BC5項、BC6項)。

この結果、2025年10月16日に、ASBJより、期中会計基準及び期中適用指針(以下、あわせて「期中会計基準等」という。)が公表されました。これにより、期中の各報告期間における会計処理の一貫性を確保するとともに、報告頻度により測定結果が左右されないための枠組みが整備されました。

なお、期中会計基準等の開発にあたっては、改正後の金融商品取引法に基づく半期報告書制度に対応するため、期首から6か月間を1つの会計期間(中間会計期間)として作成する第一種中間財務諸表に適用可能な会計処理を中心に検討が行われました(期中会計基準BC13項)。

(2) 期中会計基準等の適用対象となる財務諸表

期中会計基準等は、事業年度より短い期間の企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況について報告するために作成される期中財務諸表に適用されます(期中会計基準第3項、BC21項)。具体的には、金融商品取引法に基づき提出される第一種中間連結財務諸表、第一種中間財務諸表及び四半期財務諸表等が適用対象となる一方、第二種中間連結財務諸表及び第二種中間財務諸表は適用対象には含まれないとされています(期中会計基準第3項、BC21項、BC22項)(図表3参照)。

(図表3)期中会計基準等の適用対象となる財務諸表
 

期中会計基準等

種類

内容

適用対象となるもの(期中会計基準第3項、BC21項)

■ 第一種中間連結財務諸表

■ 第一種中間財務諸表

上場会社等が提出する半期報告書に含まれる中間財務諸表

■ 四半期財務諸表等

第1・第3四半期に係る四半期決算短信に含まれる財務諸表等※1

適用対象とならないもの(期中会計基準第3項、BC22項)

■ 第二種中間連結財務諸表

■ 第二種中間財務諸表

非上場会社や特定事業会社等が提出する半期報告書に含まれる中間財務諸表※2

※1 有価証券上場規程施行規則別添9に基づき、期中会計基準等に準拠して作成
※2 引き続き「中間連結財務諸表作成基準」、「中間連結財務諸表作成基準注解」、「中間財務諸表作成基準」及び「中間財務諸表作成基準注解」を適用して作成


Q2. 期中会計基準等の導入による変更点

期中会計基準等では、従前の取扱いと比較してどのような点が見直されていますか。

A2.

期中会計基準等では、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって年次の経営成績の測定が左右されることがないようにするという原則が採用されています(期中会計基準BC16項)。また、第一種中間財務諸表及び四半期財務諸表に共通して適用される取扱いと、四半期財務諸表のみに適用される取扱いを区分するなど基準の構成についても整理が行われています(期中会計基準BC18項)。

そして、経営成績の測定結果が報告頻度によって左右されないようにするという原則を踏まえ、期中における会計処理については、期中特有の会計処理や簡便的な会計処理を含め、その適用の可否が個別に検討され、見直し又は取扱いの明確化が図られています(期中会計基準BC16項)。

なお、期中会計基準等では、従前の中間会計基準等において制度改正までの短期間への対応を目的として設けられていた経過措置については、短期的な取扱いであることから、そのまま残すことは困難であるとの考え方に基づき、個別に検討が行われています(期中会計基準BC13項)。

具体的な見直しの内容は、図表4のとおり整理されます。

(図表4)期中会計基準等における主な見直しの整理
 

区分

主な項目

内容

原則が見直された項目

■ 有価証券の減損処理

■ 棚卸資産の簿価切下げ

期中洗替え法によることが原則とされた

(従前から切放し法を適用していた場合は経過措置あり)。

従前の取扱いの考え方が維持された項目

■ 一般債権の貸倒見積高の算定

■ 連結会社相互間取引に係る未実現損益の消去

簡便的な会計処理が引き続き認められている(適用条件については整理・明確化あり)。

整理・明確化された項目

■ 期中特有の会計処理(税金費用、原価差異の繰延処理)

■ 役員賞与

■ 自己株式の処理 等

体系整理及び位置付けが明確化された(基本的な考え方に大きな変更なし)。

【原則が見直された項目】

  • 有価証券の減損処理
  • 棚卸資産の簿価切下げ

これらについては、年次の経営成績に重要な影響を与え得る項目として、期中洗替え法が原則とされました(詳細はQ3参照)。なお、期中洗替え法は、期中に計上した評価損について、その後の測定時点までにおいて戻入れを行う方法であるのに対し、切放し法は期中に計上した評価損をそのまま戻入れない方法であり、従前から切放し法を適用していた場合には、経過措置としてその継続適用が認められています(期中適用指針第4項、第7項、BC16項、BC19項)。

【従前の取扱いの考え方が維持された項目】

  • 一般債権の貸倒見積高の算定
  • 連結会社相互間取引に係る未実現損益の消去

これらについては、期中会計期間において見積りの前提となる状況に重要な変化がないことを前提として、一般債権の貸倒見積高の算定においては、前年度の貸倒実績率等を用いた簡便的な算定が引き続き認められています。一方、連結会社相互間取引に係る未実現損益の消去では、損益率や合理的な予算等を用いた簡便的な見積りが可能とされています。また、これらの簡便的な会計処理については、従前の取扱いを引き継ぎつつ、前年度の実績率等を用いることができる条件や、期中に見直しが行われた場合における見直し後の基準の適用に関する取扱い等、貸倒実績率や損益率の見積りに関する適用条件及び位置付けが基準上体系的に整理・明確化されています(期中適用指針第3項、第31項)。

【整理・明確化された項目】

期中会計基準等の開発にあたっては、これまで他の会計基準において定められていた四半期又は中間に関する取扱いについても、全体的な体系整理の観点から、期中会計基準等の体系に整理・取り込む対応が行われています。その結果、期中特有の会計処理や注記に関する取扱いの整理が行われるとともに、役員賞与や自己株式の処理など、一部の個別論点についても、期中財務諸表における取扱いが明確化されています。これらは従来、他の会計基準等に分散して定められていた取扱いを期中会計基準等に集約したものであり、新たな会計処理を追加するものではなく、主として整理・明確化を目的としたものです。


Q3. 期中において有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げを行う場合の取扱い

期中において有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げを行う場合、切放し法又は洗替え法の適用関係を含め、どのように取り扱う必要がありますか。

A3.

期中会計基準等では、企業の報告の頻度(年次、半期、又は四半期)によって年次の経営成績の測定が左右されることがないようにするという原則が採用されています(期中会計基準BC16項)。

これを踏まえ、年次の経営成績に重要な影響を与え得る項目については、期中においても経営成績の測定結果が報告頻度によって左右されないような会計処理が行われることとされています。具体的には、有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げについては、期中洗替え法によることが原則とされています(期中適用指針第4項、第7項、BC16項、BC19項)。

ここで、従前の取扱いと期中会計基準等による取扱いの関係については、図表5に示すとおりであり、期中洗替え法を原則としつつ、適用前からの実務を踏まえた経過措置が設けられている点が、本件取扱いの特徴といえます。

(図表5)有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げに係る期中会計処理(従前との比較)
 

新旧会計処理

有価証券の減損処理

棚卸資産の簿価切下げ

従前の会計処理(中間適用指針又は四半期適用指針)

■ 中間(四半期)切放し法と中間(四半期)洗替え法のいずれかの方法を選択適用することができる

■ いったん採用した方法は、原則として継続して適用する必要がある

■ 年度決算において、棚卸資産の簿価切下げに洗替え法を適用している場合は、中間(四半期)会計期間末においても洗替え法による

■ 年度決算において切放し法を適用している場合は、中間(四半期)会計期間末において、洗替え法と切放し法のいずれかを選択適用することができる

■ いったん採用した方法は、原則として継続して適用する必要がある

期中適用指針

■ 原則として、期中洗替え法による

■ ただし、期中会計基準等の適用前に中間適用指針又は四半期適用指針に基づき切放し法を適用していた場合には、継続して切放し法を適用することができる

■ 期中切放し法を適用する場合には、切放し法を適用している旨を注記する

期中会計基準等の適用前から、中間適用指針又は四半期適用指針に基づき切放し法を適用していた場合には、経過措置として当該方法を継続して適用することが認められています。この場合、期中洗替え法へ変更することも可能と考えられますが、当該変更は会計方針の変更に該当します。ただし、期中会計基準等の適用初年度における変更については、経過措置が設けられており、遡及適用は求められず、適用初年度の最初の期中会計期間から将来にわたって新たな会計方針を適用する取扱いとされています(期中会計基準第35項、期中適用指針第73項)。

一方で、この経過措置は適用初年度に限られる点に留意が必要です。このため、適用初年度の翌年度以降に原則的な方法である期中洗替え法へ変更する場合には、原則どおり遡及適用が求められることになります。したがって、適用初年度にどの方法を採用するかは、その後の遡及適用の要否にも影響する重要な判断となります。

また、期中切放し法を継続適用する場合には、その旨を期中財務諸表の注記事項として記載することとされており(財務諸表等規則第202条の2、連結財務諸表規則第175条の2、期中適用指針第4項、第7項、BC16項、BC19項)、いずれの方法を採用しているかが財務諸表利用者にとって明らかとなることが求められています。これは、期中財務諸表において、財務諸表利用者がその内容を理解する上で重要な情報を開示することを基本的な考え方としていることによるものです(期中会計基準BC34項)。

なお、期中会計基準等においては、期中切放し法を適用する場合にはその旨を注記することとされているものの、具体的な記載方法までは規定されていません。このため、棚卸資産会計基準において、棚卸資産の種類やその性質等に応じた区分ごとに評価方法を選択することとされており(棚卸資産会計基準第6-3項)、また、簿価切下げの方法についても棚卸資産の種類ごとに選択適用することが認められていること(棚卸資産会計基準第14項)を踏まえ、棚卸資産の簿価切下げにおいて資産の種類ごとに方法が異なる場合には、財務諸表利用者の観点から、適用範囲が明らかとなるように記載することが望ましいと考えられます。

ただし、第1・第3四半期決算短信では、「切放し法」を採用している旨の注記は義務付けられている事項ではありません。これは、当該注記が期中会計基準第24項(19)の「重要なその他の事項」に該当する事項として整理されると考えられ、「四半期財務諸表等の作成基準」第4条第2項における必須注記事項には含まれないと考えられるためです。


防衛特別法人税編

Q4. 防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する定めの概要

防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する定めの概要について教えてください。

A4.

(1) 実務対応報告第48号の概要及び適用時期

実務対応報告第48号「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」は、令和7年度税制改正により創設された防衛特別法人税について、会計処理及び開示に関する当面の取扱いを明らかにすることを目的として、ASBJから公表されたものです。

防衛特別法人税は2026年4月1日以後に開始する事業年度から課されることから、実務対応報告第48号についても、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています(実務対応報告第48号第18項、BC17項)。

(2) 当期税金に係る会計処理及び表示

防衛特別法人税は、法人税額から基礎控除額を控除した額を課税標準として課すこととされているため、法人税に対する付加税という点において、地方法人税と共通の性質を有していると考えられるとされています。このような防衛特別法人税の性質を考慮して、防衛特別法人税に関する会計処理及び表示については、地方法人税と同様に行うものとして、法人税等会計基準の定めに従うこととされています(実務対応報告第48号第7項、第13項、BC7項、BC12項)。

地方法人税については、法人税等会計基準において、以下のように定められています。

  • 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等として、法令に従い算定した額を損益に計上する(法人税等会計基準第5項)
  • 損益に計上する地方法人税は、損益計算書の税引前当期純利益又は税引前当期純損失の次に、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示する(法人税等会計基準第9項)
  • 未納付額については、貸借対照表の流動負債の区分に「未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示する(法人税等会計基準第11項)

したがって、防衛特別法人税についても、地方法人税と同様に、当期税金として損益に計上し、損益計算書上は「法人税、住民税及び事業税」等に含めて表示するとともに、未納付額は「未払法人税等」等に含めて表示することになると考えられます。

(3) 税効果会計に関する会計処理

防衛特別法人税は、法人税に対する付加税として課されるものであることから、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金である法人税等(税効果適用指針第4項(2))に該当すると考えられるため、税効果会計の対象となる税金に含まれるとされています(実務対応報告第48号BC8項)。また、法定実効税率の定義(税効果適用指針第4項(11))並びに繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めについては、適用対象となる税金に関して具体的な税金を挙げて定めています(税効果適用指針第46項)。これらを踏まえ、防衛特別法人税の取扱いについて、以下のとおり定められています。

① 防衛特別法人税が地方法人税と共通の性質を有していることを考慮し、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めにおいて、地方法人税と同様に取り扱うものとして、税効果適用指針第46項の定めに従う(実務対応報告第48号第8項)
② 防衛特別法人税は法人税に対する付加税であるため、法定実効税率については、地方法人税率と同様に防衛特別法人税率を考慮して算定する(実務対応報告第48号第9項)

税効果適用指針第46項では、法人税及び地方法人税について、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において成立している税法に規定されている税率によることとされています。防衛特別法人税についても、地方法人税と同様に取り扱うものとされているため、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算にあたっては、防衛特別法人税率を考慮した法定実効税率を用いることになります。

なお、上記②に記載の法定実効税率については以下のとおり算定することになります(補足文書第13項)。

法定実効税率

防衛特別法人税の課税標準の計算においては法人税額から基礎控除額として年500万円を控除することとされていますが、上記の法定実効税率の算式においては、当該基礎控除額は考慮していないとされています(補足文書第13項(注))。これは、上場企業においては、通常、基礎控除額は法人税額に重要な影響を与えるものではなく、法定実効税率の算式において考慮しなくても重要な影響はないことを意図した記載であると思われます。一方、実務上は、基礎控除額の500万円を加味して厳密に法定実効税率を算定することも否定されないと思われます。例えば、将来にわたり基礎控除額を上回る法人税額が生じないと合理的に見込まれる場合、法定実効税率の算定において防衛特別法人税率を考慮しないことも考えられます。


Q5. グループ通算制度を適用している場合の防衛特別法人税の会計処理及び開示

グループ通算制度を適用する場合の防衛特別法人税の会計処理及び開示について教えてください。

A5.

(1) グループ通算制度を適用している場合の会計処理

グループ通算制度を適用する場合における防衛特別法人税の会計処理については、防衛特別法人税が地方法人税と共通の性質を有することを踏まえ、地方法人税と同様に、実務対応報告第42号の定めに従うこととされています(実務対応報告第48号第10項から第12項、BC9項からBC11項)。

具体的には、図表6のとおり整理されます。

(図表6)グループ通算制度を適用している場合の会計処理
 

項目

会計処理

当期税金に係る会計処理

法令に従い算定した額を当期税金として損益に計上し、損益計算書上は「法人税、住民税及び事業税」等に含めて表示するとともに、未納付額は「未払法人税等」等に含めて表示することになると考えられます。

通算税効果額

防衛特別法人税に係る通算税効果額※3については、防衛特別法人税の額に相当する金額として、益金の額又は損金の額に算入されない金額であるため、個別財務諸表において、防衛特別法人税に係る通算税効果額は、当事業年度の所得に対する防衛特別法人税に準ずるものとして取り扱うこととされています。

税効果会計

損益通算や欠損金の通算等の影響を踏まえて、繰延税金資産の回収可能性等を判断することになると考えられます。

通算税効果額の税効果会計上の取扱い

地方法人税に係る通算税効果額と同様に、損益通算や欠損金の通算等の影響を踏まえて、繰延税金資産の回収可能性を判断することになると考えられます。

※3 損益通算、欠損金の通算及びその他のグループ通算制度に関する法人税法上の規定を適用することにより減少する防衛特別法人税の額に相当する金額として、通算会社と他の通算会社との間で授受が行われた場合に益金の額又は損金の額に算入されない金額をいう(実務対応報告第48号第6項(2))

(2) グループ通算制度を適用している場合の開示

グループ通算制度を適用する場合における防衛特別法人税の表示及び注記についても、防衛特別法人税が地方法人税と共通の性質を有することを踏まえ、地方法人税と同様に、実務対応報告第42号の定めに従うこととされています(実務対応報告第48号第14項から第17項、BC13項からBC16項)。

具体的には、図表7のとおり整理されます。

(図表7)グループ通算制度を適用している場合の開示
 

項目

表示又は注記

個別財務諸表における通算税効果額の表示

損益に計上される場合には、個別財務諸表の損益計算書において法人税及び地方法人税を示す科目に含めて表示し、株主資本又は評価・換算差額等に計上される場合には、個別財務諸表の貸借対照表において純資産の部の対応する内訳項目から控除して表示することになると考えられます。

また、通算会社間の債権及び債務は、個別財務諸表の貸借対照表において未収入金又は未払金などに含めて表示することになると考えられます。

連結財務諸表における繰延税金資産及び繰延税金負債の表示

地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債と同様に、通算グループ全体で相殺して連結貸借対照表に表示することになると考えられます。

 

税効果会計に関する注記

防衛特別法人税だけを別枠で注記するのではなく、従来からの税効果会計関係注記の枠組みにおいて、法人税及び地方法人税、住民税及び事業税とあわせて、税金全体として取り扱うことになると考えられます。

なお、期中財務諸表においては、年度財務諸表と同様の税効果会計に関する注記は求められていません。


バーチャルPPA編

Q6. 非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する定めの概要

2027年3月期の期首から原則適用となる実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」について、その概要を教えてください。

A6.

ASBJは、2025年11月11日に、実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第47号)を公表しています。

実務対応報告第47号の概要は以下のとおりです。

(1) 適用範囲

① 対象者
実務対応報告第47号では、非化石価値の特定の購入取引における需要家の取扱いを定めています(実務対応報告第47号第1項)。ここで「需要家」とは、後述の(ⅱ)の特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいうとされています(実務対応報告第47号第5項(2))。

② 適用する契約
実務対応報告第47号を適用する契約の範囲は、図表8のとおり、発電事業者と需要家の相対の契約のうち一定の特徴を有する契約と、それに加えて特定卸供給事業者等※4と需要家の契約のうち同様の特徴を有する契約とされています(実務対応報告第47号第2項、第3項)。なお、発電事業者と需要家の取引のイメージは図表9のとおりです。

※4 特定卸供給事業者等とは、電気事業法第2条第1項第15号の4に規定する特定卸供給事業を営むことについて同法第27条の30第1項の規定による経済産業大臣への届出をした者及びこれに準ずる者をいうとされています(実務対応報告第47号第5項(5))。なお、特定卸供給事業者等は発電事業者等から再生可能電力発電設備で発電した電力を購入し、当該電力に係る非化石価値を需要家との契約により売買することが認められています。

(図表8)実務対応報告第47号を適用する契約の範囲
 

① 発電事業者と需要家の契約(実務対応報告第47号第2項)

需要家による非化石価値の転売(子会社又は関連会社への融通を除く。以下同じ)が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち概ね以下の特徴を有するものに適用する。

  • 発電事業者と需要家の相対の契約である
  • 需要家は、発電事業者との間で、契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する
  • 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う
② 特定卸供給事業者(アグリゲーター)等と需要家の契約(実務対応報告第47号第3項)

需要家による非化石価値の転売が想定されておらず、特定卸供給事業者等から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち以下の特徴を有するものに適用する。

  • 特定卸供給事業者等と需要家の相対の契約である
  • 需要家は、特定卸供給事業者等との間で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を契約で指定し、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者等から購入する契約を締結する
  • 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う

(図表9)発電事業者と需要家の取引イメージ

(図表9)発電事業者と需要家の取引イメージ

(2) 会計処理

① 非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理
非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理に関し、a非化石価値を受け取る権利の認識時点、及びb非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理について、図表10のとおりとされています(実務対応報告第47号第6項、第7項)。

(図表10)非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理
 

項目

内容

a 非化石価値を受け取る権利の認識時点

■ 契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行う

■ 遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱う

b 非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理

■ 費用処理を行い、対価の支払義務に係る負債を計上する

実務対応報告第47号では、図表8の特徴を有する契約(以下「実務対応報告第47号を適用する契約」という。)において、発電により将来非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務が需要家に生じていることを考慮すると、発電時点において会計処理を行うことが考えられることが示されています。しかしながら、国による電力量の認定時点より前は非化石価値の量が確定していないこと等により、発電時点において会計処理を行うことが実務的に困難な場合があることが想定されることを踏まえ、実務対応報告第47号では、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点で会計処理を行うこととされています。

この場合、国による電力量の認定時点では、非化石価値の量が確定することとなり、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても情報を得ることができると考えられるため、遅くとも国による電力量の認定時点においては金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととされています(図表11参照)。

(図表11)認識時点のイメージ

(図表11)認識時点のイメージ

なお、国による電力量の認定時点においても、必ずしも契約上発電事業者等から需要家に対し発電量等の情報が通知されることにはなっていない場合があることも想定されます。このことから、需要家である企業において、適時かつ適切に会計処理を行えるよう、発電事業者等との間で契約内容や通知の仕組みを事前に整理しておく必要がある点にご留意ください。

② 決算日において発電が完了しており、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合の取扱い
決算日において発電が完了しているものの、非化石価値の量や価格に係る情報を収集できない等の状況下で、需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定することができなかった場合には、当該需要家は非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上することはなく、したがって、仮に決算日後の事実と状況(例えば、決算日後に国による電力量の認定が行われたこと等)により信頼性をもって測定することが可能となったとしても修正後発事象として非化石価値を受け取る権利に係る費用計上の修正を行う必要はないと考えられることが示されています。

ただし、決算日において発電が完了しており、かつ、非化石価値の量や価格に係る必要な情報を収集したことで需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定したことにより、当該需要家が非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上した場合には、当該需要家が決算日後により精緻な測定が可能となる情報を入手したことを受けて、重要性に応じて計上した費用の金額を修正することが考えられることが示されています(実務対応報告第47号BC29項)。

③ 対価の差金決済を行う場合の取扱い
非化石価値の対価として差金決済を行う場合において、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回ることにより、需要家が対価を受け取ることとなるときは、当該対価を費用から減額することとされています(実務対応報告第47号第8項)。

④ 子会社又は関連会社への非化石価値の融通
子会社又は関連会社への非化石価値の融通に関して、以下のとおり定められています。

  • 親会社から子会社又は関連会社への融通は「転売」として取り扱わないこととし、本実務対応報告を適用する契約を締結する者が、その子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合において、当該子会社又は関連会社が非化石価値を自己使用目的で取得するときは、当該契約を締結する者を「需要家」として取り扱う(実務対応報告第47号第2項、第5項(2))
  • 需要家がその子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合、当該需要家とその子会社又は関連会社との取引については、両者の合意内容に基づき会計処理を行う(実務対応報告第47号第9項)

(3) 開示に関する検討

開示について、実務対応報告第47号の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額が電力料金に比べて相対的に少額である中で、その開示の有用性を勘案し、非化石価値を自己使用目的で取得するという実務対応報告第47号の範囲では、開示に関する定めは設けないこととされています。

ただし、実務対応報告第47号を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要であり、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる場合には、財務諸表等規則等に基づき、追加情報として開示することになると考えられることが示されています(実務対応報告第47号BC45項)。

(4) 適用時期

適用時期について図表12のとおり定められています(実務対応報告第47号第10項)。

(図表12)適用時期
 

原則/早期

時期

原則適用

2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。

早期適用

公表日(2025年11月11日)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。

(5) 経過措置

実務対応報告第47号の適用初年度において、実務対応報告第47号を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされています(実務対応報告第47号第11項)。

ただし、実務対応報告第47号の適用にあたっては、遡及適用を求めないこととし、経過措置として、実務対応報告第47号を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、需要家に生じた非化石価値を受け取る権利で、契約で指定された再生可能電力発電設備により適用初年度の期首までに発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できるものについては、当該非化石価値を受け取る権利の金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することとされています。この場合、当該期首時点で国による電力量の認定時点が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとされています(実務対応報告第47号第11項、BC47項)。

以上を踏まえて、適用による影響の重要性に応じて、会計方針の変更に関する注記を記載することになると考えられます。


VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する改正編

Q7. VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する改正の概要

ベンチャーキャピタルファンド(以下「VCファンド」という。)等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する金融商品実務指針の改正の概要について教えてください。

A7.

(1) 経緯

企業が投資する組合等への出資の評価に関して、当該組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、当該組合等への出資者である企業の会計処理の基礎とするとされています。このため、投資する組合等の構成資産が市場価格のない株式である場合には、取得原価で評価することとされていました(金融商品実務指針第132項)。

このような定めに関して、非上場株式を時価評価することにより投資家に対して有用な情報が開示及び提供されること等を理由として、VCファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について、一定の条件の下で、時価評価することを認めるとする、金融商品実務指針の改正がなされました(金融商品実務指針第132-2項、第308-2項)。

(2) 対象となる組合等の範囲

VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの対象は、組合等(任意組合すなわち民法上の組合、匿名組合、パートナーシップ、及びリミテッド・パートナーシップ等)のうち、以下の要件を満たすものとされています(金融商品実務指針第132-2項、第308-3項)。

① 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
② 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること

これは、VCファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられることからVCファンドに相当する組合等を直接的に定義しないとする一方で、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するためには要件を設けることが必要と考えられたためです。

上記①の要件に関して、「組合等の運営者」とは、我が国におけるベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられます。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられます。また、上記②の要件に関して、「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えられます。また、時価評価の方法としては、時価算定会計基準に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(以下「IFRS会計基準」という。)第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられます(金融商品実務指針第308-3項)。

(3) 出資者である企業の選択

上記の要件を満たすVCファンド等の組合等への出資については、その目的や性質が異なる場合があると考えられることから、一律に適用対象とすることは必ずしも適切ではないと考えられます。このため、当該組合等への出資者である企業が金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定めた上で、当該方針に基づいて、組合等への出資時に金融商品実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうかを決定します。

ただし、企業の意思により自由に適用を終了することを認めることは、会計処理の透明性や比較可能性の観点から適切ではないと考えられるため、金融商品実務指針132-2項の定めを適用することとした組合等への出資の会計処理は、出資後に取りやめることはできません(金融商品実務指針第132-3項、第308-5項)。

なお、企業が直接出資する組合等についてその構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価評価して出資者の会計処理の基礎とすることを選択しており、かつ、ファンド・オブ・ファンズのように組合等が別の組合等に出資しているケースにおいては、組合等が出資する別の組合等ごとに要件を満たすか判定を行います。この結果、要件を満たした別の組合等についてのみ、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価をもって評価し、その組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになると考えられます(金融商品実務指針第308-5項)。

(4) 出資者である企業の具体的な会計処理

VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いの対象となる組合等への出資は、(1)における企業の選択の下で、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とします。そして、この場合の評価差額の持分相当額は、当期の損益ではなく、「その他有価証券評価差額金」として純資産の部に計上することになります。これは、時価をもって評価する対象となる市場価格のない株式は、売買目的有価証券や満期保有目的の債券に分類されることはなく、また、子会社株式及び関連会社株式は除かれることから((2)参照)、その他有価証券に分類されるためです(移管指針公開草案第15号(移管指針第9号の改正案)「金融商品会計に関する実務指針(案)」に対するコメントNo.20参照)(図表13参照)。

(図表13)組合等への出資の取扱いのイメージ

(図表13)組合等への出資の取扱いのイメージ

(5) 時価をもって評価することができる株式の対象範囲

出資者である企業が選択した場合、対象となる組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について、時価をもって評価し、当該組合等への会計処理の基礎とします。

ただし、対象となる組合等の構成資産に出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式が含まれている場合には、当該子会社株式及び関連会社株式については、金融商品会計基準において取得原価をもって貸借対照表価額とすることが定められていることから(金融商品会計基準第17項)、時価をもって評価する株式の範囲から除かれます(金融商品実務指針第132-2項、第308-5項)。

(6) 減損処理

対象となる組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式を時価評価して、当該組合等への会計処理の基礎とする場合、当該株式の減損処理については、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(金融商品実務指針第92項)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(金融商品実務指針第91項)に従うことになります(金融商品実務指針第132-4項、第308-6項)。


Q8. 四半期及び中間決算における注記事項

VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する四半期及び中間決算における注記について教えてください。

A8.

(1) 注記に関する定め

時価算定適用指針第24-16項では、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については時価の注記を要しないこととし、その場合、注記していない旨及び時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとされています。

金融商品実務指針では、金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等への出資については、これらの注記に併せて、以下の事項を注記することとされています(金融商品実務指針第132-5項、第308-7項)。

① 金融商品実務指針第132-2項の定めを適用している旨
② 金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針
③ 金融商品実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額(時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額の内数に該当すると考えられる)

(2) 中間決算における注記

半期報告書に含まれる中間(連結)財務諸表では、金融商品に関する中間(連結)貸借対照表の科目ごとに、会社(企業集団)の事業の運営において重要なものとなっており、かつ、中間(連結)貸借対照表計上額その他の金額に前事業年度(連結会計年度)の末日に比して著しい変動が認められる場合には、中間(連結)貸借対照表の科目ごとの中間(連結)貸借対照表日における中間(連結)貸借対照表計上額、時価及び当該中間連結貸借対照表計上額と当該時価との差額を注記する必要があります(中間(連結)対照表計上額と時価との差額に重要性が乏しい場合を除く)。このため、中間(連結)財務諸表において金融商品に関する注記を記載する場合には、上記①から③の注記を行うことになります。

(3) 第1及び第3四半期決算における注記

第1及び第3四半期決算短信では、金融商品関係の注記は義務付けられている事項ではありませんが、「投資判断に有用と考えられる情報」とされており、東京証券取引所の決算短信・四半期決算短信等作成要領等において、「四半期連結財務諸表における項目の表示に係る取扱いについては、第一種中間財務諸表等での取扱いを準用する」ものとされています。これらを踏まえると、第1及び第3四半期決算短信において金融商品に関する注記を記載する場合にも、上記①から③の注記を同様に行うことが適切と考えられます。


Q9. 適用時期及び経過措置

VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する金融商品実務指針の改正の適用時期及び経過措置について教えてください。

A9.

VCファンド等の組合等への出資持分に係る会計上の取扱いに関する、金融商品実務指針の改正は、2027年3月期の期首から原則適用されます(金融商品実務指針第195-20項)。

そして、適用初年度の期首時点において、組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等を決定することとされています。

また、遡及適用は求めず、適用初年度の期首から将来にわたって適用することとし、適用後の当期純利益等への影響が適切となるように、以下の経過措置を設けることとされています(金融商品実務指針第205-2項、第358項)。

  • 適用初年度の期首時点において、金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、適用初年度の期首時点での評価差額の持分相当額を適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する
  • 適用初年度の期首時点において、金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価のある有価証券の減損処理に関する定め(金融商品実務指針第91項)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、減損処理による損失の持分相当額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する

なお、金融商品実務指針第132-2項の定めを適用する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として、会計基準等の名称、会計方針の変更の内容、経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要などの注記をすることになると考えられます(期中会計基準第24項(1)、期中適用指針第34項)。


譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化編

Q10. 譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化の概要

譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化による会計基準等の改正内容について教えてください。

A10.

(1) 金融商品会計基準等の改正

金融商品会計基準第9項(2)は、「譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること」を金融資産の消滅の認識要件の1つとして定めており、改正前の金融商品会計基準(注4)では、金融資産の譲受人が以下の要件を充たす特別目的会社の場合には、当該特別目的会社が発行する証券の保有者を当該金融資産の譲受人とみなした上で金融商品会計基準第9項(2)の定めを適用することを定めていました。

① 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を当該特別目的会社が発行する証券の保有者に享受させることを目的として設立されていること
② 特別目的会社の事業が、①の目的に従って適正に遂行されていると認められること

これらの定めは、譲受人が譲渡された金融資産から生じるキャッシュ・フローを実質的に受け取ることができるかどうかの評価を求めるものであると考えられ、当該評価においては、特別目的会社が発行する証券を保有している投資者と特別目的会社に対して貸付けを行っている融資者とで異なる取扱いを設ける特段の理由はないと考えられます。このため、金融商品会計基準が改正され、特別目的会社に対する融資者を特別目的会社に対する投資者と同様に取り扱うことが示されました(金融商品会計基準(注4)、第50-5項)。具体的には、金融資産の譲受人が以下の要件を充たす特別目的会社の場合には、当該特別目的会社に対する投資者又は融資者を当該金融資産の譲受人とみなした上で金融商品会計基準第9項(2)の定めを適用することとなりました。

① 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を当該特別目的会社に対する投資者等に享受させることを目的として設立されていること
② 特別目的会社の事業が、①の目的に従って適正に遂行されていると認められること

また、金融商品会計基準(注4)を踏まえると、譲渡人が譲渡金融資産から生じるキャッシュ・フローを実質的に受け取ることになる部分の譲渡はなかったものとする金融商品実務指針第40項においても、特別目的会社に対して貸付けを行う融資者を特別目的会社が発行する証券を保有する投資者と同様に取り扱うべきと考えられます。このため、金融商品実務指針も改正され、特別目的会社に対する融資者についても特別目的会社に対する投資者と同様に取り扱うことが示されました(金融商品実務指針第40項)。

(2) 連結会計基準の改正

(1)のとおり、金融商品会計基準等において、譲受人が特別目的会社の場合の金融資産の譲渡において、特別目的会社に対する融資者を特別目的会社に対する投資者と同様に取り扱うことが示されました。

この点、特別目的会社について、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当するかどうかの評価においても、特別目的会社に対する投資者と特別目的会社に対する融資者とで異なる取扱いを設けるべきではないと考えられます。このため、連結会計基準において、「資産の流動化に関する法律」第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者も、特別目的会社に対する投資者に含むことが示されました(連結会計基準第7-2項)。


Q11. 適用時期及び経過措置

譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化を目的としてなされた金融商品会計基準等の改正の適用時期及び経過措置について教えてください。

A11.

(1) 金融商品会計基準等の改正に係る適用時期と経過措置

①適用時期
金融商品会計基準等の改正は、既に検討を進めている金融資産の譲渡の会計処理に影響を与える可能性があり、一定の準備期間が必要と考えられるため、2027年4月1日以後開始する年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用されます。ただし、できる限り速やかに適用可能とすることに対するニーズが存在することを考慮して、2026年4月1日以後開始する年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用することができるとされています(金融商品会計基準第41項(7)、(8)、金融商品実務指針第195-21項)。

なお、金融商品会計基準等の改正を早期適用し、この結果としてこれまでの会計処理と異なる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として、会計基準等の名称、会計方針の変更の内容、以下の経過措置に従って会計処理を行った旨及び当該経過措置の概要などの注記をすることになると考えられます(期中会計基準第24項(1)、期中適用指針第34項)。

②経過措置
特別目的会社を譲受人とする金融資産の譲渡を行う企業は、通常、会計上の取扱いを十分に検討した上でスキームを構築していると考えられます。このため、スキーム実行時に想定していなかった会計処理となるように遡って見直すことは、原則として求めるべきではないと考えられました。このため、適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされていますが、適用前に実施された金融資産の譲渡の会計処理については、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされています(金融商品会計基準第44-3項、金融商品実務指針第196-2項)。

(2) 連結会計基準の改正に係る適用時期

金融商品会計基準等の適用と同様に、2027年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から将来にわたって適用されます。ただし、2026年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から将来にわたって適用することができるとされています(連結会計基準第44-7項)。


経済状況の変動による会計処理への影響編

Q12. 相場変動による会計処理への影響

経済状況による相場変動の会計処理への影響について教えてください。

A12.

政府の経済政策、日銀の金利政策といった国内情勢に加えて、米国による関税賦課、中国による一部禁輸措置及び中東情勢等の国際情勢による経済の不確実な状況は、2027年3月期においても継続しており、当該経済状況の下で生じている各種の相場変動が会計処理、特に会計上の見積りに対して影響を与える可能性があると考えられます。

以下の表は、「2026年3月期 会計及び開示の決算上の留意事項」において示した、会計上の項目ごとの相場変動等による主要な影響をまとめたものです。該当する会計上の項目及び相場変動等がある場合には、「2026年3月期 会計及び開示の決算上の留意事項」におけるそれぞれのQ&Aをご確認ください。なお、以下の図表14における留意点は、考えられる主要な項目を記載したものであり、あくまでも例示である点に留意してください。

(図表14)会計上の項目ごとの相場変動等による主要な影響
 

項目

相場変動等

影響する会計処理

2026年3月期 Q&A参照先 

有価証券

為替変動

外貨建有価証券の減損処理

Q4

固定資産の減損

為替変動

物価・労務費変動

地政学的状況

減損の兆候の識別

Q5(1)

将来キャッシュ・フローの見積り

Q5(2)

金利変動

使用価値算定における割引率

Q5(3)

資産除去債務

金利変動

物価変動

資産除去債務の見積りの変更

Q7

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