持分法 第5回:持分法に関連する開示

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 久保 慎悟

1. 連結財務諸表上の表示

連結貸借対照表上、持分法を適用した関連会社及び非連結子会社に対する投資は、「投資有価証券」として、投資その他の資産の区分に表示します(連結財務諸表規則第30条)。

連結損益計算書又は連結損益及び包括利益計算書上、持分法を適用したことによる損益は、投資に係る損益であることから、「持分法による投資利益」又は「持分法による投資損失」として、一括して営業外収益又は営業外費用の区分に表示します(連結財務諸表規則第57条、第58条、持分法会計基準第16項)。なお、持分法を適用する被投資会社に係るのれんの当期償却額及び減損処理額並びに負ののれんについても、持分法による投資損益に含めて表示します(持分法会計基準第27項)。

【開示例①】


連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書上、持分法適用会社のその他の包括利益累計額のうち投資会社の持分又は負担に見合う額は、「持分法適用会社に対する持分相当額」として一括して区分表示します。なお、連結貸借対照表上のその他の包括利益累計額においては、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額等の各内訳項目に当該持分相当額を含めて表示します(持分法実務指針第10-2項)。

【開示例②】


2. 持分法の適用範囲に関する注記

持分法の適用範囲に関する事項については、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項として以下を注記する必要があります(連結財務諸表規則第13条第3項、持分法会計基準第17項)。

  • 持分法を適用した非連結子会社又は関連会社の数及びこれらのうち主要な会社等の名称
  • 持分法を適用しない非連結子会社又は関連会社がある場合には、これらのうち主要な会社等の名称
  • 持分法を適用しない非連結子会社又は関連会社がある場合には、持分法を適用しない理由
  • 他の会社等の議決権の百分の二十以上、百分の五十以下を自己の計算において所有しているにもかかわらず当該他の会社等を関連会社としなかつた場合には、当該他の会社等の名称及び関連会社としなかつた理由
  • 持分法の適用の手続について特に記載する必要があると認められる事項がある場合には、その内容

また、持分法適用の範囲を変更した場合には、その旨及び変更の理由を注記する必要があります(連結財務諸表規則第14条)。


【開示例③】

(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)

2. 持分法の適用に関する事項

(XX) 持分法を適用していない非連結子会社及び関連会社の名称等

非連結子会社の名称
×××株式会社

持分法を適用していない理由

持分法を適用していない非連結子会社は、当期純損益及び利益剰余金等からみて、持分法の適用範囲から除いても連結財務諸表に対する影響が軽微であるためです。

(XX) 他の会社等の議決権の百分の二十以上百分の五十以下を自己の計算において所有しているにもかかわらず関連会社としなかった当該他の会社等の名称

×××株式会社
関連会社としなかった理由

関連会社としなかった投資先は、ベンチャーキャピタル事業等を営む連結子会社が投資育成や事業再生を図りキャピタルゲイン獲得を目的等とする営業取引として投資先の株式等を所有しているためです。


3. 重要な関連会社に関する注記

連結財務諸表提出会社に、重要な関連会社が存在する場合には、以下の事項を注記する必要があります(連結財務諸表規則第14条の4の3)。

  • 重要な関連会社の名称
  • 貸借対照表項目(流動資産合計、固定資産合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計その他の重要な項目)
  • 損益計算書項目(売上高、税引前当期純利益金額又は税引前当期純損失金額、当期純利益金額又は当期純損失金額その他の重要な項目)

なお、貸借対照表項目及び損益計算書項目については、重要な関連会社について合算して記載する方法か、持分法による投資利益又は持分法による投資損失の金額の算定対象となった関連会社について合算して記載する方法のいずれかを、その旨を記載することを条件として採用できます。


【開示例④】

2. 親会社又は重要な関連会社に関する事項

(1) 親会社
該当事項はありません。

(2) 重要な関連会社の要約財務情報
重要な関連会社は×××株式会社であり、その要約財務情報は以下の通りです。


4. 連結との相違

連結は、連結会社の財務諸表を勘定科目ごとに合算することによって企業集団の財務諸表を作成しますので、完全連結(ライン・バイ・ライン・コンソリデーション又はフル・ライン・コンソリデーション)といわれている一方で、持分法による処理は、一行連結(ワン・ライン・コンソリデーション)といわれ、被投資会社の資本及び損益に対する投資会社の持分相当額を、連結貸借対照表上の投資有価証券及び連結損益計算書上の持分法による投資利益又は投資損失として表示します。したがって、持分法による処理の場合、持分法適用会社に対する投資や損益の内訳に関する情報は、連結財務諸表には表示されません。

ただし、重要な関連会社の業績が悪化した場合には、企業集団の財政状態や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があり、そうした関連会社の財務情報の開示が必要であるとする意見があります(企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」第39項)。このようなことが考慮されて、重要な関連会社については、その要約財務情報の注記が求められていると考えられます。


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  • 持分法とは 連結決算のルールと実務
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  • 持分法の基本的な会計処理 連結決算のルールと実務
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