米国、アルミニウムと鉄鋼の輸入関税を引き上げ

  • 2025年6月4日付で、米国はアルミニウムと鉄鋼の輸入に対する関税(従価税)を25%から50%に引き上げた。
  • 新たな関税率は、鉄鋼およびアルミニウム製品ならびにその派生製品に適用される。
  • 関税非重複原則(Non-Stacking Principle)1は引き続き適用され、すでに他の関税が課されている製品には、今回の新たな調整による追加関税は課されない。ただし、英国からの輸入品については、25%の関税率が維持される。
  • これらの変更の影響を受ける企業は、輸入戦略を再評価し、サプライチェーンへの影響を評価するとともに、新たな規制の遵守を確保し、潜在的な財務上の影響を軽減するために、貿易アドバイザーに相談する必要がある。

2025年6月3日、ドナルド・J・トランプ大統領は、「米国へのアルミニウムおよび鉄鋼の輸入調整(Adjusting Imports of Aluminum and Steel into the United States)」と題する布告を発表しました。この布告は、1962年通商拡大法第232条に基づいて実施された一連の調査の結果を受けたものであり、これらの調査では、鉄鋼およびアルミニウム製品の輸入が国家安全保障に対する脅威となると判断されました。商務長官は以前、これらの輸入品が、国家安全保障を損なう程度の数量および状況下で米国に輸入されていると報告していました。

この布告は、2018年3月8日付の布告9704号および9705号を含む、これまでの措置を踏まえたものであり、アルミニウムおよび鉄鋼の輸入品ならびにその派生製品に対して25%の関税が課されていました。


新たな布告の主な規定

関税率の引き上げ

2025年6月4日から、布告により、鉄鋼製品およびその派生製品、ならびにアルミニウム製品およびその派生製品の輸入関税率が、25%から50%に引き上げられます。この引き上げは、国内産業への支援を強化し、これらの輸入品がもたらす国家安全保障上の脅威を軽減することを目的としています。

関税非重複原則の維持

たとえ関税率が引き上げられたとしても、関税非重複原則は引き続き適用されます。つまり、すでに他の関税が課されている製品には、今回の鉄鋼およびアルミニウムの輸入に関する新たな調整による追加関税は課されません。2025年4月30日付EY Global Tax Alert「United States | Recent developments in US tariffs on automobiles and articles subject to tariffs」および2025年5月2日付EY Japan税務ニュース「トランプ大統領、追加関税措置が重複適用される場合の整理と米国内組立車両を対象とした還付制度を発表」をご参照ください。

英国に対する特別措置

布告では、英国から輸入される製品に適用される関税率は、25%のまま維持されることが明記されています。ただし、米英経済繁栄協定(EPD)が遵守されない場合には、商務長官が同協定に沿ってこれらの関税率を調整したり、輸入割当を設定したりすることができます。

監視と遵守

商務長官は、影響を受ける製品の輸入を継続的に監視し、国家安全保障に関する状況を評価するよう指示されています。商務長官は、232条に基づく追加措置の必要性を示す可能性のある状況について、大統領に報告します。

さらに、米国税関国境警備局(CBP)は、輸入品に含まれる鉄鋼およびアルミニウムの含有量に関する申告要件の厳格な遵守を義務付けるガイダンスを発出しました。これらの要件を遵守しない輸入者は、高額な罰金や輸入特権のはく奪を含む重大な罰則に直面する可能性があります。

企業が検討すべき対策

影響を受ける企業は、以下の対策を検討する必要があります。

  • 輸入戦略および価格体系に対する関税引き上げの影響を評価する。
  • サプライチェーンを評価し、新たな関税率による潜在的な影響を特定し、調達先の選択肢を検討する。
  • 貿易アドバイザーに相談し、新たな関税構造の複雑さを乗り越え、更新された規制の遵守を確保する。

巻末注

  1. 重複関税の適用整理に関する大統領令(Addressing Certain Tariffs on Imported Articles – The White House


お問い合わせ先

EY税理士法人

大平 洋一 パートナー
原岡 由美 パートナー
福井 剛次郎 シニアマネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです